【2025年3月更新】ハザードマップの新しい使い方と不動産購入時のチェックポイント

今回は、不動産購入を検討されている方、特に一戸建てを考えている方にぜひ知っていただきたい「ハザードマップ」の最新情報と活用法についてお話しします。

2025年3月にハザードマップポータルサイトがバージョンアップし、より使いやすくなりました。以前にもハザードマップの使い方について触れたことはありますが、今回の更新点や、少し分かりにくい「重要事項説明におけるハザードマップの説明義務」についても触れながら、改めて詳しく解説していきます。

ハザードマップの説明義務、その範囲は?

不動産の重要事項説明では、ハザードマップについて説明することが義務付けられています。しかし、これは「水防法に基づいて作成されたハザードマップ」に限られる場合が多いという点に注意が必要です。

つまり、洪水や高潮など、水防法で定められた特定のハザードマップについては説明が必須ですが、それ以外のハザードマップ(例えば内水氾濫など)については、必ずしも説明義務の対象ではない、というケースがあり得ます。

だからこそ、私たちは買主自身が積極的に様々なハザードマップを確認することが非常に重要だと考えています。

新しくなったハザードマップポータルサイトを使ってみよう!

まずは、国土交通省が提供する「ハザードマップポータルサイト」を見てみましょう。検索エンジンで「ハザードマップ」と検索すれば、一番上に表示されることが多いです。

このサイトが、2025年3月17日に「重ねるハザードマップ」として改良されました。主な変更点は以下の通りです。

  • ピンポイントのリスク表示: 調べたい場所をクリックすると、どのようなリスクがあるかダイレクトに表示されるようになりました。
  • リスク検索ボタン: リスク検索ボタンを押すと、その場所に関する詳細な解説が表示されます。
  • 周辺のリスク表示: これまでピンポイントの情報でしたが、改良版ではその周辺のリスクについても表示されるようになりました。これは非常に重要な改善点です。ハザードマップにはある程度の誤差があるため、ギリギリ範囲外だから安心、とは限りません。周辺情報を含めて確認することで、より現実的なリスクを把握できます。
  • ポップアップの背景色の改善: リスクレベルに応じた背景色になり、視覚的に分かりやすくなりました。

このように、無料でここまで詳細な情報が得られるのは大きなメリットです。不動産、特に一戸建ての購入を検討する際は、必ずこのサイトを確認するようにしましょう。

具体的なハザードマップの種類と見方

ハザードマップポータルサイトでは、様々な災害リスクを重ねて表示できます。特に重要なのは以下の4つです。

  1. 洪水: 河川の氾濫による浸水リスクと浸水深が表示されます。
  2. 高潮: 台風などによる高潮の浸水リスクと浸水深が表示されます。海沿いだけでなく、意外と内陸部でもリスクがある場合があります。
  3. 津波: 地震に伴う津波の浸水リスクと浸水深が表示されます。主に沿岸部ですが、内陸に影響が及ぶエリアもあります。
  4. 土砂災害: 急傾斜地の崩壊、土石流、地すべりなどのリスクエリアが表示されます。傾斜が少ないと思われがちな地域でも、ピンポイントでリスクエリアが存在することがあります。これらのエリアでは、対策が取られているか、そもそも購入すべきかを慎重に検討する必要があります。

サイト上で住所を入力してピンポイントで調べることもできますし、地図をざっくりと見て、検討エリアがどのようなリスクを抱えているか全体像を把握するのも良いでしょう。

自治体のハザードマップも必ずチェック!より詳細な情報を見逃さないために

重ねるハザードマップは、全国どこでも統一的な基準で主要な災害リスクを把握できる非常に便利なツールです。しかし、これだけでその土地のすべての自然災害リスクを網羅できるわけではありません。特に注意が必要なのが「内水氾濫」です。

内水氾濫とは、大規模な河川の氾濫とは異なり、局地的な集中豪雨(ゲリラ豪雨など)によって、都市部の排水溝や下水道の処理能力を超えた雨水が、道路や低地に溜まってしまう現象を指します。近年、気候変動の影響もあり、都市部での内水氾濫のリスクが高まっていると言われています。この内水氾濫による浸水リスクは、河川の氾濫を想定した国のハザードマップでは十分に表示されていないことが多いのです。

そこで、重ねるハザードマップと合わせて必ず活用していただきたいのが、各市区町村といった自治体が独自に公開しているハザードマップです。自治体のハザードマップは、その地域特有の地形や排水設備、過去の災害履歴などをより詳細に反映して作成されています。ハザードマップポータルサイトからも、検討エリアの自治体のハザードマップへのリンクが提供されているので、スムーズにアクセスできます。

自治体のハザードマップでは、国の基準に基づく洪水や高潮の想定に加え、先ほど触れた内水氾濫に関する詳細な浸水想定区域や浸水深が示されていることが一般的です。さらに、土砂災害の詳細な警戒区域や、避難場所、避難経路、災害時の情報伝達方法など、地域に密着した重要な情報が多く含まれています。

例えば、私の会社がある千葉市花見川区作新台の場合、重ねるハザードマップで確認できる河川洪水などのリスクに加え、千葉市のハザードマップで内水氾濫のリスクを確認すると、驚くほど広範囲が内水による浸水想定区域に入っていることが分かります。標高が27m程度あり、周辺と比べても決して低い土地ではないにも関わらず、過去の降雨データなどに基づいた詳細なシミュレーションの結果、内水のリスクが存在することが示されているのです。このように、自治体マップを見ることで、全国版だけでは見えなかった地域固有のリスクを具体的に把握することができます。

リスクとの向き合い方

内水氾濫のリスクまで含めると、全く浸水の危険性がないエリアを探すのは非常に難しいのが現実です。ほとんどの市街地で、何らかの内水リスクが存在する可能性があります。

では、どう考えれば良いのでしょうか。

例えば、内水による浸水想定深が50cm未満といったエリアであれば、最近の住宅は建築基準法で定められた基礎の高さが40cm以上あり、さらに地面から基礎まで10cm程度の立ち上がりがあることを考えると、床下浸水はあり得ても床上浸水のリスクは低いと考えられます。この程度の浸水深であれば、「まあ仕方ないか」と割り切るという考え方もあります。もちろん、これはあくまで一般的な目安であり、土地の状況や建物の構造によって異なります。

どのようなリスクを許容できるかは、ご自身のライフスタイルや家族構成、災害に対する考え方によって異なります。全てのリスクをゼロにしようと考えると、物件の選択肢が極端に狭まってしまう可能性もあります。ハザードマップでリスクを正確に把握した上で、ご自身の許容範囲と照らし合わせて判断することが重要です。必要であれば、不動産業者や専門家と相談し、リスクに対する対策(例えば、止水板の設置や避難計画の策定など)についても検討することをお勧めします。

まとめ

今回は、バージョンアップしたハザードマップポータルサイトを中心に、不動産購入時に確認すべきハザードマップの見方について解説しました。

  • 重ねるハザードマップで、洪水、高潮、津波、土砂災害といった基本的なリスクを把握する。
  • 自治体のハザードマップで、重ねるハザードマップでカバーしきれない内水氾濫などの詳細なリスクや、地域固有の避難情報などを確認する。

この2つのハザードマップを必ず両方確認し、検討している物件の自然条件をしっかり把握した上で、購入するかどうかを判断してください。

ハザードマップは、その土地の過去や将来起こりうる自然災害のリスクを知るための重要な情報源です。賢く活用して、安心できる住まい選びに役立てましょう。

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