不動産に関わる知識が無いと不動産購入に失敗する率が飛躍的に高くなります
不動産の選び方の本やサイトを見ていますと「知識が無くても大丈夫」「初心者でも大丈夫」という表現をよく見かけます。そして分からなくても大丈夫である理由は、不動産会社に聞けば良い、という答えだったりします。
私はこの意見には全く同意できません。不動産会社の人があなたのためになる意見を述べるとは限りませんし、仮に悪意が無いとしても、その意見が正しいかどうかは分かりません。この問題について、もう少し詳しくお話ししたいと思います。
不動産会社と不動産を買いたいあなたとでは利益が相反する部分があります
最初に必ず知っておかなければならない事は、不動産購入者と不動産仲介会社とでは利益が相反する部分があるという事です。そして不動産仲介会社は、自社の利益にならない事は言いませんし、なるべく自社の利益が最大になるような誘導をしがちです。
例えば
1.なるべく高い不動産を買ってもらいたい
2.仲介手数料が売り主側からももらえるような取引をしたい
というのは、代表的な例です。
1.の不動産の価格については、購入する人はなるべく安く買いたいと考えるでしょう。ですが不動産会社は高く買ってもらう方がほとんどの場合得をします。仲介手数料は販売価格の比率で決まるケースが多いため、高い物件を買ってもらった方が、仲介手数料も高くなるからです。
もちろん、高い物件を買ってもらうために、自社の利益が良くなるからと言う理由を説明する会社はありません。しかし高い物件を買ってもらえるよう間接的な誘導を行う事はよくあります。
例えば当初の金利が安い変動金利の住宅ローンを勧め、最初の支払額を安くすることで高い物件の購入の抵抗感を減らすというのは日常的に使われるテクニックです。
さらに住宅ローンの借入期間をできる範囲で最長期間で組ませようとするのもテクニックの1つです。返済期間が長いほど、当初の支払額が安くなり、こちらも高い物件を買う際の抵抗感を減らすことが出来るからです。
不動産会社の営業マンが、変動金利で最長期間のローンを勧める場合には、このように高い不動産を買って欲しいという思惑が隠れていることがあります。しかしお勧めの理由としては、当然別の話をします。過去10年を見ても変動金利の方が得をした、とか、返済期間は後から短くすることができるので、最初は最長期間で返済を組むのが正しい、と言う説明を行う事でしょう。
このような理由1つ1つは正しい部分もあるのですが、すべてが正しいという話でもありませんし、当然デメリットも存在します。ですが、自社の利益確保のためにローンの説明を行う場合には、デメリットが正しく説明されないケースが多々あります。説明したとしても、そのデメリットを本来よりも小さく見えるよう説明することもあるでしょう。
2.の売り主側からも手数料が欲しいというのは、業界で言う両手取引を行いたいという事です。両手取引についての話は長くなりますので、詳しいことは「不動産取引は知らないと損することがたくさんあります」の記事を参考にしてください。
ただ、両手狙いの営業マンに当たりますと、やたらと特定の物件や新築物件を紹介される事があります。特定の物件とはその不動産会社が売却依頼を受けており、その物件での取引が成立すると売主さんと買主さんの両方から手数料がもらえるからという理由であることがあります。
またやたら新築を紹介される場合は、新築の売り主からも手数料が出るからと言う理由であることもあります。新築物件ばかり紹介される場合は「中古の戸建住宅を探しているときに、新築住宅を勧められることはありませんか」の記事も参考に見ておいてください。
他にも様々なケースがあるのですが、まずは利益が相反する事があり、その相反する内容については、不動産会社は正しく情報を出さない事もある、という事は理解しておくべきだと思います。
知識が無ければ良い不動産会社であるかどうかの判断はできません
「不動産会社に聞けば大丈夫」という言葉とセットでよく使われるのが「信用できる不動産会社を選びましょう」という言葉です。ですが、これも結論から言えば、不動産に関する一定以上の知識が無ければ、相手方が信用できる不動産会社であるかどうかの判断はできません。
相手方の不動産会社の営業マンが信頼に足るかどうかを判断するための方法は、基本的に1つしかありません。それは「不動産に関して自分が知っている事を聞き、相手が正しく答えてくれるかどうかで判断する」です。
この自分が知っていることを聞く、と言う点が重要です。何でも聞いてみて判断する、自分が知らない事を教えてくれる点を重視するというやり方は、判断方法としては良い方法ではありません。自分が知らない事について説明された内容が正しいかどうかを判定する方法が無ければ、本当に相手が正しいことを教えてくれたかどうかは分かりません。
当社にいらっしゃるお客様から、以前不動産会社の営業マンからこのような説明を受けた、と言う話の内容で、適当な話、間違っている話をいくつも聞いています。
不動産会社が信頼に値するかどうかについては、まずは自分が知っている話を聞き、正しいかどうかを判断する、そして次に、知らない話を聞いた後に、本当にその話が正しいかどうかを、複数の本やサイトや他の専門家の話と照らし合わせる、と言う作業を経て、初めてその営業マンが信頼できるかどうかを決めるべきだと思います。
知識が無い場合の不動産会社判別法の大半は間違っています
不動産に関する知識が無い人が、その不動産会社が信頼できるかどうかの判断方法としていくつかの方法が提案されていることがありますが、その方法の大半は間違っています。間違っている判断方法のいくつかをご紹介しましょう。
人柄で不動産営業マンを判断してはいけません
よくあるのが、営業マンの人柄や誠実さで判断しましょうという内容です。ですがこのやり方はお勧めできません。それは
1.誠実だからと言って不動産のリスクを正しく把握できるとは限らない
2.誠実さが本当かどうかは、数回話した程度では分からない事も多い
という理由があるからです。
特に多いのは1.のパターンです。不動産のリスクと言うのは、法的なリスクや将来の経済性、地盤や建物の技術的な内容等多岐にわたります。これら不動産のリスクを正しく判断するには、詳しい調査と膨大な知識の両方が必要です。誠実な人であっても、知識が足りなければ不動産のリスクを正しく理解することはできません。
不動産の取引に失敗しますと、その影響は一生かかっても抜け出せないという事はよくあります。一生懸命やったけれどもたまたま知らなかっただけ、で済まされるはずもありません。単に誠実なだけでリスクに気が付かなかったという話は、不動産取引については誠意が無いケースと結果を見る限り差はありません。
また2.の誠実さが本当なのかどうかを数回話しただけで正しく判断できると考えるのも危険です。残念な事に世の中には誠実そうに振る舞う事が出来る人がいます。恐ろしいことに全く罪悪感を感じずに平気でうそをつける人たちもいるのです。
私自身も何度かそれで失敗したことがあります。人当たりが良く、自信をもって話す人が、実は虚言癖のある人だと気が付くのに半年位かかったことがあります。何かおかしいと思っても、その人と話すと大丈夫であるかのように説得されてしまう訳です。これを何度か繰り返し、実はその人自身に問題があると気が付くまで、数十回の直接の話し合いと他の人からの話を聞く必要があり、結局正しく状況を把握できるまで半年近くかかりました。
虚言癖の人はある種の病気ですが、説得のテクニックを持つ営業マンであれば、同じレベルの事ができます。つまり数回会う位の人であれば十分に誠意がある人のように見せかける事が可能であるという事です。
先程不動産のリスクを判断するためには、詳しい調査と膨大な知識が知識が必要だと述べました。誠意が無い方は、相手が不利益になる情報を隠そうとする事はもちろん、詳しい調査の方も怠る傾向にあります。
この詳しい調査をきちんと行ってくれるかどうか、その説明を丁寧に行ってくれるかどうかを確認するのにも、数回以上の打ち合わせが必要です。ですが、どういった調査が必要であるかについては、皆さん自身に一定以上の知識が無ければ、何が必要な調査なのかも分かりません。結局は自分自身に一定以上の知識が無ければ、相手が本当に誠実なのかどうかも判断できないという事になります。
歴史が長ければ良い会社であるとは限りません
営業マンではなく、不動産会社が信頼できるかどうかを判断するために、不動産の免許番号を見ましょうという話もあります。免許番号とは、その不動産会社の宅建業の免許の欄に書かれている「千葉県知事(1)第16○○○号」等の免許番号にあるかっこの中の番号の事です。この番号は5年経過して免許を更新するたびに番号が増えていきます。設立から6年の会社であれば(2)に、13年の会社であれば(3)となる訳です。
そしてこの番号が大きければ歴史がある会社なので信用が置けると主張される方が結構いらっしゃいます。ただ、私個人の経験で言わせてもらえれば、この考えも正しいとは思えません。番号の大きな会社で詐欺まがいの営業を行っている会社をいくつか知っているからです。
問題がある会社は免許が更新できずに淘汰されていくはず、と簡単に考えてはいけません。よほど大きな法律違反を犯さない限りは、簡単に免許取り消しとはならないからです。
また悪意は無くても最新の法律や制度、技術に詳しくない老舗の会社も多数あります。例えば瑕疵担保保険を使う事で住宅ローン減税を使えるようにするテクニックなどを未だに知らない老舗の会社をたくさん見かけます。定期的に勉強していないと、こういった制度変更が分からず、知らないままお客様に損をさせるという事もあります。
これも皆さん自身が制度の変更や技術の存在などを知っていなければ、相手方がその制度に精通しているかどうかは分かりません。結局は不動産購入者自身がある程度詳しくないと、相手方の不動産会社の良し悪しを判断できない事になります。
不動産の勉強を行うのは大変ですが、その効果は絶大です
このように考えますと、結局は不動産を買いたいと考える皆さん自身が勉強しなければ、良い不動産会社や良い営業マンを見つけることが出来ないという事になります。
自分は素人なんだから、そんなに不動産の勉強ができるはずがない、とお考えでしょうか。本来であれば、プロである不動産会社の人が、素人である我々に正しく教えるべきだ、と思われますでしょうか。確かに理不尽な話だと私も思います。ですがこれが現実です。
幸い不動産の勉強内容で難しい内容はそれ程多くありません。ただ、ちょっと理解しなければならない内容が多いだけです。数が多いだけで、1つ1つの項目自体は一般の方でも理解できる内容ばかりです。
そして不動産の内容に詳しいかどうか、勉強しているかどうかで付き合う不動産会社や購入する不動産というものが大きく変わります。少なくとも失敗する率を大きく減らすことができます。
不動産購入の失敗談、例えば欠陥住宅を買ってしまったとか、ローン破綻をしたとか、希望する建物が建てられないなどの失敗の大半は事前の調査や確認で防ぐことが出来ます。ですがこれも、自分自身が不動産に詳しく、かつ間に入る不動産会社がきちんと調査を行いアドバイスをする会社でなければ、防げるものも防げないでしょう。
以前似たような話を「住まいを購入する際に素人だから分かりませんという姿勢は結局損をします」のページでも説明しましたが、不動産の素人であってもやるべきことはやらなければなりません。
この記事の内容の一部を動画でも説明しています
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