無垢材のフローリングについて世間一般で言われていることに感じたことを述べます

床材については、住宅を購入される方、特に注文住宅を建てる方は多くの思い入れを持って床材を決める方が多いように感じます。実際この床材でどのような材料を使うかで家の雰囲気は大きく変わります。

人気が高いのは無垢材のフローリングでしょう。この無垢材のフローリングについては様々な意見が出ており、メリットはこう、デメリットはこうであるという意見もたくさん目にします。床材のような内装材は、特別な事情が無い限りは、購入者の好みで決めてよいとは思いますが、世間一般の意見の中で、これは正しく無いのではと思われる意見もたくさんあります。

そこでこのページでは無垢材のフローリングについて、私自身が感じている事、考えている事について、少しお話ししたいと思います。

無垢材の経年変化が必ずしも良い味を出すとは限りません

無垢材のメリットで良く聞く内容として、経年変化が良い味わいを出す、というものがあります。徐々に飴色に変わるですとか、古民家のような味わいが出る等、古くなっても汚くならないという点が強調されます。

このこと自体を間違いと言うつもりはありません。実際にとても良い色になった古いフローリング材、床材を見る機会も多く、これは雰囲気があるなと感じられるモノも多くあります。

一方ですべての無垢フローリングが良い味わいを出すとも限りません。これはどういうメンテナンスをするかにもよりますが、使い方によっては古くてかつ汚くなるケースもあります。

特に液体、水とか調味料とかペットのおしっこ等がフローリングに付き、その後の手入れが適切でなかった場合には、跡になって残る事もあります。

汚れた無垢フローリング

無垢の汚れたフローリングの代表例です。

上の写真は何をこぼしたのかは分かりませんが、何らかの液体を床にこぼし、その跡がそのまま残ったのではないかと予想されます。無垢材であれば、表面を削ればまた元に戻るという意見もあり、それは恐らく正しいでしょう。ですが床を削る事自体そもそも簡単ではありませんし、仮にうまく削れたとしても他の部分は飴色になっているのに、削った部分だけ白くなってしまうと、これも美しいかどうかは微妙な気がします。

また、フローリングの樹種によっては、木の油なのか人の足の油脂なのかは分かりませんが、黒いカビのような汚れが付くこともあります。

写真の下の方に黒い汚れが出ています。

ちなみにこの汚れはアルコールで拭くことで取る事が出来ます。

アルコールで拭く

メタノールで簡単に落ちます。

もちろんアルコールではなく、普通の床用洗浄剤でも落ちます。こういった普通の掃除以外の事が必要という点では手が掛かります。一方でこのようなメンテナンスは好き、という方も多くいらっしゃいますし、手をかける事が苦にならない方であれば問題ないかもしれません。

あるいは定期手にワックスがけする、塗装するという事で風合いを維持するという方法もあります。これも手間ではないという方であれば良いと思います。

実際に手間はかかるものの、手入れの行き届いたフローリングは素晴らしいという事もあります。ただ、何もしなくても良い味が出るという話ではありません

床材の含水率が安定するという意見は正しいのか疑問です

逆に無垢材のデメリットとして、膨張や収縮を起こすために、フローリング同士で隙間が出たり、板が反ったりするという意見があります。もっとも最近の無垢材のフローリングは十分に乾燥させた上で製品化していますので、昔ほど酷い反り等は少なくなっているとは思います。

しかし、全く反りが出ないとか隙間が出ないかと聞かれますと、そうでもありません。また現地に一定期間置いておくとか、施工して何年も経つと含水率(木材の中にどの位水を含んでいるかを示すもの)が安定し、収縮しないという意見もあるのですが、この意見が正しいかどうか、私には疑問です。

含水率16%

含水率16%の無垢フローリング材です。

例えば上の写真は、築17年の住宅の床材の含水率です。部屋の大半の場所で16~17%位の含水率でした。平衡含水率は屋内では12%程度と言われますが、この住宅ではそれよりも高くなっています。

含水率27%

洗面室の床で27%という場所もありました。

ちなみにこの住宅の床でもっとも含水率が高かった場所は27%もありました。この場所は洗面室で日頃から水に濡れやすかったり、湿気が高い場所ではあります。

ただ場所は違うものの上2つの床の木材は同じ樹種で同じ厚さです。木材の水分量、すなわち含水率によって収縮膨張があり、それによって床材が変形するという話があります。この意見に対し、平行含水率で落ち着けば、もう変形しませんという説もあるのですが、計測していますと、築年数の古い家でも含水率が大きく違うという事があるようです。

無垢の床材の変形については様々な説があり、どれが正しいのか正直なところよく分かりません。床材を高温乾燥で乾かし、1度でも12%以下とか10%以下にすれば、もう変形しないという説も聞いたことがあります。これについては私は検証できておりませんので正しいかどうかは判断が出来ません。

また高温乾燥をすると木の中の油が抜けきってしまうために、経年変化をしても良い色にならないという説もあります。これも検証が出来ていませんので正確には分かりません。

また高温乾燥の無垢フローリングは固い印象で、ムク材の風合いが出ないから好きではないという方もいます。私も高温乾燥のフローリングを昔触ったことがあるのですが、確かにその感覚は分かるような気はします。

もちろん無垢材は樹種の違い、使われている環境の違い、元々の乾燥度合いの違い等で様々な差が出てくると思います。ただこのような条件の違いを無視して、一律このようである、と考えると実は違うという事があるかもしれません。

ちなみにこのフローリングの家では、築17年経過していますが、未だに冬は乾燥してフローリング間の隙間が広くなり、夏は板が広がり隙間は無くなるとの事でした。少なくともこの家に関しては、年月が経つことで膨張収縮が落ち着くという事は無いようです。

無垢材の方がシックハウス対策になるとも限りません

無垢材のフローリングについて、個人的に納得しがたい説として、シックハウス対策に有効というものがあります。シックハウス=化学物質系、つまり無垢ではないフローリングと言うように連想しているのかもしれません。

しかし自然素材であればシックハウス症候群や化学物質過敏症にならないかと言えば、そうとは言い切れません。更に言えば、既に化学物質過敏症の症状が出ている人の話を聞く限り、無垢のフローリングはむしろ悪影響を与えるケースの方が多いように感じます。

これは無垢材から出る木の香りに反応される方もいれば、無垢材ならではのワックス剤、塗装剤に反応される方もいるようです。どの香りや匂いに反応するかは、過敏症の方によって異なりますので一概に言えませんが、香りが強い樹種は大半はダメですし、ワックス等についても自然系ワックスだから大丈夫かと言えば、却って悪くなるものもたくさんあるようです。

化学物質過敏症の方が好むフローリングは、無垢であるかどうかよりも、ウレタン塗装か何かで香りを閉じ込めてあるかどうかの方が大きいように感じます。一般的にウレタン塗装を行いますと木材の自然な感じが少なくなりますので、自然派の方からはまずお勧めされませんが、過敏症の方から見れば、とにかく症状が出ないモノ、という考えで結局ウレタン塗装のフローリングに落ち着く例が多いように聞きます。

このような現状を知らずに、ムク材は体に良いとか、シックハウス対策として優れているという話が世間で多く出回っている事に対して、造り手の勉強不足を強く感じます。

正しく理解した上で床材を選びましょう

このようなお話をしていますと、当社では無垢のフローリングをお勧めしないように思われる方も多いかもしれません。しかし私個人の好みで言えば、フローリングは無垢材が良いと思っていますし、実際に私の家の床はほとんどすべて無垢のフローリングにしています。

私の自宅のフローリングは最初に荏胡麻油のワックスをかけただけで、後は何もしていません。実質無塗装と呼んで良い状態だと思います。この場合、表面の保護はありませんので、汚れには強くありませんが、それでも足触りの良さや光をあまり反射しない色合いがとても気に入っています。

我が家は築年数も古くなっているのですが、劣化したせいか床が浮造りのように凹凸がでるようになり、それがまた足に心地よい感じを与えてくれます。今のところ新たに家を建てる計画はありませんが、もし新たに建て直すことになったとしても、やはりまた無垢材のフローリングを選ぶでしょう。

ですので無垢材のフローリングが悪いというつもりは全く無いのですが、一方であまり正しいと思えないメリットが多く語られている状況を見ましたので、今回このような記事を作ってみました。

最初にも言いましたが、フローリングは最後は好みで選んで良いと思います。ただ正しい情報を得た上で、本当に自分が気に入るのは何かを考え、選んでもらえばと思います。

この記事の内容を動画でも説明してみました

このページでお話ししました内容を動画でも解説してみました。その動画がこちらです。

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