不動産の経済性はトータルコストで考えましょう
「マイホームが欲しいけれど、できるだけ安くてお得な物件を選びたい」
そう考えて、物件の「購入価格(売り出し価格)」ばかりを気にしていませんか?
実は、不動産選びにおいて「購入価格が安い=お得」とは限りません。
本来、不動産の経済性を考えるためには、目先の価格だけではなく「トータルコスト」の視点が必要です。今回は、なぜ「買う時の価格」だけで判断してはいけないのか、そして後悔しないための資金計画の立て方について解説します。
1 不動産の経済性を決める「3つのコスト」
不動産の本当の経済性を判断するには、次の3つの要素を組み合わせて考える必要があります。
① 購入時の価格
イニシャルコスト。物件自体の代金や諸経費など。
② 住んでいる間の維持費
ランニングコスト。修繕費、管理費、各種税金など。
③ 売却時の価格
資産の出口。将来手元に戻ってくる・あるいは必要なお金。
これら3つのトータルバランスがあって初めて、「その物件が経済的に優れていたかどうか」が決まります。
「激安物件」の落とし穴
例えば、メディアなどで「再建築不可の物件をものすごく安く買ってリフォームした」という話が、いかにも得をしたかのように取り上げられることがあります。
確かに買った時の価格(イニシャルコスト)は安いですし、住んでいる間は快適かもしれません。しかし、いざ手放そうとしたときに「売りたくても全く売れない」という事態に陥ることがあります。
売れないままランニングコスト(税金や維持費)だけが引き出され続けると、それは資産ではなく、所有しているだけでお金が減っていく「負動産(負の遺産)」になってしまいます。
2 【予算3000万円】戸建てとマンションを同じに考えてはいけない
マイホームを探す際、「一戸建てとマンションを並行して探す。いい方があればどちらでも良い」という方も多いでしょう。それ自体は問題ありませんが、同じ「予算3000万円」でも、戸建てとマンションを同じ基準で比較してはいけません。
マンションには、毎月確実に支払う「管理費」「修繕積立金」、そして車を所有していれば「駐車場代」などのランニングコストが発生するからです。
| 項目 | 一戸建て(予算3000万) | マンション(車なし) | マンション(車あり) |
|---|---|---|---|
| 毎月のローン返済 | 約 88,000 円 | 約 64,000 円 | 約 54,000 円 |
| 維持・管理費など | 10,000 円(自己積立) | 24,000 円(管理・修繕) | 24,000 円 + 駐車場代 |
| 毎月の支払総額 | 約 98,000 円 | 約 98,000 円 | 約 98,000 円 |
| 逆算した物件予算 | 約 3,000 万円 | 約 2,170 万円 | 約 1,830 万円 |
※金利やローンの条件等によって実際の金額は異なります。
このように、同じ「毎月9.8万円」の支払いで設計しても、マンションで車を所有する場合、物件価格自体は「1,830万円程度」まで下げないと、同じ支払総額にはならないのです。
「戸建ても修繕費がかかるから同じでは?」という疑問
「戸建てだって10数年に一度、まとまった修繕費がかかるのだから結局同じでは?」という意見もあります。しかし、戸建ての定期的な修繕費をざっくり計算しても、基本的にはマンションで毎月出ていく「管理費・修繕積立金・駐車場代」の合計額よりも安く収まることがほとんどです。
※これは「マンションがダメ」という話ではありません。セキュリティ、防犯、ゴミ出しの利便性など、マンション特有の価値に対してコストを支払う価値は十分にあります。ただ、「予算の組み方が違う」ということを認識しておく必要があります。
3 住宅ローンで「破綻しやすい人」の3つの特徴
データによると、フラット35の利用者のうち、約100件中3件弱(約3%弱)が支払いが厳しくなったり、延滞したりしているという現状があります。
実は、ローンの破綻は「年収の多さ」とはあまり関係がありません。
特徴①:貯金がほとんどない人
「収入は高いのに、貯蓄が全然ない」という方は要注意です。貯蓄ができないということは、支出をコントロールする習慣が身についていない可能性が高いです。まずは「1年間、毎月一定額をきちんと貯蓄できるか」を試してから、購入に踏み切ることを強くおすすめします。
特徴②:キャッシングや消費者金融の借入れがある人
現時点で金利の高いキャッシング等を利用している場合、お金の管理がうまくいっていないサインです。まずはそういった借入れを完済し、最低でも1年間はキャッシングを一切使わずに生活する習慣を身につけてから、住宅ローンを検討すべきです。
特徴③:自己資金ゼロで100%ローンを組む人
「貯金はあるけれど、あえて頭金を出さずにフルローンを組む」という場合は問題ありません。しかし、**「手元に全くお金がないから100%ローンを組む」というのは非常に危険**です。将来売りたくなった時にローン残高が売却価格を上回っている(オーバーローン)場合、手元に差額分の現金がなければ売却できません。
4 「一生住むから売却価格は関係ない」の落とし穴
「自分は一生ここに住むつもりだから、将来の売却価格(資産価値)なんてどうでもいい」と考える方も少なくありません。一生住むつもりで家を探す姿勢自体は素晴らしいものです。しかし、「だから売却時のことを考えなくていい」ということにはなりません。
なぜ「資産価値」を意識すべきなのか?
人生には予想外の出来事がつきものです。急な転職、転勤、家族構成の変化、あるいは社会情勢の激変によって、「売りたくなくても、売らざるを得なくなる可能性」は誰にでもあります。
そんな時、「いざとなったらいつでも売れる(高く手放せる)」という状況を作っておくことは、精神的な安心感にも繋がりますし、取れる選択肢の数も圧倒的に増えます。
まとめ:本当の経済性は「出口」で決まる
厳しい現実を言えば、購入した不動産の経済性が本当に優れていたかどうかは、「実際に売却した後(出口を迎えた後)」にしか分かりません。どれほど「将来も価値が維持できます」と言われていても、未来の社会情勢によって左右されるからです。
しかし、だからこそ私たちは、購入前の段階で以下のことを意識しなければなりません。
- 予算設計の違い: マンションと戸建ては、ランニングコストを考慮して別予算で計画する。
- 資金の安全性: 万が一に備え、安易なフルローンは避け、頭金や十分な予備資金を確保しておく。
- 出口戦略: 永住予定であっても、将来の売却価格(資産価値・買い手の需要)を意識して物件を調べる。
最初のイニシャルコスト(購入価格の安さ)だけに惑わされず、この3つのバランス(購入価格+住んでいる間の維持費+売却価格)を強く意識して、後悔のない不動産選びを進めていきましょう!

