この記事の所要時間: 855

家を買うべきか買うべきではないかという点については、多くの人が意見を持っています。そして買わない方が良いという理由として「これから日本の人口はどんどん減っていくため、不動産は余り始め、その結果不動産価格は下がるので買わない方が良い」というものがあります。

この意見が本当に正しいかどうかは分かりませんが、人口減が不動産価格に影響を与えるのは確かです。しかし、この主張をされる方で、実際の人口統計の元データを確認される方はめったにいません。そこでこのページでは、元データをどこで見るのか、そして何を確認するのかについて、簡単にお話ししたいと思います。

統計データの多くは「e-Stat」で確認できます

まず、統計データと言っても、何をどう確認すれば良いか分からない方の方が多いと思います。幸い現在様々な統計データはWeb上で確認できます。公的なデータの確認は、そのほとんどが「e-Stat(参照:総務省統計局)」という政府統計の総合窓口サイトから確認することができます。

そして世帯数や人口の推移は「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査(参照:総務省統計局)」から確認することができます。

ここから人口を確認したい年次をクリックする事で、その年のデータベースの一覧を見る事ができます。データの種類は多いのですが、まずは現時点での最新である2018年を見てみましょう。統計表の1番上は「【総計】都道府県別人口、人口動態及び世帯数」となっています。こちらのエクセルのデータを開きますと、都道府県別の平成30年(2018年)1月1日時点の人口や世帯数が出てきます。

ちなみにこの時点での日本の人口は1億2,771万人弱となっています。世帯数で言えば、5,801万世帯弱です。人口等については、他のサイト等で人口については語られているので、いちいち元データを見る必要は無いと考える方も多いでしょう。ですが、1度はご自身でデータを確認される事をお勧めします。

数値だけで聞いてもイメージがし難いと思いますので、1981年から2018年の人口の移り変わりをグラフにしてみました。そのグラフがこちらです。

日本全体の人口の推移

総務省統計局のデータからふくろう不動産が作成

まずこの表を見て気が付くのが、2012年から2013年で大きく人口が増えている(ように見える)点です。元号で言えば平成24年から平成25年の間という事になります。

これはこの間に日本の人口が増えた、という事ではもちろんなく、集計方法が変わった事による数値増です。具体的には「日本の国籍を有しない者のうち住民基本台帳法で定めている者」の分もこの年から集計に加えたという事です。ありていに言えば、日本に住む外国人の分も加わったという事です。

この変更については「住民基本台帳人口移動報告 統計の概要(総務省統計局)」のサイトで確認することができます。なぜこの年からこういう集計になったかと言えば、住民基本台帳制度が整ったから、という事のようです。こちらは「外国人住民に係る住民基本台帳制度(総務省)」のサイトで確認が出来ます。

ちなみに2012年の人口は1億2,666万人、2013年は1億2,837万人で171万人多くなっています。比率で言えば1%強なので小さいとも言えますが、171万人という数で見ますと、小さな県2つ分の人口ですから多いとも言えそうです。それはさておき、元データを自分で管理しておくと、何か考える際に比較やチェックができます。総務省統計局のサイトから誰でもダウンロードできるデータですので、興味がある方は元データをチェックしてみてください。

土地の価格の推移と重ね合わせてみました

さて、当社は不動産仲介会社ですので、単なる人口の推移よりもこれが不動産の価格とどのような関連を持っているのかが気になります。そこで今度は国土交通省のサイトから「地価変動の推移、地価水準の推移(国土交通省)」のデータを取り出して、先ほどのデータと合わせてみましょう。地価は全国の住宅地の公示価格から拾っています。そのグラフがこちらです。

日本全体の人口と住宅地の地価の推移

総務省と国土交通省のデータからふくろう不動産が作成

地価の設定は昭和57年(1982年)を100とした場合のその年の価格の比率を出しています。これは皆さんがご存知の通り1991年のバブル期をピークに後は概ね地価が下がっています。

他には2008年のリーマックショック前のプチバブルではもっと地価の変動が大きかったように感じる方も多いとは思いますが、いざグラフにしてみますと、単に下がり方を一時的に食い止めただけのように見えます。もっとも公示価格は政策的な要素も入っていますし、実体経済が反映されるまでのタイムラグも大きいので、本当に参考程度ですが、傾向はそれなりに表していると思います。

そしてこの30数年を見る限り、人口の増減と地価の上がり下がりには相関関係は無さそうだと感じます。人口が減るから不動産の価格が下がると主張される方も多いのですが、過去30年を見る限りでは、その主張は正しく無さそうな気がします。

世帯数の統計数値とも照らし合わせてみました

統計データは見るポイントや何データを見るかによっても、多くの気づきを得る事が出来ます。例えば先程は人口だけで見ましたが、不動産について考えるべきは、人口ではなく世帯数であろうという主張もあります。世帯数イコール部屋数(住戸数)という事を考えますと、確かにその考えは正しい気がします。

では世帯数と地価との重ね合わせグラフを出してみましょう。

日本全体の世帯数と住宅地の地価の推移

国土交通省と総務省のデータからふくろう不動産が作成

人口は2014年をピークに少しずつ減っているのですが、世帯数という切り口で見ますと、まだ増え続けているという結果になっています。逆から見れば、1世帯当たりの人数が減っているという事になります。

この世帯数がいつ減少に転じるのかは私には分かりませんが、とりあえず言えるのは過去30年強を見ても、世帯数と地価の増減に相関関係は無さそうだという事です。

東京の世帯数とマンションの価格の推移についてもグラフにしてみました

このような話をしていますと、関連するのは地価ではなく不動産の価格ではないか、という意見も出てきそうです。そこで今度は首都圏のマンション価格の推移と東京の世帯数とに関連があるかどうかを見てみましょう。マンション価格については「首都圏のマンション価格、住宅地価格、住宅建設工事費、消費者物価指数の累積変動率の推移(国土交通省)」からデータを拾ってみます。

世帯数については前述しました「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数調査(総務省統計局)」のデータから東京都に関する部分だけを抜き出して集計してみました。

ちなみに東京都の2018年の世帯数は700万を超えています。

東京都の世帯数と首都圏のマンション価格

国土交通省と総務省のデータからふくろう不動産が作成

首都圏のマンション価格については2016年までしかデータがありませんでしたので、途中で切れています。さて、こちらも相関関係があるかどうかは微妙です。バブルの時期を除けばある程度は関連性があると言えなくもありませんが、少し無理がある気はします。

私個人の意見としては、あまり世帯数とマンション価格には関連性はほとんどなく、あったとしても無視できる程度のものではないかと思っています。

自分でデータを見て考える事が重要です

さて、こういったデータを見ていきますと、単に人口や世帯数によって不動産の価格が変わるかと言われますと、過去のパターンからはあまり関連性は無い印象があります。

ただこういった話をしても、長期的には連動するはず、という意見や、他の要素の兼ね合いで数値がこのように動いているだけで、理論的には人の数と価格は連動するはず、という意見もあります。

これは何が正解であると言えるものはありません。数多くの学者や評論家が意見を出していますが、どこまで言っても将来の話は予想の域を出ません。

だからといって何も考えなくても良い、とは思っていません。不動産を買おうと思っている人、あるいは買わない方が良いと思っている人、各自がどう考えどう行動すべきなのかを考えるべきだと思っています。

今回このような記事を書きましたのは、人が減るから不動産価格は下がる、という単純なものでは無いと皆さんに知って頂きたかったからです。参照できるデータは一般に公開されていますので、誰でも見る事ができます。そしてその公開されているデータを見ることなく、こうなるはずとか、この人はこう言っている、と言うだけで不動産の流れを判断するのは大変危険であると私は考えています。

もちろんプロでもない一般の方が、データ等を調べて未来予測をするのは簡単では無いでしょう。ですが、実はプロでもデータを調べずに予測を語る方は数多くいます。そしてどの方がどのような根拠で話をしているのかを知る事は、それなりに重要であると私は考えています。

実際に出ている多くの意見の中には、政策的なものや、ポジショントーク的なモノがたくさんあります。また単に空気に流されて作られている意見もたくさんあります。そういったよく分からないものに振り回されないためにも、たまには元データに当たってみるという事は有効だと思います。

今回は単に人口や世帯数でチェックしてみましたが、他の切り口でも今後調べてみたいと思います。その上で、皆さんの判断に役に立つデータや意見を発信していきたいと思います。

この記事の内容を動画でも説明しています

このページでお話ししました内容を動画でも解説してみました。その動画がこちらです。

よろしければ、動画もご確認ください。この記事についてのご意見やご質問等がございましたら、「お問い合わせフォーム」をご利用の上、ご連絡ください。