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日本の中古戸建て住宅では建物に資産価値が付かないと言われます。私は中古住宅の仲介を業務として行っていますので、この建物に資産価値が付かないという話はまったくその通りだと感じています。

国は戸建住宅に価値が付かないのは良くない、という考えで、住宅性能表示などの制度を広めたり、リフォームの補助金を出したりなどの対策を打ち出しています。その対策の一環かどうかは分かりませんが、戸建住宅価格の査定の考え方においても、戸建住宅には価値がある、と思わせるような査定方法に少しずつ変わってきているように感じます(「土地や中古住宅や中古マンションの査定の意味を知り、資産価値を把握しましょう」参照)。

査定ポイントのイメージ

査定ポイントの仕上げ材量の基準は何かおかしさを感じます。

しかしこの査定内容の建材によるポイント差という項目を見ますと、少し現実から外れているのではないかと感じます。このページではどの材料が査定上高く評価されるようになっているか、そしてその内容は本当に正しいのかについて、お話ししたいと思います。

地元の瓦は名産地の瓦よりもそんなに安いでしょうか?

査定マニュアルでは、仕上げ材の部材ごとに格差率というものを設定しています。その設定率は部材ごとに異なるのですが、大きくは3つの仕様ランクに分けられます。A仕様は最高でもっとも格差率が高く、C仕様が最低で率が低くなっており、B仕様はその中間です。

そして屋根は下記のような仕様設定となっています。
A仕様
・いぶし瓦(上質)・・・三州瓦や淡路瓦のようなブランド瓦
・高級S型洋瓦
・天然スレート
・銅板
B仕様
・いぶし瓦(地瓦)
・釉薬瓦(陶器瓦)
・波型プレスセメント瓦
・洋S型プレス色瓦
・カラーベスト
C仕様
・厚型スレート
・鉄板瓦棒葺き
という、仕様設定です。

日本瓦のイメージ

中古住宅の瓦は耐久性で考えると良いイメージなのですが…

この区分けに納得できる部分もあれば、なぜ?と分からない部分もあります。例えばブランド瓦と地元の瓦で仕様が分けられていますが、性能的にはこの2つに違いはありません。また、ほとんどの人は見ただけでは瓦の産地やブランドを識別することは不可能でしょう。この2つの区分けは意味が無いと思われます。

また、セメント瓦系(プレス瓦)と普通の瓦が同じ仕様設定というのも納得がいきません。商品にもよりますが、一般的にセメント瓦は表面に加工をしているだけで、瓦全体を焼き上げている訳ではありません。そのためセメント瓦は通常の瓦よりも耐久性が低く、古くなれば水を吸う事もありますので、性能的には瓦よりも劣っています。

新築当初であれば、見栄えが瓦よりも優れていたとしても中古となれば性能や耐久性の方を優先させるべきで、その観点からすれば、セメント系瓦は、通常の焼いた瓦よりも仕様を低く考えるべきではないかと思います。

ガルバリウム鋼板が窯業系サイディングよりも安いでしょうか?

外壁材についての仕様は次のように設定されています。
A仕様
・タイル貼り(1/3以上)
・リシン掻き落とし
・ALC
B仕様
・吹き付けタイル
・スタッコ仕上げ
・セメント系不燃サイディング(窯業系サイディング)
C仕様
・色モルタルリシン吹付
・金属系サイディング
・カラー鉄板
・セメント系不燃サイディング(窯業系サイディング)
となっています。

外壁のイメージ

外壁の仕様基準も何だかなという感じです。

窯業系サイディングがB仕様とC仕様の両方に入っているのは、高級品と普及品で分けているという事なのでしょう。しかし金属系サイディングがC仕様になっているのは不思議です。カラー鉄板と異なり、金属系サイディングはそれなりに価格も高く性能も高いものです。その代表例であるガルバリウム鋼板は建築家が好んで使う材料で、実際に見た目も悪くなく、防水性も高い製品です。

外壁材については、仕上げの材料による差というよりは、見た目が高級そうなもののの代表例を入れるとこうなったという分けかたのような気がします。こちらも屋根同様、耐久性や防水性などの性能は計算には入っていない様子です。

ドア表面が突き板かプリントの区別はつくのでしょうか?

内部建具については、次のような仕様設定となっています。
A仕様
・室内ドア高級品
・ふすま高級品
・障子戸高級品
B仕様
・室内ドア標準品
・ふすま標準品
・障子戸標準品
C仕様
・室内ドア普及品
・ふすま普及品
・障子戸普及品
となっています。

ドアのイメージ

昔はともかく今では突板とプリントは見分けが付けづらいのですが…

室内ドアは高級品はこのようなもの、標準品はこのようなものという説明はあるものの、結局は見た目で判断するしかありません。ドアの表面は突板の方がプリントよりも高くなるような設定になっていますが、表面にアクリル塗装などを行った場合には、この判断も正確にできません。

昔のドアであれば、明らかにプリントと分かりましたが、今ではプロが見てもプリントか突板の木目なのかが分からない位レベルが上がっています。それを考えますと、この基準で良いのかは疑問です。

ふすまや障子は表面の紙のレベルである程度判断するような設定になっていますが、ふすま紙や障子紙は簡単に換える事ができます。簡単に変更可能なものでレベルを判断するのはいかがなものかと思います。

障子のイメージ

障子の桟の強度は重要でしょうか?

また、C仕様の障子の桟は外国製で日本製よりも強度が低いと設定されていました。しかし障子の桟は特に強度が要求されるものでもありませんし、外国産の桟はスプルース等を利用している前提となっているのでしょうが、杉と比べてそれほど弱いとも思えません。このあたりの設定は、割と適当な設定をしているように感じます。

畳表のイ草の長さに気が付く人はいるでしょうか?

仕様のすべてを記載しますと長くなりますので、ここからは少し簡単に説明します。床材でも仕様の基準はいくつかありますが、畳については、高級品、標準品、普及品とで分けられています。しかしその分け方が分かり難いものです。高級品は長いイ草を使い普及品は短いイ草を使うと言っていますが、畳表のイ草の長さは気が付くものでしょうか

畳のイメージ

畳のイ草の長さは見て分かるものでしょうか?

畳の目の詰まり具合は何となく分かりますが、長さまでは普通は判断できないと思います。少なくとも私には無理です。畳のプロであれば、短いイ草は端の色が違うので分かると言われるのかもしれませんが、ほとんどの査定員は判断できないと思います。

しっくいの壁は化粧合板の壁よりも安いでしょうか?

壁ではしっくい壁はC仕様、化粧合板の壁はB仕様となっていました。高級住宅でも美しいしっくい壁の家もあるのですが、なぜかしっくいはビニールクロスと並んでC仕様です。

しっくい壁のイメージ

しっくいは素晴らしい材料だと思いますが、なぜか評価が低いようです。

ちなみに壁のA級は紙クロスと檜の板張り、B仕様は新京壁、布クロス普及品が入っています。分からなくもないのですが、単なる好みのような気もします。

キッチンやお風呂の基準は長さや広さだけですか?

キッチンや浴室に至っては、天板などの材料も見るようにはなっていますが、基本的にはサイズで判断するようになっています。キッチンであれば3m以上の長さはA仕様、2.4m以上であればB仕様、それ未満であればC仕様です。

キッチンのイメージ

キッチンやお風呂は大きさでしか判断されないようです。

浴室は1.25坪以上あればA仕様、1坪タイプはB仕様、それ未満はC仕様です。確かに材料や設備も大きさに比例して高級なものになる傾向がありますので、概ね間違いでは無いのでしょうが、高いかどうかは大きさで決まるというのも何だかという気がします。

再調達原価と中古になった時の価格は同じではありません

ただ、これらの話はマニュアル作成者を批判しているのではありません。どうしても感覚だけではない、何らかの基準を作らなければならなかったため、無理に作ってしまったためにこのような基準設定になったのではないかと思います。

作り直しのイメージ

再調達原価で考えるから変になるのでは?

しかしその設定が、再調達原価で考えているために、実際に高級であるか、一般の人が良いと感じるかどうかとは別の視点になっているように感じます。原価が高いからといって、みんなが高級と感じる訳ではありません

例えば銅葺の屋根は確かに費用が高いものですが、人によっては安っぽいと感じる人もいます。金属系サイディングは価格は安いかもしれませんが、デザイン次第ではとても美しい壁となっている時もあります。このあたりを一律で原価だけで資産価値、査定額を決めるのは実情には合っていない部分が大きいと思います。

本来は利用価値で判断すべきですが、実際に査定するには難しいのでしょう

私個人は、この査定金額は再調達原価などの価格で判断するのではなく、利用価値で決めるべきだと思っています。実際には査定マニュアルも構造や基礎などの評点が高くなっていますので、考え方は大きく違わないのかもしれません。

しかし材料については、耐久性や機能性で判断すべきだと思っています。耐久性がある材料であれば、今後ずっと使用しても問題ありませんから、その家をそのまま長く使う事ができます。再調達原価は関係なく、今後どの位利用できるかで査定金額を決める方が現実的な気がします。

高級のイメージ

再調達価格ではなく、利用価値で決めるべきでは…

例えば屋根で言えば瓦は劣化しませんから高く評価すべきです。逆にセメント瓦等は耐久性が低いことを考えると低めに評価すべきではないかと思います。

浴室であれば、在来よりもユニットの方が、下地の木材に与える影響が少ないため高く評価するとか、もう少し違う切り口の方が現実に即しているのではないかと考えました。

中古住宅市場の歪みは買う方には良い面があります

最初にお話ししましたように、中古の戸建住宅には価格があまり付かず、国は何とか建物にも価値を持たせるようにと、今回お話ししました査定内容も含めて様々なやり方を考えているようですが、なかなか建物に価値が付く流れになりません。これは大変な事なのかもしれませんが、一方でこの事で得をする人も出てきます。それは中古戸建て住宅を買う人です。

歪みのイメージ

歪みがあるから得できる、という考え方もあります。

買う人からすれば、利用価値は高い、つまり十分使えるにも関わらず価格が安い、タダ同然になっているというのはとてもお買い得になっている事になります。投資の世界では市場の歪みを利用して儲けるという話もありますが、中古住宅の市場は利用できる商品がタダ同然で売られているというある意味歪んでいる状態です。ですので、住まいは中古でも構わないという人から見れば、とてもありがたい状況でもあります。

後は資産価値がないだけでなく、実際の利用価値も低くないかどうかさえ確認できれば本当にお得です。利用価値が高いか低いかは、様々な検査やチェックが必要ですが、その手間さえ惜しまなければだれでもこのお買い得商品が買えるという事でもあります。

住まいを買おうという人は、このような現状も考えつつ、新築が良いか中古が良いかを決めてもらえればと思います。

この記事の一部を動画でも解説してみました

このページでお話ししました内容の一部を動画でも説明しています。よろしければ、動画もご確認ください。

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