貯蓄が苦手な人ほど不動産を買うべきという話は本当ですか
世の中には、「貯蓄ができない人ほど不動産を買うべきだ」という主張があります。私個人の意見としては、この考えに賛同しませんが、その主張の是非について、掘り下げてみたいと思います。
「貯蓄ができない人」が不動産を買うべきではない理由
まず、私の結論からお伝えすると、基本的にはおすすめしません。なぜなら、貯蓄が苦手な人は、手元にお金があるとすべて使ってしまう傾向があるからです。
不動産は住宅ローンを組むことが一般的ですが、このローンの返済期間は非常に長期にわたります。その間には、予期せぬトラブルが起こる可能性が常にあります。例えば、失業、病気、収入の減少などです。もし、十分な貯蓄(予備資金)があれば、これらのトラブルにも対応できますが、貯蓄がないと、わずかなトラブルでさえ乗り越えることができず、結果としてローン破綻に陥ってしまうリスクが高まります。
「貯蓄ができない人」が不動産を買うべきだと言われる理由
一方で、「貯蓄ができない人ほど不動産を買うべきだ」という主張にも一理あります。この考え方の根拠は、主に以下の2点です。
- 強制的な貯蓄効果
住宅ローンの返済は、言わば強制的な貯蓄です。家賃の支払いが100%消費であるのに対し、ローンの返済には将来的に資産として残る部分が含まれています。手元にお金があると使ってしまう人でも、ローンの返済義務があるため、結果的に資産を形成できる、という理屈です。 - 老後の安心
老後、年金生活に入ると収入は大きく減少します。賃貸暮らしの場合、家賃の支払いが重荷になり生活が苦しくなる可能性があります。しかし、不動産を購入してローンを完済していれば、家賃の支払いがなくなり、生活費に余裕が生まれます。
不動産購入のリスクと必要な準備
しかし、これらのメリットを享受するためには、いくつかのリスクを乗り越えなければなりません。
- 購入時の費用
不動産購入には、売買代金以外にもさまざまな諸費用がかかります。貯蓄がない場合、これらの諸費用までローンに組み込むことになり、金利や手数料などで不利な条件を飲まざるを得ないことが多いため、結果的に損をする可能性が高いです。 - トラブルへの対応
ローンの返済期間中に、前述のような収入減少のトラブルに見舞われた場合、予備資金がないと対応ができません。最低でも、生活費の6ヶ月分から2年分程度の予備資金を現金で確保しておくことが望ましいです。 - 資産価値の維持
不動産が老後の資産になるのは、ある程度の資産価値が残る物件を選んだ場合のみです。資産価値が残りにくい物件を選んでしまうと、老後に売却しようとしても十分な金額にならず、結局苦しい生活を送ることになりかねません。
まとめ
貯蓄が苦手な人が不動産を購入するメリットは、ローンという強制力によって資産形成ができること、そして老後の家賃負担をなくせることです。しかし、その裏には、ローン破綻や購入時の金銭的な不利益といった大きなリスクが潜んでいます。
まずは、不動産購入というギャンブル的な要素を孕んだ選択をする前に、生活の支出をコントロールし、貯蓄する習慣を身につけることが最も重要です。生活予備資金と諸費用を現金で用意できるようになるまで、地道に節約を続ける方が、より現実的でリスクの少ない選択と言えるでしょう。
もし、この記事を読んで、それでも不動産購入に挑戦したいと考えた方は、今回お話したリスクを十分に理解した上で、慎重に物件選びや資金計画を進めてください。