中古不動産の価格を判定するソフトSelFinに戸建版が加わりました
不動産を買う時や売るときには、正しい相場観を持っていないと、売買取引で失敗する可能性が高くなります。相場を正しく把握する方法はいくつかあるのですが、まだ本格的に動いていない場合には、不動産会社に連絡して聞くというのも一般の方には敷居が高いと思います。
そこで役に立つのがネット上の簡易査定サービスです。正式な査定と比べますと精度は落ちますが、それなりに相場観を掴むのには役に立ちます。このネットでの簡易査定サービスはマンション用はたくさん出ているのですが、戸建に関してはきちんと使えるシステムがあまり見当たらず、結局は路線価等から逆算して考えるという方法を皆さんに提案していました。
しかし先月(2017年8月)にリニュアル仲介(株)という会社が公開していますSelFin(セルフィン)という査定システムに戸建版が加わり、試してみましたところ、それなりに良い精度で査定を行う事が分かりました。そこで今回はこのSelFinについて、簡単にお話ししたいと思います。
使い方や会員登録方法等については、SelFinのサイト上でご確認ください。
5つの項目について、一戸建て住宅の判定が行われます
この戸建住宅の査定システムでは、5つの要素ごとにポイントが付き、そこから価格を判定するようになっています。今回は試しに、当社がある千葉市花見川区作新台2丁目の一般的な戸建住宅という前提で、このシステムを使ってみました。
単に結果だけを見るだけでも問題はありませんが、個々の項目の説明を見る事で、より不動産について詳しくなれますので、項目を1つ1つ確認していきたいと思います。
価格の妥当性では建物価格の判断が役に立ちます
価格の想定については幅があります。計算は周辺事例から単価を想定して計算しているようです。ただ、土地の価格は様々な条件によって変わってきますので、幅が出てしまうのは仕方が無いと思います。
この結果図では書かれていませんが、実際には前面道路の幅や土地の形状、間口の広さ、用途地域や容積率など細かな条件を入力した結果で判断されています。そういった意味ではある程度の信ぴょう性はあると考えて良いと思います。
一方で立地が角地であるかどうかや、擁壁の有無、周辺環境等については選択項目がありませんでしたので、計算には入らない項目もそこそこあるようです。ですが、概算金額を知りたいという点では、十分な精度ではないかと感じました。
また建物代金の算出方法も大変参考になります。建物は25年でゼロになるという計算で考えられている点が現実に即していると思いますし、100平米位の新築の建物価格を1,650万円位で計算しているというのも参考になります。
私はお客様にお話しする際に、建物価格、あるいは再建築価格を1,800万円で計算してお話しすることが多かったのですが、少し多めに見ていたのかもしれません。
建物も実際にはそのグレードや特徴などで金額は上下するのですが、まずはこの計算方法で基準金額を決め、そこから状態を見て、その分の金額を足し引きするという考えであれば、市場価格から大きく外れた金額を考えるという事は無さそうです。
流動性は他の資料では判断がし難いので参考になります
このシステムで気に入っているのは、この流動性が分かるという点です。また、街自体の力がどの位あるのかという点も、意外とデータを見ているだけでは分からなかったりしますので、その力を数値で出してもらえるのはありがたいシステムです。
こまかな仕組みは分かりませんが、駅から遠ければ遠いほど流動性は低くなるようで、その分売れにくくなります。しかし、街自体に力があれば、その流動性はそれ程低くならないようですので、街の力と駅からの距離との関係で計算されていると思われます。
実際郊外の小さな駅が最寄りで、そこから徒歩分数が多い、つまりは駅から遠い物件はなかなか売れない事が多いですし、成約価格がたいへん安くなってしまうという事がよくあります。逆に買う側から見れば、そのような物件は将来の資産価値を著しく落とす可能性がある物件という事になります。つまり流動性の低い物件を買う際にはより慎重に考えるべきだという事になります。
耐震性は旧耐震か新耐震かで機械的に判断している様子です
こちらは単に建物構造が旧耐震か新耐震なのかを判断しているようです。具体的には1981年6月以降に確認申請が出された建物が新耐震となりますので築年数だけでは完全には判断できないのですが、この期間前後に建てられた建物については、確認申請の時期を確認するようにという注意が出ますので、良くできていると思います。
住宅ローン減税が使えるかどうかで価格差が付くことを知らない人が多いようです
あまり知られていないのが、住宅ローン減税が使えるかどうかで、中古住宅の価格が大きく変わるという点です。ローン減税を使えれば、購入する人によっては100万円以上税金を減らすことができるためメリットが大きいのですが、その減税措置が使えないとなると、購入する人はその分不動産価格が安くないと納得しないでしょう。
逆に不動産を売る方は、この事が分かっていないために、売り時期を逃し、最終的に安く売らざるを得なくなる事もありますので、住宅ローン減税が使える条件については、予め知っておくべきだと思います。
一般的な木造住宅であれば、住宅ローン減税が使えるのは築20年以内の建物です。ただし、瑕疵保険の付加証明書を付ける事で、もっと古い建物でもローン減税を使えるようになるという裏技もあります。
何が土地の資産性に影響を与えるかのチェックリストとしても使えます
この項目では、どのような項目が資産価値に影響を与えているかについてチェックすることができます。例えば接道が公道なのか私道なのかで、売れる価格が異なる場合がありますので、そのような注意を促すためのチェックリストとして使う事ができます。
ただ、公道から私道に変わった場合でも、表示される金額が変わらないようですので、注意を促す効果はありますが、ではいくら差が付くと考えたらよいかの判断はできないようです。
しかし、一般の方は、土地の何が資産価値に影響を与えるかという事について知らない事も多いので、こういった項目が土地の価格に影響する、という事を知るだけでも効果は高いと思います。
一戸建ての購入や売却を考えている人は、ぜひ使ってみてください
このSelFinというシステムはこのようなシステムです。紹介しましたのは機能のごく一部ですので、ご興味がある方は実際に使ってみて、この効用を確かめてみてください。
不動産を買おうと考えている方はもちろんですが、売ろうとしている方にも使えるシステムだと思います。不動産売却の際には、複数の会社から査定を受けるかと思いますが、査定内容については詳しく分からない事もよくあります。その時に、このSelFinで調べた内容や項目を、査定した会社がどのように計算したのか、判断したのかを聞くだけでも、その査定会社がどう考えていたのかを確認することができます。
残念な事に、売却の依頼が欲しいが為に、適当な高値の査定金額を付ける仲介会社がたくさんいるという事もありますので、こういった査定システムと比較しつつ、良い仲介会社を見つけて頂ければと思います。
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