欠陥マンションの見分け方の記事にも役に立たないものが結構あります

以前欠陥住宅の見分け方の記事について、役に立たないものや間違っている話も多いというページを作りました(「欠陥住宅の見分け方についての記事には役に立たないものや間違っているものが多くあります」参照)。

同じように欠陥マンションについても、書籍や雑誌で欠陥マンションの見分け方という記事を時々見かけますが、あまり役に立たない内容や、間違っていると思われる内容が書かれていることもしばしばあります。このページでは、欠陥マンションの見分け方として書かれている内容について、疑問に思えるものをいくつか取り上げ、解説したいと思います。

ビジネス雑誌の特集にあった欠陥マンションの見分け方についての記事を元にお話しします

欠陥マンションの見分け方の記事

2015年に発売された雑誌の記事から、欠陥マンションの見分け方について考えたいと思います

参考に取り上げたのが上記の雑誌です。個人的にはとても良い雑誌だと思っていますが、それでもマンションの見分け方の記事については、率直に言ってあまり役に立たない内容です。

もちろん知っておいた方が良い話もたくさんありましたので、この雑誌の特集自体を否定するつもりはありませんが、それでも全体的に見てマンションの欠陥とは関係が無いと思われる内容が多々あります。

いくつか代表的なチェック項目を見ていきましょう。

地盤の良し悪しとマンションの欠陥は直接は関係しません

マンションの杭

確かに直接基礎のマンションであれば、杭工事の欠陥は無いでしょうが…

欠陥マンションを避けるために「まずは地盤をチェックしましょう」と、この雑誌では書かれています。地盤をチェックすること自体は良いことですが、その後のチェック項目を見ますと、本当にこのようなチェックで良いのかと考えさせられます。

例えばチェック項目の中に「直接基礎か杭基礎なのかをチェックしましょう」というものがあります。確かに直接基礎で、杭が無いマンションであれば、杭工事などの欠陥が出ることはありません。だからと言って、杭基礎のマンションは欠陥マンションの可能性がある、とつなげるのはさすがに無理があるような気がします。

また他のチェック項目では、「N値50の地盤の位置を確認する」「傾斜地や埋め立て地は避ける」「沢や川、谷の付いた地名は避ける」などの内容も書かれています。しかし地盤が悪い場所であれば、直接基礎にはできず、杭基礎にしなければなりませんから、最初の直接基礎の物件のみを選ぶ、チェック項目だけで十分ではないかと思ったりもします。

確かに直接基礎のマンションしか選ばない、というのも1つの考え方だとは思います。選択肢はたいへん狭くなってしまうという問題はありますが、少なくとも地震に対しては杭基礎のマンションよりも、安全性が高い率が高そうですし、杭工事の欠陥を気にする必要は無くなります。

一方現実問題として、新築マンションで直接基礎で建てられるマンションはそれほど多くありません。湾岸地帯に建てられるマンションはすべて見送りになりますし、利便性が良い場所で直接基礎のマンションは少ないでしょう。

そもそも昔から地盤が良かった場所は、既に住宅が建てられている場所です。新しくマンションが建てられる場所は、その場所が空いていた、という事ですので、そもそも地盤が悪く家を建てにくかった場所であることがあります。

また工場跡地に大規模マンションが建てられることも多いのですが、元々の工場立地も、船で荷物が入れやすいような海沿いや川沿いの場所であったり、原野のような不便な場所であることも多いため、好立地でかつ地盤も良い、という場所で空いている場所はほとんどないというのが現状だったりします。

こう考えますと、新築マンションで利便性が良くて、かつ直接基礎のマンションはあまり数が無く、実際に選ぶ際には選択肢が少ないという点を予め了解しておかなければなりません。

このような話を抜きにしても、杭があるから欠陥の可能性がある、という話の展開は、欠陥住宅の見分け方というには問題があると思います。もっとも私が同じような質問をされても、「では杭工事が無いマンションを選ぶしかありません」としか言えなさそうですので、こう表現せざるを得ないのも仕方がないかもしれません。

売主や工期を見て欠陥度合いを判断するのは無理があります

工期のイメージ

工期が短いと欠陥マンションなのかと聞かれても…

また、欠陥マンションの見分け方として、工期に無理がないかどうか、2月や3月の竣工は避けるというものもありました。まあ確かに短い工期では突貫工事になりやすいとは言えますが、これだけで判断できるものではないでしょう。

また、事業主や設計者がゼネコンである場合も要注意とありました。設計者と施工者が同じであれば監理が甘くなるという考え方もあるかもしれませんが、これが特に欠陥の発生率を高めているのかと聞かれると、あまり関係がないのでは、と思います。実際に設計が別会社であっても、欠陥と言われているマンションはたくさんあります。

構造の方式を見て欠陥だと判断できるはずがありません

高層マンション

15階建てのマンションだから欠陥という事はありません。

構造の話でも疑問に思える見分け方が書かれています。まず15階建てのマンションを欠陥マンションのように扱われていますが、階数だけで欠陥であるかどうかが決まる訳ではありません。当社のサイトの「マンションは14階建ては良くて15階建てはダメという話は本当でしょうか?」のページでもお話ししていますが、マンションの階数は平面上のプランで無理をするか、高さ上のプランで無理をするかの違いであって、15階建てがそのままダメマンションになる訳ではありません。

他にも地下住戸や北向きの住戸があるかどうかをチェックリストに入れていますが、地下住戸があるから、北向きの住戸があるからといって、それが欠陥マンションにつながることはありません。

鉄骨のイメージ

外壁にALC板を使っているマンションが欠陥マンションであればS造はすべて欠陥マンションになります。

また外壁にALC板を使っているかどうかもチェックリストに入っています。ALC板を使うのが欠陥マンションであれば、S造のマンションはすべて欠陥マンションということになってしまうでしょう。もちろんALC板を使う事で将来トラブルが起きる可能性はあるのですが、それがそのまま欠陥マンションという話ではありません。

他に5階建てまでであればWRC造が良く、10階建てまでであればRC造が良い、と書かれています。しかし構造は様々な条件で決まるものですので、必ずそうだとは言い切れません。ましてや、こういった構造を見るだけで欠陥マンションであるかどうかの判定ができるはずはありません。

モデルルームや営業マンのレベルとマンションの欠陥も関係はありません

営業マンのイメージ

営業マンが欠陥マンションを作る訳ではないと思います。

モデルルームや営業マンの話もチェックリストに載っていました。設計図書を見せてくれるかどうかについては確かに重要な項目ですが、設計図書を見せてくれないマンションに欠陥があるかどうかは別問題の気がします。どちらかと言えば、パンフの記載と実際の建物の違いを見られたくないという理由で、設計図書を見せられないという話になるのだと思います。

また、モデルルームが現地の近くにあるかどうかや、営業マンがそのマンションのデメリットを話してくれるかどうかはマンションの欠陥とは関係が無い話だと思います。

マンションの欠陥の有無は完成後に一部の内容が分かるだけと考えましょう

マンションのイメージ

マンションの欠陥の有無を事前にチェックするのはほぼ無理だと思います。

結局マンションは完成前にチェックできることは限られます。その限られた範囲で調べてもマンションの欠陥の有無を把握するのはほぼ無理だと思います。

一方で、どのような地盤に建てられるのか、どういった性能のマンションとなる予定なのかを事前に知ることは良いことですし購入の判断基準になりますので、調べること自体を否定している訳ではありません。

ですが、欠陥の有無を調べる、あるいは率を低くするというのは現実的はほぼ無理でしょう。ではどうするのが良いのかと聞かれても、確実な対処策はありませんとしか言いようがありません。

取れる対策としては、なるべく複雑な機能を持っているマンションは避けるという事くらいでしょうか。最初にお話ししました杭工事が必要なマンションを避けるというのもそうですし、免震装置や超高層のマンションを避けるというのも1つの方法だと思います。これらはまだ歴史が浅く、長い期間を経た枯れた技術ではないと思うからです。

あるいは住宅性能表示の耐震等級が高いものを選ぶという方法もあります。耐震等級は1から3までの設定があり、数が大きい方が耐震性が高いとされています。ですがマンションでは、耐震等級3のマンションはまず見かけませんので、耐震等級2のマンションを選ぶ事になります。

耐震等級が高い設定がされているからといって、欠陥であるかどうかは分かりませんが、設計上は構造的に強く作られていますから、万一問題があっても、強く作られている余裕の部分でカバーできるかもしれません。

ですが、これも考え方の1つでしかありません。結局考えようが無いので、構造については考えない、という考え方もありだと思います。

有効な対策は建てられてから数年経ったマンションをチェックするくらいでしょうか

有効と思われるマンションのチェック方法は、建てられてから数年たったマンションをチェックし、問題が無さそうであれば、それを購入するというやり方ではないかと思います。これも確実な方法ではありません。しかし、欠陥があるマンションは築数年で欠陥が出てくるものもありますので、欠陥のいくつかについては、見つけることができることがあります。

もっともチェックできるのは、ひび割れを見つけたり、ジョイント部分のずれを確認したりという程度ですので、構造的に大きな問題がないかどうかを本当に確認できる訳ではありません。

きちんとした結論が無い内容で申し訳ありませんが、マンションの欠陥を見つけるというのはプロですらほとんどできません。その中で欠陥マンションを買わないように注意するというのは本当に難しいことだと思います。

個人的な意見としては、ここ10年くらいで作られたマンションについては、構造的に大きな問題を起こすようなマンションはほとんどない、と思っています。ですので、構造的な欠陥のチェックよりは、壁厚やスラブ厚などの性能チェックや、修繕積立金や長期修繕計画の内容をチェックする方が現実的なのではないかと思っています。

ふくろう不動産は事前チェックを徹底しますがマンションについては書類チェックが中心です

ふくろうのイメージ

当社は建物検査を徹底していますが、マンションについては調べられる範囲が限られます。

当社:ふくろう不動産は不動産を買いたいという人のための代理人として活動するバイヤーズエージェントです。そのためにお客様が購入しようとしている不動産のチェックに力をかけていますが、マンションについては調べられる範囲は本当に限られます。

構造的なチェックについてはほとんどできないのが実情です。そのため構造についてよりも、建物の性能、環境、管理状況などを調べ、お客様に報告するようにしています。

当社がマンションについてどう考えているかは
2-05.最終的に安く買えるマンションの選び方
3-03.安全という観点から見たマンション選び
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