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不動産を買おうとしている人は、最初に何をしたら良いか分からない、という理由から雑誌や書籍から情報を得ようとします。個人的にはこの方法はお勧めですし、とても有効だと思っています。不動産に関わる知識が何もないまま、いきなり不動産会社に相談しに行きますと、営業マンから見て都合よく扱われる危険性があるからです。

一方でどの本を読んだらよいか分からないという話も良く聞きます。これは人によって必要となるタイプの本が異なるため、一律にこの本が良いとはお話しできません。そのため、著者やジャンルが違うタイプの本を10冊くらい読んで、比較することで不動産の状況がある程度分かるようになります、とお話しさせてもらっています。

ほとんどのお客様については、これで読む本の話は終わるのですが、時々より専門的なところが分からないという事が出てきます。これは不動産の選び方と言うよりも、実際に売買契約が近づいてきている状況で、物件に少し不安な点がある、という場合に出てきます。

具体的には、道路の接道や、私道の取り扱い、瑕疵担保についての考え方などがあります。これは一般の方向けの本にはあまり載っていないため、本だけでこういった内容を理解するのは大変だったりします。更に問題なのは、こういった専門的な内容については、不動産会社の人間であっても、間違った内容を説明することが多いという点です。

ですので、少し専門性が高い内容については、厳しくチェックしなければならないのですが、そのチェック方法が難しいため、解決は簡単ではありません。そこで今回お勧めする本が「不動産流通実務必読テキスト」です。この本やその内容について、簡単にお話ししたいと思います。

元々検定試験向けのテキストですが、よくあるトラブルの対応策が書かれています

今回ご紹介する本はこちらです。

元々は「不動産流通実務検定」という検定試験向けの参考書という位置付けの本です。一般的には資格試験の参考書や解説書は実務にはあまり役に立たない事も多いのですが、この検定自体が実務検定と呼ばれる名前の通り、実際に良く起きるトラブルに対して正しい知識を持っているかどうかを確認するものになっています。

この本を読んでみますと、確かに良く起きそうな問題について、注意点が書かれています。恐らくですが、この本の発行元である不動産流通推進センターに寄せられるトラブル等を元に、内容を作成したのではないでしょうか。

実際にお客様から良く聞かれる内容がそれなりの率で入っていますし、いかにも起きやすいトラブル事例について書かれています。実際にどのような内容が書かれているのか、少しご紹介したいと思います。

面積について良く聞かれる内容が書かれています

この本の最初の事例は、建物の面積についての話です。これはマンション等でよくあるのですが、表示されている専有面積と登記簿に書かれている公簿面積が違っていたためにトラブルになったという話です。

マンションの間取り

法律ごとに面積の計算方法が異なります。

なぜ面積が違うのかといえば、どこまでを建物の面積として含めるかは、法律によって微妙に異なるからです。例えば公簿の面積の算出方法は不動産登記法で定められており、工事等で示される面積は建築基準法で定められています。

これはマンション等ではその差が顕著に出るのですが、建築基準法では面積は建物の壁の中心から面積を測るのに対し、不動産登記法では建物の壁の内側で測るために、壁の厚さの分だけ面積差が出ます。通常販売で語られるマンションの専有面積は建築基準法上の面積で話をされるため、公簿面積を見て、実は狭いではないかと思ってしまう事があります。

壁の厚さであれば、わずかの差でないかと思われますが、このちょっとした差が後から経済的に大きな影響を与える事もあります。例えば住宅ローン減税を受けるためには、登記簿上の面積が50平米以上必要なのですが、建築基準上の面積が50平米強であった場合、公簿面積は50平米に満たないという事があり、この場合は住宅ローン減税が受けられなくなります。

住宅ローン減税が使えるかどうかで、年間の支払いに100万円以上の税金支払い差が出る事もあるため、この点を勘違いしてしまいますと、後から後悔することになり兼ねません。

他にも畳のサイズも地域や建物によって若干違いがあるため、当初から持っていた家具が部屋に収まらない等のトラブルになる事もあります。代表的な畳のサイズでは、
京間  1,910×955mm
中京間 1,820×910mm
江戸間 1,760×880mm
団地間 1,700×850mm
と、同じ何畳間といっても実際の面積は大きく違うという事があります。

もっとも最近の不動産広告上では、1畳あたり1.62平米で計算している(江戸間と中京間の間くらいの面積です)事がほとんどですので、トラブルにはなり難いとは思いますが、こういった内容を事前に知っているだけでもちょっとしたトラブルを防ぐことができます。

道路の注意点についてもありがちなトラブルについて解説されています

戸建住宅の場合トラブルになり易いのは、道路関連です。道路の接道や公道か私道かといった内容、道路の使用・利用についてもトラブルは起きやすいのですが、こちらの内容が不動産売買契約で詳しく説明されるかと言えば、意外とそうでもありません。

接道のイメージ

道路はトラブルになる要素をたくさん含んでいます。

ですがこの道路関係は知らないと損をしたりトラブルに巻き込まれたりする可能性が高く、この本でも道路に関する部分だけで、24頁も費やしています。

道路問題、例えば接道義務については、仮に問題があったとしてもその問題が表面化するのは数十年も後であるというケースが多々あります。中古の戸建住宅を買う場合、購入時は建物が建っているため問題なく使えるのですが、数十年後に建て替えをする際に、実は接道に問題があって建て替え出来ないという事があるからです。

実際のところ、不動産購入時にこの説明がどこまで的確にされているか、結構微妙な感じはします。当社でも中古の販売物件を見る際に、この建物は本当に再建築可能なのだろうかと疑問に感じる建物もたくさんあります。しかし、販売時に売主さんや売り主さん側の仲介会社からその点について注意を促される事はまずありません。その時の売買契約さえ無事に終われば、数十年先の話は、ほとんどの営業担当者にとって関係が無いからです。

この接道の話は「3-01-07.道路の幅や状況によって家が建たないこともあります」のページでも説明していますが、こういったあたりを知らずに買うと、将来の資産価値がほとんどない物件を買うという事にもなり兼ねません。

リスクを承知の上で買うという事であれば問題は無いでしょうが、大半の方はリスクの存在自体を知らずに買っているのではないかと感じる事もあります。

説明を受ける不動産会社が信用できない時に照らし合わせる資料として最適です

全部で300頁以上にわたり、このような不動産の売買等で起きがちなトラブルについて解説されています。少し専門性が高いので、一般の方がこの本を使えると思うのは、恐らく契約書や重要事項説明書の内容がよく分からない時でしょう。

本来であれば契約書の内容、重要事項説明書の内容はよく分からない事があれば仲介会社に聞けば済む話のはずですが、この説明をきちんと行わない仲介会社も残念ながら一定数存在します。例えば重要事項説明書を契約日当日まで見せないという会社はその典型でしょう。

信用できない営業マンのイメージ

不動産会社の説明が今一つ信用できない際には、こういった専門書の内容と照らし合わせるという事も検討すべきです。

重要事項説明というものを私も何十回も行っていますが、それでも内容でよく分からないところが時々あったりします。それを不動産の取引が日常ではない一般の方が、契約当日にその文面を読むだけで完全に理解できるはずがありません。

契約書や重要事項説明書の説明書を契約日よりも前に見せてもらい、可能であれば説明も受け、分からない点は確認して理解した上で契約に臨むべきです。そして、その説明に納得できない時や説明してくれる仲介会社が信用できない時に、今回ご紹介する本は役に立つ気がします。

仲介会社の説明とこの本の内容を照らし合わせ、本当に仲介会社の説明が正しいのかどうか確認した上で、売買契約を行う事で契約に関わるトラブルを大きく減らせると思います。

ちなみに当社では契約日の前に重要事項説明書の内容を説明するようにしています。このあたりの話は「契約書や重要事項説明書は1週間前にチェックしましょう」の記事でも説明しています。

この本自体は「スコア受検に役立つ不動産流通実務必読テキスト」のサイトから税込み2,400円で購入できます。専門書ですので一般の本よりは高い価格設定ですが、気になる方は購入して勉強してみるのも1つの方法だと思います。

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