不動産価格は比較されて初めて適正金額になるものだと考えてください
「本来ならもっと高く売れるはずだったのに、相場より安い価格で手放してしまった……」
実は、不動産売却においてこのような後悔を抱える方は決して珍しくありません。なぜそのような事態に陥ってしまうのでしょうか? その理由は、不動産取引の裏側に潜む「比較と競争が働かない仕組み」にあります。今回は、損をしないための正しい知識と具体的な防衛策をわかりやすく解説します!
1価格は「比較と競争」によってのみ適正化される
まず大前提として知っておいていただきたいのは、「価格というものは、比較されて初めて適正な価格になる」ということです。これは不動産に限った話ではありません。
たとえば、あなたの街にスーパーが1軒しかない状況を思い浮かべてみてください。そのお店の野菜がいくら高くても、他に買う場所がなければ、あなたはその高い価格で買うしかありませんよね。
💡 不動産売却でもまったく同じことが起こります
買い手(競合)がたくさんいれば、その中から一番高い価格を提示してくれた人を選ぶことができます。しかし、何らかの理由で買い手が「たった1人(または極少数の業者)」に絞り込まれてしまうと、相手の言い値に決まり、知らず知らずのうちに買い叩かれてしまうのです。
2「比較されない」ことで損をする3つの具体例
市場の競争原理が働かなくなることで、売主が不当に損をしてしまう代表的な3つのパターンを見ていきましょう。
◆パターン①:リースバック
自宅を売却した後も、家賃を払うことでそのまま住み続けられる「リースバック」。非常に便利な仕組みに見えますが、ここにも罠があります。
- 売却価格が安くなる: 一般の多くの買い手ではなく、ごく一部のリースバック専門業者(投資家目線)のみが買い手となるため、競争が起きず売却価格は相場より大幅に下がります。
- 家賃が高くなる: 「その家に住みたい人」があなた1人に確定しているため、競合がおらず、相場より高い家賃を設定されても受け入れざるを得なくなります。
※「安く買われ、高く借りる」という二重のマイナスが生じやすい環境であることを理解しておく必要があります。
◆パターン②:リバースモーゲージ
自宅を担保に金融機関から老後資金などを借り入れ、死亡後に自宅を売却して一括返済する「リバースモーゲージ」。
- 金融機関の「言い値」になる: 自宅の担保評価額を決めるのは市場(一般の買い手)ではなく、お金を貸す金融機関です。
- リスク回避で低評価に: 金融機関は自社の焦げ付きリスクを抑えたいため、必然的に評価額を極めて低く安全に(安く)見積もります。
※「ノンリコース型(返済不足分を請求されない)だから安心」とアピールされますが、それは最初から金融機関が絶対に損をしないレベルまで貸出上限を低く設定しているからです。
◆パターン③:仲介会社による「囲い込み」
最も頻繁に起こり、最も注意すべきなのがこれです。間に入っている仲介会社が、自社の利益(両手取引=売り手と買い手の両方から手数料をもらうこと)を優先するあまり、他社からの購入希望者を遮断する行為です。
【囲い込みの恐ろしい実態】
他社から「3,000万円で買いたいお客様がいます」という連絡があっても、仲介会社は「もう商談中です」などと嘘をついて断ります。そして売主には「問い合わせが全くありません」と嘘報告をします。
時期を見て、自社と繋がりのある買取業者に「2,500万円」で売却させます。売主は500万円損をしますが、仲介会社は売り・買いの両方から手数料(さらに再販売時も含めると最大4回分!)が入るため、自社は大儲けできるのです。
一目でわかる!3つの取引パターンの特徴
| パターン | 競争相手の数 | 価格決定権 | 最終的に得をする人 |
|---|---|---|---|
| リースバック | 極めて少ない | リースバック業者 | 購入業者(投資家) |
| リバースモーゲージ | ゼロ(競合なし) | 金融機関(銀行) | 金融機関 |
| 仲介の囲い込み | 意図的に排除される | 悪質な仲介会社・業者 | 囲い込んだ仲介会社 |
3あなたの大切な資産を守る「3つの防衛策」
こうしたトラブルを避け、適正な「比較と競争」の環境を取り戻すために、私たちが今すぐ取れる対策を3つご紹介します。
レインズの「登録証明書」を必ずもらう
不動産会社の間で物件情報を共有するネットワーク「レインズ(REINS)」。売却活動が始まったら、物件がしっかりとレインズに登録されている証明である「登録証明書」を必ず担当者から受け取ってください。これを発行したがらない、あるいは登録すらしていない業者(全体の約2割と言われています)は、囲い込みを狙っている可能性大です。
他社も広告を出せているかネットで検索する
囲い込みをしている業者は、他の不動産会社にあなたの物件の広告を出させません。ポータルサイト(SUUMOやLIFULL HOME’Sなど)で自分の物件を検索した際、自分が任せている1社しか広告を出していない場合は要注意。「他社への広告転載を許可しているか」を不動産会社に確認しましょう。
内見案内が「任せている会社」だけなら疑う
内見(家を見に来る人)の営業マンが、あなたが媒介契約を結んだ不動産会社の人ばかりであれば、囲い込みを疑いましょう。適正に市場公開されていれば、他社の営業マンがお客様を連れてくるのが普通です。もし3ヶ月間販売を続けて「他社からの案内が全くない」場合、価格設定が高すぎるか、囲い込まれているかのどちらかです。契約期間の3ヶ月が来たら、迷わず仲介会社を変更しましょう。
まとめ:「比較なきところに適正価格なし」
悪意を持って売主を騙そうとする業者が悪いのは間違いありません。しかし、「その不動産会社を選んで契約したのは自分自身」という自己責任の側面があるのもまた事実です。
不動産の本当の価格は、銀行でも、投資家でも、仲介会社でもなく、「市場(競争原理)」が決めるものです。
まずは正しい知識を身につけ、健全な「比較と競争」ができる環境で、あなたの大切なマイホームを賢く売却しましょう!

