不動産売買契約書に記載する住宅ローン特約の設定の基礎知識を得ておきましょう

不動産を購入される方の大半は住宅ローンを組みます。その場合には不動産売買契約書内に住宅ローン特約の項目を入れなければなりません。この事自体はご存知の方の方が多いと思いますが、その特約を入れる際に、どういった設定にしなければならないかについては、あまり注意されない方も多いようです。このページでは住宅ローン特約の項目を契約書に入れる際に、どういった点について注意しなければならないかについて、お話ししたいと思います。

住宅ローン特約の項目を不動産売買契約書内に必ず入れましょう

まず最初に注意すべき点は、住宅ローン特約の項目が契約書にきちんと入っているかどうかを確認します。最初に住宅ローンを使う旨不動産会社に話をしているのであれば、ほとんどの場合はこの特約が入っている契約書を用意してくれます。ですのでこちらはあまり心配する必要はありません。

契約書

契約書に特約が記載されているという点は必須です。

しかしまれに、不動産会社がこの特約が入っていない契約書を用意するケースもあると聞きます。住宅ローン特約とは、万が一に住宅ローンの審査に落ち、ローンの借り入れができなくなった場合に、契約を白紙解約できるという内容が書かれているものです。白紙解約ですので、契約時に手付金を払ったとしても、その手付金は返却されるという設定になっており、この特約を結んでおく事で万一の審査落ちの場合にも損をしないで済みます。

この住宅ローン特約を結んでおらず、そしてローン審査が通らなかった場合には、手付金の放棄か違約金の支払いという形で解約せざるを得なくなります

現実的には、このローン特約の説明をしなかったり契約書に入れない会社はほとんど無いと思いますし、仮に入っていなかった場合であっても訴え出れば、不動産会社の説明義務違反という形で法的には勝てる可能性が高いでしょう。しかし、それはそれでトラブルには違いありませんし、そもそも最初から特約を組んでおけば問題にはなりませんので、まずはこのローン特約の存在を知っておき、その特約が入っているのかどうかを確認しましょう。

ちなみにこの特約が契約書に入っているのかどうかについて、契約日当日に契約書を確認するようでは、気が付かないという恐れがあります。落ち着いて内容を確認するためにも契約書と重説は1週間前には写しをもらい、文面は確認しておくべきです。このお話は「契約書や重要事項説明書は1週間前にチェックしましょう」のページでもしていますので、こちらのページもご確認ください。

ローン特約が使える期限の設定は余裕を持って入れましょう

このローン特約がまずはあるという前提で、次に注意すべきは、ローン特約が利用できる期間です。ローン特約を契約書に入れる場合には、この特約はいつまで使えるかの設定日が書かれています。そしてこの設定日を過ぎてしまいますと、住宅ローン特約を使って契約の解約という事が出来なくなります

期日内に

ローン特約が利用できる権利には期限があります

こちらも通常はローン審査に必要と思われる期間に少し余裕をもった期間が設定されるはずですが、会社によってはこの期間をたいへん短く設定する会社もあります。今まで見た中で1番短いものでは、この解除できる期間を契約日から5日後に設定した書類を見たことがあります。

ローンの本審査にどの位の期間がかかるかは、金融機関によっても異なります。また、審査機関は本来短かったとしても、その金融機関に書類を提出する時間も予め見ておかなければなりません。金融機関は平日しか受付をしていない会社も多いため、審査書類を出すタイミングが遅くなることもあります。

また審査のための提出書類に不備があった場合、その間は審査は進みません。提出書類の不備の確認や、再提出等の手続きをしている間に1週間くらい経ってしまうという事は普通に起こり得ます。こういった状況に備えて、ローン特約が使える解除期間の設定はある程度余裕をもった日時で設定すべきだと私は思っています。

私見ではありますが、この解除ができる期間は3週間以上は欲しいと思っています。もちろん審査の手続きは、契約後は速やかに行うべきですし、余裕があるからといってゆっくりして良いというものでもありません。また売り主さん側の都合もありますので、必要以上に長く時間をかけるべきものでもありません。一方で安全側を見て、ある程度の余裕は欲しいものだと思います。

このローン解約できる期間は、油断すると結構短い時間で設定されます。ローン特約があるからと安心せずに、こういった期間の設定、解除期限の設定にも注意して問題のない日にちで契約をすべきだと思います。

ローン特約に対応する金融機関は、利用予定の金融機関のみ入れましょう

他の注意点として、ローン特約に対応する金融機関の記入欄があります。通常はどの金融機関、どの銀行を使うかは予め買主さんは決めていますので、その銀行のみを契約書に記載する事になります。しかしこの書き入れる銀行の数をやたら多く入れたがる不動産会社もあるようです。買主さん側の立場から見れば、ローン特約の対象となる金融機関の数は不必要に増やしてはいけません

様々な銀行

利用を考えていない銀行を書き入れるべきではありません。

ローン特約の対象となる銀行をたくさん入れる事で次の2点のデメリットが出ます。その2点とは
・金利が高いなど条件の悪い金融機関でも契約しなければならない状況に追い込まれる
・記載銀行で審査の手続きをしない場合には、契約違反と取られる危険性がある
の2点です。

この2つは分かり難いと思いますので、もう少し詳しくお話しします。

条件が悪い別金融機関でローンの借り入れをせざるを得なくなる危険性があります

ローンの審査を、借り入れ条件が良いA銀行と条件が悪いB銀行で審査を進めていたとしましょう。A銀行でローン審査に落ち、B銀行で審査が通った場合には、当然B銀行での借り入れを行うことになります。これが最初から覚悟の上であれば良いのですが、B銀行の悪い借り入れ条件では契約したくなかった、という事であれば、特約の対象となる金融機関でB銀行を入れてはいけません。

銀行による差

使いたくない銀行を設定銀行として入れるべきではありません。

最悪の場合にはB銀行での借り入れは仕方が無いと思っていたとしても、わざわざ特約の中に入れる必要はありません。A銀行で融資が通らなかった場合、解約するか別銀行であるB銀行で買い入れをして購入するかは、買主側の権利として取っておきたいからです。

ローン特約は、契約書の記載の銀行で審査が通らなかったからといって必ず解約しなければならないというものではありません。解約できる権利を持つというだけです。そして、特約にB銀行についての記載がなければ、ローン特約を使って解約するか、B銀行で借り入れをするかは、その時点で選ぶことができます。しかし、もし特約にB銀行の内容が記載されているのであれば、B銀行で審査の手続きを行わなければならず、その審査が通ればB銀行でローンを組まなければなりません。この場合にはローン特約を使う事はできません。

つまり買主側の立場で見れば、特約対象の銀行を本命1つにしておけば、後は他の銀行を使うかどうかは買主側の権利となります。納得がいかなければローン特約を使って解約はできますし、条件が悪い銀行でも買うという意思があれば、特約を使わないという方法も選べます。これを予め契約で自分の選択を制限されるような条件にしてはいけません。

もちろん契約は相手方である売主さんとの合意で行われるものですし、売主さんは極力白紙解約にはしたくないでしょうから、数多くの銀行を入れたがるでしょう。ですので、これは話し合いでどこまで銀行名を入れるか事前協議で決めなければなりません

契約時にたくさん書かれたものを見せられ、勢いで契約してしまいますと、この内容に縛られる事になりますので、これも事前の確認が重要です。こういった知識を得た上で、契約内容や特約内容をチェックするようにしましょう。

1つでも審査手続きをしないと契約違反となり解約できない危険性があります

また、銀行数をたくさん記載された場合、単にその銀行を使わなければならないというリスクだけではありません。最悪の場合には違約金を支払わなければならないというリスクがあります。

契約違反

審査手続きをしないと契約違反に問われる可能性があります。

これはローン特約の条件によって起こります。ローン特約では、この特約が使える代わりに、審査手続きを速やかに行わなければならないという決まりが契約書に記載されているはずです。ですので、記載銀行がたくさんあり、それらの銀行はどうせ使わないと思って審査手続きを行わず、本命の銀行で審査に落ちた場合には、面倒な事になり兼ねません。

つまり、すべての記載銀行で審査手続きを行わなければならなかったのに、一行か二行の銀行で手続きを怠ったが故に借り入れができなかった場合には、特約の対象外となってしまうリスクがあるという事です。この場合には白紙解約ではなく、手付金放棄や違約金の支払いでの解約という形になる可能性があり、経済的なロスが大きくなります。

ローン特約の対象となる金融機関の数を増やすという事はこのようなリスクが出てきます。こういったリスクを理解した上で、契約書に記載するかどうかを決めなければなりません。相手方の勢いでたくさん書いておけば安心、という考えで銀行名を増やすとトラブルになる可能性はそれだけ増えると考えておくべきだと思います。

特約を利用して契約を解約する方法が2種類のどちらのタイプかを把握しておきましょう

最後の注意点は、ローン審査に落ち、解約しなければならなくなった場合の手続きについてです。基本的にはローン特約による契約の解除には2パターンあります。自動的に解除になるやり方と、申請などをして、つまり手動で解除するやり方です。

2パターンある

解約手続きはどちらのタイプかを把握しておきましょう。

法的な用語でいえば、これは自動的に解除となるやり方は「解除条件型」と呼ばれ、手動で解除する方法は「解除権留保型」と呼ばれます。どちらが良いかは条件にもよりますので、ひと口では判断できません。ですが、どちらのタイプのローン特約なのかは把握しておくべきです。

自動的に解除となる「解除条件型」だと考えていて、審査に落ち何も手続きをしない場合で、解除期限が過ぎてしまった場合には、もうローン特約を使う事は出来なくなります。その場合に解約したい場合には手付金放棄や違約金の支払いといった問題になり兼ねません。

対処策としては、どちらの方式であるのか分かり易く契約書に記載し、どちらの方式であるのかをきちんと事前に確認しておくという事と、どちらのタイプであっても必ず書面等の証拠が残る形で審査結果については報告するという事を徹底するという方法があります。

審査に通っても通らなくても報告するという事を理解しておけば、どちらのタイプであってもトラブルには巻き込まれ難くなります。思い込みや口頭の連絡のみで話を進めますと、こういったトラブルになる可能性が高くなりますので、この点も予め理解しておきましょう。

不動産会社に説明してもらうのが1番良いのは確かですが

これらのローン特約のお話は、不動産会社の営業マンに詳しく説明してもらうのが1番です。そして全てを理解した上で契約に臨むのが理想的です。しかし残念な事に、この特約の内容をきちんとお話ししない営業マンも一定数います。

これは単にローン特約について詳しくないというケースもありますし、売主さんサイドに立つ不動産会社は、買主さんに有利な特約はなるべく入れたがらないというケースもあります。

こういった話は契約が近づいて、契約書の文面を見ないと仲介会社がどのように考えているかが判断できないのが難しいところではありますが、こういった知識を事前に得ておくことで、トラブルになる可能性を減らせますので、このページの注意点はよく把握しておいて頂ければと思います。

このページでお話ししました内容を動画でも説明しています

この記事でお話ししました内容の一部を動画でも解説してみました。その動画がこちらです。

よろしければ、動画もご確認ください。

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