不動産の売却時には買取保証付き仲介会社を使う時のリスクを知っておきましょう

不動産を売却する際、「買取保証付き」の仲介会社を選ぶことは、一見すると非常に安心感があり、売れ残りの不安を解消してくれる魅力的な選択肢に思えるかもしれません。しかし、その裏に潜む「理屈」を深く掘り下げて考えると、売主様にとって必ずしも最善の選択ではない可能性、あるいは潜在的な不安要素があることに気づくかもしれません。今回は、具体的な根拠や証拠に基づいた話ではないものの、論理的に考察すれば十分にあり得る、不動産売却における仲介会社選びの注意点について、より詳しくお話しします。

仲介と買取再販、どちらが儲かる?その利益構造の深掘り

まず、不動産取引における「仲介」と「買取再販」という二つの主要な形式の利益構造について、その違いと背景を深く理解することが極めて重要です。

  • 仲介: 不動産会社が売主様と買主様の間に入り、売買契約の成立をサポートすることで、その対価として仲介手数料を得る形式です。この仲介手数料は、宅地建物取引業法で上限が定められており、一般的に「売買価格の3%+6万円+消費税」という計算式が用いられます。例えば、3,000万円のマンションが成約した場合、仲介会社の収入は売主様から約96万円(税抜)となります。この収入は、広告費や人件費、事務所維持費などを賄うためのものであり、仲介会社にとっての基本的なビジネスモデルです。
  • 買取再販: 不動産会社が自ら物件を買い取り、必要に応じてリフォームやリノベーションを施し、その物件を商品として市場に再販する形式です。この場合、不動産会社は「売主」の立場になります。

この二つのビジネスモデルを比較すると、一般的に買取再販の方がはるかに大きな利益を生み出す傾向にあります。これは、買取再販が単なる手数料収入ではなく、物件の仕入れから販売までの全プロセスを自社でコントロールし、付加価値をつけて再販することで、より大きな売上と利益を追求できるからです。

具体的な数字で見てみましょう(あくまで一例であり、市場状況や物件によって変動します)

  • 仲介の場合: 3,000万円のマンションが成約した場合、仲介会社の収入は約96万円。この金額は、取引が成立した際に一度だけ発生するものです。
  • 買取再販の場合:
    • 不動産会社は、市場価格よりも低い価格で物件を仕入れます。これは、リフォーム費用や再販時の利益を見込むためであり、一般的に査定額の8割程度(例えば3,000万円のマンションなら2,400万円)で買い取るケースが多いと言われます。
    • 次に、仕入れた物件にリフォーム費用をかけます。マンションであれば水回りや床、壁の張り替えなどで200万円程度を投じるケースは珍しくありません(合計原価2,600万円)。
    • リフォーム後、物件の価値が向上したと見なし、市場価格よりも高い価格で再販します。例えば、リフォーム前の3,000万円のマンションが、リフォーム後に3,300万円で売れたと仮定します。
    • この場合、売上3,300万円から原価2,600万円を差し引くと、粗利は700万円となります。さらに、再販時の広告費や販売手数料などの諸経費(例えば200万円)を差し引いても、最終的な利益は500万円にもなります。

この例からわかるように、買取再販は仲介の約5倍もの利益を生み出す可能性があるのです。もちろん、買取再販業者には、物件が予定通りに売れない「在庫リスク」、リフォーム費用が想定以上にかかるリスク、市場価格の変動リスクなど、仲介業者にはない大きなリスクを負っています。そのため、その大きなリスクに見合うだけの高利益が必要であり、それがこのビジネスモデルの根幹を成しているのです。

買取保証付き仲介の「理屈」が示す不安:インセンティブの歪み

ここで、買取保証付きの仲介会社について、そのビジネスモデルの「理屈」を深く考えてみましょう。これらの会社は、売主様との間で「一定期間(例えば3ヶ月間)は仲介で販売活動を行い、もし売れなかった場合は、事前に取り決めた価格で自社が買い取る」という保証をつけます。

もし、仲介で得られる利益(約96万円)よりも、買取再販で得られる利益(500万円)の方がはるかに大きいのであれば、仲介会社は本当に3ヶ月間「本気」で、つまり売主様の利益を最大化するために、最大限の努力をして仲介活動を行うのでしょうか?

理屈で考えれば、最終的に買取に持ち込んだ方が自社の利益が大きくなるため、仲介会社内部の営業担当者や経営層には、「頑張らない方が良い」、あるいは「買取に誘導した方が良い」というインセンティブが働く可能性が否定できません。例えば、積極的な広告展開を控える、内見希望者への調整を意図的に遅らせる、他社からの問い合わせに消極的に対応するといった、売主様からは見えにくい形での「頑張らなさ」が生じるかもしれません。売主様は「頑張ってくれている」と信じていても、実際には水面下で買取への誘導が行われている可能性も考えられるのです。

さらに言えば、悪意のある業者であれば、「囲い込み」と呼ばれる、より明確な利益誘導行為を行う可能性も考えられます。

囲い込みとは?その具体的な手口と売主への影響

囲い込みとは、不動産会社が自社の利益を最大化するために、意図的に物件が売れないようにする、あるいは自社が買い取る方向に誘導する行為です。これは、宅地建物取引業法における「信義則(誠実義務)」に反する可能性のある、倫理的に問題のある行為とされています。具体的な手法としては、以下のようなものが考えられます。

  • 販売活動をしない、または見せかけだけにする: 物件情報を不動産流通機構(REINS:レインズ)に登録はするものの、他の不動産会社からの問い合わせには「申し込みが入っている」「売主が内見を嫌がっている」などと虚偽の理由をつけて断る。あるいは、自社サイトやポータルサイトへの掲載を遅らせる、広告費をほとんどかけないなど、表面上は販売活動をしているように見せかけながら、実質的な集客活動を行わない。
  • 他の仲介会社からの問い合わせに対応しない、または内見をさせない: 他の仲介会社が買主を見つけて物件の内見を希望しても、「すでに商談中」「売主の都合が悪い」などと理由をつけて断り、物件を他の買主に紹介させないようにする。
  • 他の仲介会社が物件の広告を出すことを認めない: 自社以外の広告露出を極力減らすことで、物件が広く知れ渡る機会を奪う。

これにより、物件が個人のお客様に売れる機会を意図的に減らし、最終的に「仲介では売れませんでした」という状況を作り出し、自社で安く買い取る、あるいは自社と関係の深い買取再販業者に売却するというシナリオを狙うのです。

売り主が被る損失:失われる機会と金銭的打撃

このような状況がもし発生した場合、最も大きな損害を被るのは売主様です。本来であれば、市場にはもっと高く買ってくれる個人のお客様がいたにもかかわらず、仲介会社の都合(自社の利益最大化)でその情報が隠され、結果として市場価格よりも低い価格で売却せざるを得なくなる可能性があります。

上記の例で言えば、仲介で売れていれば得られたはずの600万円もの差額を失うことにもなりかねません。この600万円という金額は、次の住まいの購入資金、老後の生活資金、子どもの教育費など、売主様の人生設計に大きな影響を与える可能性があります。単なる「機会損失」ではなく、具体的な金銭的打撃として、売主様の生活を圧迫する可能性も考えられるのです。

信頼できる仲介会社を選ぶには:見極めのポイント

では、どうすれば本気で売却活動を行ってくれる信頼できる仲介会社を見つけ、売主様の利益を最大化できるのでしょうか?

  1. 「囲い込み」の要素がない会社を選ぶ:
    • 片手取引専門の仲介会社を検討する: 両手取引(売主と買主双方から手数料を得る取引)を狙う会社は、囲い込みのリスクが高まります。片手取引専門を謳っている会社は、売主の利益を最大化することに集中してくれる可能性が高いです。インターネット検索で「片手仲介専門」「売却専門」といったキーワードで探すのも一つの方法です。
    • 他社が広告を出すことを認めているか、そして実際に広告が出ているかを確認する: 口頭で「他社広告もOKです」と言うだけでなく、実際に媒介契約期間中に他の不動産会社が物件の広告を出しているか、ポータルサイトなどで確認することが重要です。もし、他社が広告を出しているにもかかわらず、内見の申し込みが全く入らない、といった状況が続く場合は、何らかの不自然な動きがある可能性も疑うべきです。
    • 媒介契約の種類を理解する: 専任媒介契約や専属専任媒介契約は、一社に販売を任せるため、囲い込みのリスクが高まる傾向があります。一般媒介契約であれば複数の会社に依頼できるため、競争原理が働きやすく、囲い込みのリスクは低減されますが、各社の販売意欲が分散する可能性もあります。それぞれの契約形態のメリット・デメリットを理解し、自身の状況に合った選択をすることが重要です。
  2. 「ダブル両手」のリスクを理解する: 買取再販業者に売却する場合、仲介会社は売却時(売主様から手数料)と再販時(買取再販業者から手数料、あるいは再販時の買主から手数料)の両方で手数料を得る「ダブル両手」を狙う可能性があります。これは仲介会社にとって非常に魅力的な取引であり、この「ダブル両手」を狙うあまり、個人のお客様への売却機会を意図的に減らす動機となり得ます。売主様としては、仲介会社がどのような売却経路を提案しているのか、その背景にある利益構造を理解した上で、本当にそれが自身の利益につながるのかを冷静に判断する必要があります。

まとめ

買取保証付きの仲介会社を選ぶこと自体が、常に悪い選択であるというわけではありません。もし、市場に物件情報をオープンに公開し、複数の買取再販業者や個人のお客様から最も高値の提示があり、その中で買取再販業者が提示した価格が、売主様にとって最も納得のいくものであれば、それは良い選択と言えるでしょう。

しかし、そうではないケース、つまり仲介会社の都合(自社の利益最大化)によって、売主様が本来得られたはずの利益を失う可能性もゼロではありません。不動産売却の成功は、適切な仲介会社選びにかかっていると言っても過言ではありません。今回の「理屈」を知っていただき、ご自身の不動産売却の際に、より良い会社選びの参考にしていただければ幸いです。売主様ご自身が知識を持ち、積極的に情報を確認し、疑問を投げかけることが、成功への第一歩となるでしょう。

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