環境騒音・振動測定士のテキストでは低周波音問題はほとんど触れられていません

ふくろう不動産では皆さんがお住まいになる土地や戸建住宅、マンションで不快な音が聞こえないかどうかを確認するために、低周波音なども測定できる騒音計で音の測定をしています。しかし当社は計量証明事業所の認定を取っている訳ではありませんし、環境騒音・振動測定士などの音に関する資格を持っている訳でもありません。これは、このような認定を取るには多額の費用がかかるということ、そして不動産周りの騒音問題を調べるには現状でも充分ではないかと思っているからです。

ただ一方で専門家ではない自分の測定で問題ないだろうかという不安もあり、定期的に講習会に参加したり資料を取り寄せて騒音問題などについて調べています。今回は「環境騒音・振動測定士」の資格認定試験問題の解答と解説書を取り寄せましたので、簡単にその報告をしたいと思います。

環境騒音測定士資格試験問題

発行:社団法人 日本環境測定分析協会

取り寄せた本はこちらです。欲しかったのは騒音や振動に関する部分だけなのですが、なぜか環境測定士の資格問題とセットの冊子になっています。そして環境騒音・振動測定士についての記載はこのうち28頁分しかなく、ちょっと損をした気分になりました。

内容については、社団法人日本環境測定分析協会のサイトに記載されている模範問題に簡単な解説が書かれてあるものです。文句ばかり書くのは見苦しいのですが、この本の内容はサイトから模範問題をPDFデータで取得して、後は自分で調べても十分というレベルですので、騒音や振動にのみ興味がある方であれば、わざわざこの本を購入する必要はないと思われます(環境測定分析士についての内容は私には判断が付きません)。

本の内容は、騒音や振動についての一般的な質問、法的な質問、対数の計算方法などが中心です。不動産取引上で問題になりやすい低周波音についての内容がもっとあるものかと思っていましたが、低周波音についての記載は50問中4問のみです。その4問の内容は
・低周波音の周波数について聞く問題
・測定時の注意点について聞く問題
・低周波音の原因となりそうな施設について聞く問題
・低周波音を測定する際の周波数補正について聞く問題
となっており、低周波音問題があるかどうかを判断するための設問は特にありませんでした。

低周波音問題がありそうかどうかは、卓越周波数などについて調べることで多少は判断できるのですが、こちらの問題では低周波音を測定する際にはG特性を使う、と答える設問があるだけです。正直これでは不十分ではないかと感じます。この問題は平成20年と古い問題であるせいかとも思っていましたが、現時点のサイトの模範問題を見ても、特に低周波音についての設問が増えている訳ではなさそうです。

ちなみに現在サイトに掲載されている模範問題の第1問が低周波についての問題なのですが、この答えを見るとさらに考えさせられます。設問は低周波の測定で留意しなければならない事項に該当しないもの選べと言うものですが、答えは「1 Hz ~200 Hzの1/3オクターブバンド音圧レベルを測定できる機器が必要である」が該当しない、つまり注意しなくても良い項目となっていました。

サイト上では詳しい解説が載っていませんので、詳細は分からないのですが、他の選択肢から考えるに、G特性の数値が分かれば、低周波音の測定はそれで良いという風にも受け取れます。しかし、卓越周波数が分からないと低周波音被害の可能性があるかどうかを考えるのは難しいと思います。なぜこのような設問と答えになっているのか、私の乏しい知識では理解できませんでした。この問題について詳しい方がいらっしゃれば、教えて頂ければと思います。

騒音測定士模範問題

出典:日本環境測定分析協会(注:2018年2月時点ではこの問題は公開されていません)

参考:環境測定分析士 資格認定制度 一般社団法人 日本環境測定分析協会
(環境騒音・振動測定士初級試験 模範問題PDFファイルより)

余談ですが、この試験の受験資格は、購入したこの本の中では「1年以上の実務経験がある者」または「大学などで騒音・振動に関する科目を履修した者」となっていましたが、サイト上ではこのような制限がなく、興味があればだれでも受験可能ということに変わっているようです。なるべく窓口を広くしようという傾向は良いことではないかと思います。

一方で低周波音に関する内容は、まだまだ一般的になっていないのだと思わされました。専門家、測定士の試験についてもこのような状況であれば、一般の方に低周波音問題の存在が広がるのはずいぶん先になるのかもしれません。ただ、法律や測定士が学ぶ内容が整備されるまでにも、低周波音被害に遭う方はどんどん増えていくのではないかと恐れています。当社のお客様にはそのような状況にならないよう、気を付けて物件を見ていきたいと考えています。

もし私の考えなどで間違っている部分があるようでしたら、お分かりの方はどなたか教えて頂ければと思います。ご意見やご質問は「お問い合わせフォーム」のご利用が便利です。ご連絡されたからといって、当社から営業の連絡を行うこともありませんので、ご安心ください。

Follow me!

不動産購入のご相談はふくろう不動産まで

CTAの画像
まずはメールにてご相談ください。