壁量計算書の保存が2020年3月以降は義務となりましたので、買主は必ず写しをもらっておきましょう

建物の構造や地震に対しての興味、というものは実は一般の方はあまり高くありません。この主張には反論される方も多いとは思いますが、中古の住宅の取引をしていますと、ほとんどの住宅の買主さんは、世間で言われるほどには構造については興味が無いのであろう、と感じさせられます。

と言いますのも、一部の例外はあるものの、大半の中古住宅(実は新築も)については耐震性、構造の強さというものが分かる資料がほとんどありません。具体的には壁量計算書がありますか、と聞いてもほとんどの方は、そういった資料の存在自体知りませんし、実際に持っていません

これは戸建住宅の構造について、少し勉強すれば必ず出てくる内容なのですが、残念な事にそこまでの興味が無い方が大半であるため、結局はそういった資料がなくても問題はないと考え、購入してきた訳です。

構造壁がある住宅

構造壁がどの場所にどのくらいの強さなのかが分かる書類は重要なのですが…

しかし、この壁量計算書についての法律が変わり、2020年3月以降の図面については、建築士は15年間はこの書類を保管していなければならない事になりました。これを機に、戸建住宅を購入される皆さんも、構造についての興味を持って頂くと同時に、この書類の写しを必ずもらっておくようにして欲しいと思い、今回記事を書くことにしました。

2階建て以下の木造住宅はそもそも構造計算をしていません

この話の前提として皆さんに知って頂きたいのは、そもそも2階建ての木造住宅は構造計算を行っていないという事です。建築に詳しくない方は、今の建物はきちんと構造計算をして建てられている、とお考えかもしれませんが、実際にはほとんどの建物は構造計算をしていません

これは法律違反ではなく、4号建物(2階建て以下の木造住宅はほとんどこれに該当します)の場合には、構造計算は行わなくても良い、という事になっているからです。

これが鉄骨造や鉄筋コンクリート造であれば原則として構造計算をしなければなりませんし、木造であっても3階建て以上の建物は構造計算が必要となります。しかし、一般的に建てられている木造の2階建て以下の住宅についてはこの限りではありません。もちろんきちんとした構造計算を行っても良いのですが、それなりの手間と費用が発生するため、ほとんどの建物では構造計算は行われていないというのが実情です。

では、木造2階建ての住宅は、構造については何も考えられていないのか、計算されていないのかと聞かれれば、そうではありません。構造計算から見れば簡易的なものではありますが、壁量計算というものを行い、構造壁の量が足りているかどうか、あるいはそのバランスに問題が無いかどうかについては、確認しなければならないとされています。

今までも壁量計算の作成義務はあったはず

今までも壁量計算の作成義務はあったはずなのですが…

ただここで問題となるのが、これまでは「壁量計算を行わなければならない」という事が確認できるような体制が整っていなかった、という点です。

壁量計算書が今までに出てきた率は5%程度です

この体制が整っていなかったとは、どのような意味でしょうか。それは書類の保管・提出の義務が無かったという事です。この壁量計算や四分割法によるバランスのチェックについては2000年以降の法律の規定により、行わなければならないものとされています。しかし、行わなければならないという規定はあるものの、法律ではそのチェックについての規定がありません。つまり、本当に壁量計算を行いチェックしているのかどうかという点については何も確認が出来ないという事でもあります。

実際に当社は不動産の仲介を行う際に、売主さんからもらう必要書類として、壁量計算書があればください、とお話しています。しかし経験上、この壁量計算書が出てくる率は5%程度です。これが2000年以前の建物であれば、法律の規定もありませんでしたので、出てこないのも分かります。しかし、2000年以降に建築された建物であっても、この壁量計算書が出てくる率、売主さんがこの書類を持っている率はとても低く、そもそも存在自体も知らない方がほとんどです。

この結果から、実際には設計士はこの壁量計算を行っていないのではないか、とも予想されます。もちろん公的に壁量計算を行っていますか、と聞けば、やっていますと答えるでしょう。法律でそう定められているからです。しかし、その証拠は全くありませんし、必要書類を残しておかなければならないという規定もありませんでした。あくまでも自己申告で、壁量計算を行っていると主張すれば、それで済んでいた訳です。

壁量計算を本当にしていたのか

これまでの住宅は本当に壁量計算をしていたのかどうか、疑わしい印象があります。

この予想に対して、そんな事はないと反論される方も多いでしょう。確かに私は設計事務所の人間ではありませんし、確認申請の検査機関の人間でもありませんので、正確な判断は出来ません。ですが、本当に今まで、この20年間全ての設計士がきちんと壁量計算を行っていたのであれば、中古住宅の建築系の書類の中に、この壁量計算書が混じっている率はもう少し高くなっているのではないかと思います。

そして、これも恐らくですが、国も同じように考えていたからこそ、書類の保管を義務付ける法律を施行したのではないかと思います。この法律の施行については、下記の国土交通省のサイトから確認ができます。

建築士事務所の図書保存の制度の見直しについて(建築士法施行規則第21条関係)(出典:国土交通省)

買主や施主が壁量計算書を求めることを普通の状態にしましょう

この壁量計算書の保存が義務という事になれば、その書類が無い、作っていない、という事は原則としてなくなるはずです。そして、買主やお施主さんから見れば、この書類の請求がしやすいという環境となります。

もちろん今までも作成は義務だったはずですので、請求すれば取り寄せできたはずなのですが、実際にはそうではありませんでした。書類の義務化が決められたからと言って、これも全ての設計士がきちんと壁量計算書を作成して保存するかどうかは確実ではありませんが、必要であれば訴えることが出来るという状況なのであれば、少なくとも今よりは壁量計算書を作成する設計士は増えるでしょうし、実際にその書類が出てくる率は高くなると思います。

そして、買主・施主にこの知識があれば、壁量計算書を出してくれ、と主張するケースも増えていくでしょう。極論を言えば、全ての買主が壁量計算書の提出を求めるようになれば、設計士側も機械的に書類を出してくれるようになると思います。そうする事で損をする人は誰もいません。

壁量計算書の提出を求める

壁量計算書の提出を求める事が普通の状況になって欲しいものです。

実際に今まで当社から住宅の売主さんに、壁量計算書はありますか、出して頂けますかと聞くたびに、そんなものはあったかなとか、必要ないでしょう、とか嫌な顔をされた事も珍しくありませんでした。逆にそんなマニアックな事を聞いてくるお前がおかしい、的な話をされることもありました。

ですが言うまでもなく、壁量計算書は建物の強さをどのように確保しているのかを判断する重要な書類です。この書類の存在と重要性がもっと一般的になり、誰もが普通に請求し、また所有しているという状況になれば、私も請求のたびに嫌な思いをしなくても済みます。この法律の改正をきっかけに、ぜひ建築・不動産業界が良い方向に変わってくれる事を期待しています。

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