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新築の建売住宅の広告や注文住宅の広告でよく見かける言葉に、この建物は「耐震等級3相当」の建物です、というものがあります。この相当という言葉が曲者で、紛らわしい言葉であるため、この建物の購入を検討する場合には、色々な事を考えなければなりません。

耐震等級3相当とは自称「耐震等級3」という事です

結論から言えば、耐震等級3相当は耐震等級3ではありません。あくまでも建設会社の自称で、この建物は耐震等級3の建物と同レベルの耐震性能がありますと主張しているだけです。

家の主張のイメージ

「相当」とはあくまでも自称で正式なものではありません。

だからと言って、耐震等級3相当と主張している建物がすべてダメとかすべて大丈夫とかは言えない点が紛らわしいところです。

耐震等級3の正式な認定を取るためには費用がかかります。建物性能は変わらないのに、申請などの費用だけで数十万円も余分にかかるのはもったいないではないか、という考えも確かにあるでしょう。購入者の費用を抑えるために、同レベルの建物を作り、申請費用分を浮かしているだけなので何も問題はないと主張される方もいます。

この意見が間違いとは言い切れませんが、この場合2つのデメリットがあります。その2つとは、
1.正式版ならではの特典が受けられない
2.本当に正式版と同じ性能なのかの判断が難しい
という点です。

正式な耐震等級3の性能評価書を取るメリットは3つほどあります。3つとは、
・検査を受けるため、より安心度合いが高くなる
・トラブルがあった際の対応が付く
・ローンや地震保険が安くなるケースがある
の3つです。

まずはこの3つのメリットについて、お話しします。

正式な耐震等級のメリットは検査を受けられる事です

正式な耐震等級3を取得することの最大のメリットは、検査を受けられる事だと私は思っています。この検査は設計時の検査と施工時の検査があります。

チェックされた建物

正式な耐震等級3の建物は設計段階と施工途中で検査が入ります。

実は性能表示には、設計性能評価と建設性能評価の2種類があります。設計性能評価は、設計図書などを検査員が確認し、耐震等級3を取れるレベルの設計であるかどうかを判断するものです。そして建設性能評価は、施工途中に検査員が立ち合い、設計図書通りに正しく作られているかどうかをチェックした上で、性能評価書を発行しています。

検査を受けて確認が取れる分だけ安心度合いは高くなります。設計段階で検査に落ちる事があるのかと考える方も多いと思いますが、特殊な間取りとした場合、意外とこの設計段階でも引っ掛かる事があるようです。その場合には、間取りをもう1度見直すか、耐震等級が落ちても良いかどうかを判断しなければなりません。

施工時の検査も重要です。残念な事に建設業界では未だにずさんな施工という現場もあります。設計通りに作られていない、正しい材料が使われていないというケースも、それほどまれではありません。

もちろん耐震等級の申請をしなくても、建築基準法上の検査等はありますが、検査の目やチェック項目が増えれば、その分欠陥住宅を作られる率は低くなります。

実際に今年(2017年)に当社に問い合わせをされたお客様の建物で、耐震等級3相当の建物なのですが、かなり高い確率で欠陥住宅と思われる内容の建物がありました。これも設計や施工時の検査が行われていれば、防げた欠陥かもしれません。

耐震等級3を取得することのデメリットは費用が余分にかかる事ですが、その費用の中にはこの検査費用も含まれます。確かに余計にお金がかかる事は確かですが、完全に無駄に使っているというものでもないという事は知っておくべきだと思います。

トラブル時の対応が受けられる点もメリットです

正式版の2つ目の特典として、トラブルがあった場合には指定機関が間に入り対応してくれる点です。

実際にトラブルがあった際には、購入者がプロである建設会社にうまく主張することは簡単ではありません。建築のプロが言う大丈夫という言葉が本当に大丈夫であるかどうかの判断が付かないからです。
(この大丈夫という言葉はトラブルの原因となる事が多くあります。「不動産の営業マンの大丈夫というセリフに流されてはいけません」の記事も参考にしてみてください。)

ですが、間にも建築や法律のプロが入った場合、建設会社側に明らかにおかしな主張や落ち度があれば、その点を指摘できますし、落としどころも見つけやすいでしょう。

裁判のイメージ

裁判沙汰まで発展するようなトラブルは一般の方には荷が重いものです。

もっともトラブル対応はタダではなく、有料になります。しかし費用は数万円という単位の金額で対応してくれるようです。通常のトラブルで、裁判も見据えた建物チェックなどを行おうと考えますと、数十万円単位の費用がかかります。そう考えますと、数万円単位の費用で、間に入ってくれ、対応してれるサービスはメリットが大きいと私は思っています。

住宅ローンや地震保険の割引が受けられる事もあります

他にも住宅ローンの借り入れで有利だったり、地震保険で割引を得られるというメリットもあります。

住宅ローンでは、例えばモーゲージバンクの1つである優良住宅ローンでは、フラット35を借りた場合、通常の住宅であれば融資手数料は0.8%ですが、住宅性能評価物件では0.5%となっています(新生銀行の住宅ローン諸費用より。2017年5月時点)。

どのような基準を満たせば手数料の割引対象になるかは確認しなければなりませんが、うまく使えば当初の諸費用を大きく下げる事ができませす。0.3%の割引となりますと、3,000万円の借入であれば9万円分諸費用を減らせる事になります。

地震保険の割引率は保険会社によっても異なりますが、例えば損保ジャパンの地震保険では耐震等級3を取得していれば、50%の割引があるとなっています(「特約地震保険の割引制度」損保ジャパン日本興亜)。

地震保険のイメージ

地震保険は耐震等級3を取っていれば割引になる事が多いようです。

これらの内容は、どのようなローンを使うかやどういった保険に入るかによっても変わりますので、すべての方がメリットを受けられるとは限りませんが、使い方によっては、耐震等級3を取得するときに費用がかかるというデメリットをある程度減らせることができます。

本当に同性能であるかどうかは費用の増額分で判断しましょう

ここまでは、正式版の特典についてお話ししました。ただ、これらの特典以上に自称物件に感じる不安は、耐震等級3相当の建物が本当に耐震等級3と同レベルの建物なのか、正しく判断することができないという点です。

日常的に耐震等級3の建物を作っていて、性能評価書も取っている建設会社が、購入者の要望で認証だけを取らないという状況であれば、自称であっても耐震等級3と同じようなレベルの建物である可能性は高いでしょう。

ですが、普段から正式な性能評価書を取っていない会社が、同レベルの建物ですと主張されても、本当にそうなのかどうかは不安が残ります。

耐震等級3と同レベルの建物であるという根拠として、同じ壁量がありますとか新しい制振装置を使っていますとか主張される事もあるようです。ただ実際には耐震等級のレベルは構造壁の量だけで決まるものではありませんし、制振装置による効果がどの位あるのかを証明することは簡単ではありません。

建物の構造や耐震性は部材1つで決まるものではありません。構造用合板を使っているからとか、制振装置を使っているからという理由だけで大丈夫であると説明できるはずはありませんので、この主張をもって大丈夫だと言い張る建設会社には注意が必要だと私は考えています。

耐震等級3相当の建物が本当に耐震等級3と同レベルであるかどうかを判断する目安の一つに、実際に耐震等級3の性能評価書を取る際に、費用がいくら増加するのか金額を聞くという方法があります。

天秤

性能評価書を実際に取る場合の費用の増額度合いで判断するという方法があります。

建物が実際に耐震等級3と同じレベルであれば、特に設計変更などをする必要はありませんので、申請にかかる費用だけ上乗せすれば済むはずです。申請費用は会社によって異なりますが、一般的な検査会社であれば20万円近い金額ではないでしょうか。

この位の金額の増額で耐震等級3の正式な認定が取れるというのであれば、建物に手を加える余裕はないはずですので、当初の建物でも十分に耐震等級3の建物と同じレベルにあったと予想できます。

逆に申請することで、50万円アップとか100万円アップとなった場合には注意が必要です。それだけ金額が上がるという事は、当初の建物では実は耐震等級3の認定を取る事が出来なかったため、設計変更や部材を追加しなければならないために、費用が上がった可能性があるからです。

この場合は、元々の建物は耐震等級3相当と言っていたとしても、本来はそのレベルに無かったと考える方が良さそうです。この判断方法が絶対に正しいとは言い切れませんが、目安の1つとして考えてもらえればと思います。

基本的には耐震等級3の性能評価書をきちんと取るべきだと考えます

このような耐震等級3相当と耐震等級3の違いを見ていきますと、正式な耐震等級3は費用が20万円近く余計にかかるというデメリットはありますが、他の点ではメリットの方が大きいと思われます。

デメリットである費用増は、検査の実施や保険等の減額分である程度は緩和されますし、何よりも安心度合いが高くなるというメリットが大きくなりますので個人的な意見としては、きちんとした耐震等級3を、つまりは性能評価書を取る方が良いと思っています。

性能評価のマーク

正式版である耐震等級3の認定を取るべきだと思います。

耐震等級3が絶対的に耐震性が高いと言い切れるものではないかもしれませんが、2000年から始まった住宅性能表示制度は17年以上という時間を経て、それなりに効果が高いと認められるようになってきました。単なる建設会社やメーカーの思い込みで必要ないという意見よりは、それなりに根拠のある制度だと私は思っています。

このあたりは考え方にもよりますので最終的には購入者自身に決めて頂くことになるのですが、新築住宅を購入するか建築するかで、耐震等級を選べるような状況であるのであれば、最高レベルである耐震等級3を選ぶ方がメリットが大きいですし、そもそもこのレベルの建物を建てられない会社や必要ないと主張する会社の建物は不安があると私は思っています。

このページの話を動画でも説明してみました

この記事でお話ししました内容を動画でも解説してみました。その動画がこちらです。

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