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2016年の7月8日に国土交通省から平成27年度の住宅市場調査の結果が発表されました(国土交通省報道資料より)。報告資料は244頁と長い資料となっています。

その結果を見て、予想通りと思われる部分や、一般の方で現状がよく分かってはいないのではないか、などと考えさせられる部分もありましたので、今回は調査結果から気になった部分について、お話ししたいと思います。

分譲住宅の選択理由を見て、建物性能よりも間取りと広さ重視と感じられました

調査項目の中に、戸建住宅を購入した人で注文住宅を建てた方と分譲住宅を購入した方の選択理由が載っていました。注文住宅を選んだ方の、選択理由は次のグラフの通りです。

注文住宅の選択理由

平成27年度住宅市場調査の結果の1つで、注文住宅を選んだ理由です(国土交通省のデータを元にふくろう不動産が作成、単位は%)。

回答は複数回答でもOKとなっていますので、上記のような結果になっています。注目したいのは緑色の部分です。グラフの棒を緑で塗った項目は、建物の性能に関する項目です。高気密高断熱住宅であるという理由が半分以上、階差や地震・水害に関する項目も半分弱と、割と高めの数値となっています。

これを見た上で、分譲住宅ではどのような理由で選ばれたのかを見てみましょう。

分譲住宅の選択理由

平成27年度住宅市場調査の結果の1つで、分譲住宅を選んだ理由です(国土交通省のデータを元にふくろう不動産が作成、単位は%)。

分譲住宅というのは、建売住宅と考えてください。先程緑で示した、建物性能に関する項目はどちらも選択理由の20%もありません。それに対し、間取りや部屋数が適当だったからという理由が78.5%、住宅の広さが十分だったからという理由も半分を占めています。

この結果は私の予想通りですので、結果自体に驚くようなことはありません。ただ、家を買おうとしている皆さんに知って頂きたいのは、分譲業者もこの内容をよく把握しているという点です。

建売を販売している業者は、建物自体の性能についてどの位勉強しているかは怪しいものがありますが、売れるかどうかという点については、よく考えています。そして当然お客様が求める項目を優先的に考えます。

つまり、分譲住宅を求めるお客様は、間取りと広さが十分であれば、それで選んでくれる人が多いのであれば、その2つに特化し、他の項目は最低限にして価格を安くしよう、と業者は考える訳です。

その結果、安全性は最低限、断熱性も最低限でコストを抑え、間取り、広さ、価格の3つで勝負しようとする住宅が増えます。建売住宅の中には建物性能がまり高くないものが多い、と私は感じる事が多いのですが、お客様が求めないものにはお金をかけないという考えからは、ある種当然という気もします。

もちろんすべての分譲住宅が安全性が低いとか断熱性が悪いと決まっている訳ではありません。ただ、このような背景から安全性や断熱性には力をかけない分譲住宅も多いという事を知った上で、では何に気を付ければ良いかを考えながら、住まい選びをして頂きたいと思います。

中古を選ばない理由には知らないから損をしていると感じる項目がありました

調査項目には、中古住宅を選ばない理由についても書かれていました。中古の戸建住宅を選ばなかった理由は次の通りです。

中古住宅にしなかった理由

理由の1番は新築の方が気持ちが良いから、となっています。

理由の1番は「新築の方が気持ちが良いから」で、7割近くの人がこの理由を挙げています。住まいの機能や性能とは関係なく、新築の方が良いと思う人がたくさんいるという事を改めて感じます。もちろんこれは感覚の話ですので、良いとか悪いという話ではありません。

それよりも気になったのは「リフォーム費用で割高になる」と答えた人が38.3%もいて、理由の2番になっている点です。これには購入者の誤解があるように感じます。

もっとも実際に、建物の老朽化が激しく、リフォームをする位なら建て直した方が早いという中古戸建て住宅もあります。また、新築と比べても大きな差が無い価格で売りに出されている中古住宅もあり、これにリフォーム代を加えると、新築と大きく変わらないという物件もあります。

ですがそのような物件は一部であって、中古購入者は割高になるような物件を選ばなければ済む話です。大半の中古戸建て住宅であれば、リフォーム代を加えても、新築よりもかなり安い価格で購入が可能です。大掛かりなリフォームを必要とする中古住宅さえ選ばなければ、経済的に損をする可能性をかなり低くできると思っています。

この項目を選んだ方は、中古住宅市場の実際をあまり知らずに、新築と決めてしまったのかもしれません。

また「価格が妥当なのか判断できない」という項目も1割近くと少ない率ながらも答える方がいたようです。逆に私は新築の方が価格の妥当性を判断しにくいと思っています。特に分譲住宅であれば、どのような材料でどのような施工で建てられたのかが、完成後にはあまり正確に判断できません。

その点中古住宅の方が、建物の傾きがあるか、不具合が出ているかなどで判断材料が増えていますから、私は中古の方がむしろ価格を判断しやすいと考えています。新築の方が価格を判断しやすいと考える方は、売られている建物のレベルはどれも大差ないと考えているために、このような話になるのかもしれません。

戸建住宅だけでなく、中古マンション取得者の調査結果でも似たような話があります。

中古マンションにしなかった理由

不思議なのは「隠れた不具合が気になる」と答えた方が一定数いる事です。

「リフォーム費用が割高になる」「価格が妥当なのかが判断できない」という項目については、戸建住宅の時と同じように、実際にはそうではないと思っています。しかしそれ以上に疑問に思うのは、3番目の隠れた不具合が心配だと答えた人が22.5%もいる事です。

この考えは恐らく間違っています。私の考えでは、中古マンションよりも新築マンションの方が隠れた不具合は分からないと思います。

新築マンションの契約時には、そのマンションは建設途中で建物自体を見る事ができません。ですので、できてみると色々な不具合が実はある、という事があっても事前に判断することはできません。

中古マンションの場合でも、チェックできる項目は限られるのですが、それでも新築マンションよりも実際の建物がある分、確認できる点が増えます。例えばコンクリートのひびの入り具合や、排水管で詰まった事があるかどうかなど、不具合の確認ができる点は中古マンションの方が多くあります

マンション自体の不具合もそうですが、どのような人が住み、トラブルになっていないかどうかについても中古マンションの方が判断しやすくなっています

ハード面ソフト面ともに、不具合は中古マンションの方が判断しやすいと思うのですが、このあたりの事情をあまり理解していない人が一定数いるのではないかと思われます。

住宅ローンの年間返済額と過去の家賃との比較に考えさせられます

面白い資料として、住まいを買う前の家賃と、住まい購入後の年間のローン支払い額のデータもありました。ローンの返済額は購入した住まいのタイプによっても異なりますが、大体年間110万円強、月にすれば92,000円位の支払いになります。

住宅ローンの年間返済率

ジャンルによって返済金額は異なりますが、返済比率は20%弱となっています。 出典:国土交通省

これに対し、住まい購入前の家賃の平均は62,000円となっていますので、住まいを買う事で月々の支払いが3万円上がる事になります。もし購入したのがマンションであれば、管理費と修繕積立金が加わりますので、月に5万円近く支払額が上がる事になるでしょう。

支払金額の増額分を考えますと、ちょっと厳しいのではないかと感じます。月々に住宅購入用として6万円とか7万円分を貯蓄していたという事であれば問題は無いでしょうが、もし月々の貯蓄額が3万円だったとすれば、住まい購入後は全く貯蓄が出来ない事になります。

一般的には新居を購入した後は、光熱費なども増えますので月々の支払額が増える事が多くなります。全く貯蓄が出来ない状態で、支払額が増えてしまうと、月々は赤字でボーナス時に補填という事になり兼ねません。そしてもしボーナスが予定通りでない場合には、その家計は破綻してしまう事もあり得ます。

このデータはあくまでも平均ですから、実際にはもっと余裕がある方も多いと思いますが、くれぐれも無理な借り入れをしないように気を付けて欲しいと思います。

データが正しい判断をすることはありませんが、参考になる部分もあります

このように、ちょっとデータを見るだけでも、色々と考えさせられる事がたくさんあります。もちろんこれは実際に住まいを購入した人のデータを集めたものであって、この平均が正しいかと言えば、そんなことはありません。

調査報告書表紙

たまには公のデータを見るのも勉強の1つです。
出典:国土交通省

一般的な買い方であっても、その方法が本当に正しいかどうかは別のものだからです。一方である程度は、他の人はどのような買い方をしているのかを知る事も大事な事だと思います。何が一般的かを知らない場合には、たまたま担当した営業マンの話を一般的だと思いこみ、無理なローンや無理な購入をしてしまわないとも限らないからです。

国土交通省のデータなどは、不動産や建築のプロが見る事はあっても、一般の人が見る事はあまり無いでしょう。ですが、無料で公開されているものですし、変な誘導をするような内容でもありませんので、時間があるときにでも参考までに見ておくと良いデータだと思います。

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