布基礎の方がべた基礎より良いというケースももちろんあります
2018年の2月に、戸建て住宅の基礎についての動画を作成し、その際に布基礎とべた基礎について解説しました。ただそ動画のコメント等でべた基礎の方が絶対的に優れているかのような誤解を受けやすい、との指摘がありましたので、内容を補足する記事を書いてみようと思います。
この内容は不動産屋が考える住宅の基礎、の話ですので、より専門的な話や高度な話が聞きたいという方は、構造の専門家に確認するようにしてください。
地盤の強度が十分にあれば、布基礎でも構造的な問題は出ません
まず法律(正確に言えば施行令と告示)の規定から考えてみます。地耐力が30KN以上ある場合には、法的には布基礎であってもべた基礎であっても問題ありません。
布基礎の場合、設置面積が少ないため、地耐力があまり強くありませんと、沈下、不動沈下などが起きる可能性があります。この点べた基礎の場合、設置面積が広いため、1点にかかる力が弱くなりますので、布基礎と比べると多少地盤が弱くても対処できる、という事になります。
もっともこれは多少という話であり、地耐力が20KNに満たない場合には、単純なべた基礎でも沈下の可能性があり、法律では認められていません。地耐力が20KN未満の場合には杭を打って、地盤補強を行う必要があります。
つまり法律上布基礎がダメでべた基礎でなければならないというのは、地耐力が20KNから30KN未満の場合、という事になります。
逆に言いますと、地盤補強を行っているのであれば、例えば杭を打ってその杭の上に基礎を乗せるのであれば、上に乗るのはべた基礎であっても布基礎であっても問題はありません。
要は地面が建物の重さを支えてくれれば良い話ですので、その対策がどのような形で立てられているか、という話になります。
この構造の話とは別に、地面の湿気対策とかシロアリ対策はどうするのかという問題はありますが、それはまた別の話になります。ちなみに布基礎でも、シートや防湿コンクリートで湿気対策等を行うパターンもあるため、これはこれで別に考えるべき項目であると思います。
危険なタイプのべた基礎がある事も理解しておきましょう
地耐力が20KN以上はもちろん、30KN以上あった場合でもべた基礎でOKという事であれば、もう地盤改良が必要ない土地であれば、すべてべた基礎で良いではないか、という考え方もあります。実際最近の木造住宅の基礎は、地耐力が強くてもべた基礎を標準にしている会社が増えています。
これはこれでダメではありませんし、昔と比べますと、布基礎とべた基礎のコスト差が小さくなっていますので(材料費はべた基礎の方が高いのですが、手間は布基礎の方がかかるケースも多いため)、べた基礎を標準としている会社が増えているのは当然の流れのような気はします。
その一方で、べた基礎だからどれも全く問題ないかと聞かれますと、そんな事はありません。べた基礎でも安全性が低いべた基礎もそこそこあるからです。
梁の役割を受け持つ立ち上がりが切れているケースも多くあります
べた基礎の悪い例として、基礎の立ち上がりが切れていて、その分の補強がうまくできていないというケースがあります。基礎の立ち上がり部分と言いますと、単に地盤面から高く上げているだけのもの、と考えられるかもしれませんが、実際には構造的にも意味を持つことがあります。
これは鉄筋コンクリート構造の建物をイメージしますと分かりやすいのですが、RC造の建物は柱と梁、そして床スラブで構成されます。そして梁のサイズ等によって、構造的な強さが異なってきます。そしてべた基礎の形は、RC造の建物をひっくり返したような形と考えると分かりやすいと思います。
あるいは紙で模型等を作ると分かりやすいかもしれませんが、何もしない1枚の紙も、そのまま1枚のペラの状態よりも、折り曲げて角を作る方が強くなるというイメージの方が分かりやすいかもしれません。
このように立ち上がりも構造的な意味があるのですが、べた基礎で人通口を作る際に、立ち上がりを完全に切ってしまい、下のコンクリートの耐圧版のみという形式になっている基礎は多くあります。
この耐圧版がきちんと計算通りに作られているのであれば問題はありませんが、そうでない事例がある事を考えますと、少し不安が残ります。
これと比べますと、布基礎の場合は人通口を作ったとしても、その下の部分、土に埋まっている部分は立ち上がりが残っているため、ある程度は梁としての効果が期待できます。もっともその場合でも、どれだけの高さ分が残っているか、梁の感覚で言えば、梁せいがどの位あるかによって変わりますので、絶対的に良いとは言い切れませんが、少なくともゼロではありませんので、ある程度は期待できるという話になります。
耐圧版の強度が確保されていないケースもあるようです
前項で耐圧版がきちんと作られていれば、とお話しましたが、この耐圧版がきちんと作られていない例も実は多いと聞きます。耐圧版は、その囲まれている面積(区画)によって、コンクリートの厚さや鉄筋の量や配置などを考えなければなりませんが、これがきちんと考えられていない基礎も多いと聞きます。
耐圧版は地反力に耐えられるように鉄筋の配置をしなければなりませんし、状況によってはダブル配筋も考えなければなりません。実際に構造設計者の中には、耐圧版はダブル配筋であるべき、と主張される方も少なくありません。
ただ実際には2000年の告示の最低レベルでOKとしているべた基礎も多く、かつそれが本当に問題ない基礎なのかは分からないという事もあります。告示の内容を満たしているのになぜ不安なのかと聞かれれば、鉄筋の配置、かぶり厚の設定が本当に正しく施工されているかどうかが怪しい現場が多いという話も聞くからです。
このあたりは、どこまで正しく現場監理が行われているかにもよりますが、適当な設計・施工のべた基礎よりも、正しく管理された布基礎の方が良いという事ももちろん考えられます。べた基礎であればなんでも良いかと言えば、結局は設計や施工のレベルにもよる、という話になります。
確実なのは基礎も建物も構造計算を行っているケースです
このような話をしていきますと、結局基礎は何が良いのか分からないという話になります。このあたりが心配で、かつ自身で注文住宅を建てる方であれば、
・基礎の設計も含めて、きちんとした構造計算(許容応力度計算等)を行う
・現場監理で第三者機関を入れ、正しい施工が行われているかどうかをチェックする
という対処策を取る事になるでしょう。
一方で中古住宅を購入される場合や、建売住宅を買う場合は、このような確認を行う事はできません。できた建物を見て、ある程度というレベルで判断するしかないというのが現状だと思います。
このように基礎1つ取っても、考えなければならないことはたくさんありますし、チェックできない内容もたくさんあります。今回は基礎の形状についてのみのお話ですが、当然コンクリートの強度はどうするか、鉄筋の量や太さはどう考えるのか、擁壁がある場合にはどう考えるのか等、様々な要因があります。これをすべてチェックするのは、注文住宅でなければほぼ無理というのが実情です。
残念ですが不動産選びはこのような環境で行わざるを得ないという点は知っておきつつ、後は何ができるのか、何を確認することでリスクを小さくできるのか等を考えていくことになります。
この記事の内容の一部を動画でも解説してみました
このページでお話しました内容の一部を動画でも説明しています。その動画がこちらです。
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また住宅の基礎のチェックポイントについては
「3-02-08.戸建住宅の基礎のチェックポイント」や
「住宅の基礎のひび・クラックは幅とどの方向にひびが入っているかを確認しましょう」
の記事もよろしければ参考にしてください。