メールや電話で査定や妥当かどうかを聞かれても分かりません
当社:ふくろう不動産には様々な方から色々な質問を頂きます。その中のよくある質問の1つに、この物件はお買い得ですか、というものがあります。
実のところ、こういったご質問に一言で答えるのは不可能です。これは決して質問するなという事ではありませんが、誤解を受けないように、この点について、もう少し細かく説明したいと思います。
ざっくりとした質問にはざっくりとした返事しか出来ません
実のところ、当社にはもっとざっくりした質問で、
・マンションは買わない方が良いですか?
・駅から15分以上はダメですか?
・旧耐震物件は買わない方が
といったようなものもあります。
このようなざっくりとした質問の場合の返事は概ね同じで「価格によります」としか返事が出来ません。このあたりのお話は「不動産についての短い質問の答えの大半は「人によります」と「物件によります」という答えです」の中でも説明しています。
実際のところ、対象とする不動産がお買い得かどうかといった点の大半は値段次第で決まります。以前の記事で、不動産を売る方の立場からは「タダなら欲しい物件であれば後は値段次第」という話をしました(「私に売れない家はない、価格さえ決めさせてもらえればですが」参照)。
これを逆の買う方の立場から考えても同じ話で、タダであれば欲しいという物件であれば、後は値段次第というところがあります。この値段が相場と比べてどうかといった観点から見ますと、価格次第で良い物件となったり悪い物件となったりします。
このような条件を無視して、一言で良い悪いを考える事はできません。他の要素についても同様で、そもそも不動産の良し悪しや見かたを一言で説明するのは無理があります。これと似たようなお話は「住まい選びのポイントは一口では説明できません」の記事でもお話ししています。
一歩進んで物件詳細を送られて妥当かどうかを判断してほしいと言われた場合
不動産は個別性が強いため、簡単にこれが良いとか悪いとか、高いとか安いとかの判断はできません。こういった話から先に進みますと、では物件の資料を送りますので、この価格が妥当なのかどうなのかを判断してください、と聞かれる時もあります。
メール等でこのようなご質問を頂いた時には、簡単な返事をお返ししていますが、それは本当に簡単なモノでしかありません。詳しく調べて返答するのは現実的に無理だからです。
どうして無理なのかと言えば、
1.それだけの時間がかけられない
2.もらえる資料に限りがあり、判断材料が足りない
の2つの理由があります。
1つの物件の内容をチェックするのに簡易的なもので30分以上はかかります
実のところ、1つの物件の内容の簡易的なチェック、カタログデータのチェックだけでも30分以上はかかります。物件によっては2時間以上かかるケースもあります。
例えば当社で仲介を受けるお客様から、検討候補物件を出してもらった場合、
・現地の正確な場所の確認
・GoogleMAPやストリートビューで環境の確認
・土地情報レポートの作成
(標高や土地条件や、ハザードマップの危険エリアに入るかどうか等のチェック)
・用途地域や土地・建物の図面類を確認
・路線価図等で土地の相場観を確認
・REINSの成約事例等を見て、相場観を補強
という作業を行います。
これがすぐに情報が分かる場合でも30分近くかかりますし、サイト等の情報がよく分からず、内容の確認に時間がかかるときには2時間近くかかるという事もあります。
不動産のプロであれば物件を見たら、あるいは場所を示されればすぐに価格が分かるものだと考えている方も多いのかもしれませんが、実際にはそんな事はありません。不動産の場合は個別性が強いため、その物件を1件1件確認してみないと、数百万円単位の差は簡単に出るため、ひと目で分かるというものではないからです。
この30分かかるという話は動画でも説明しています
おなじような話を動画でも解説しています。よろしければ、動画もご確認ください。
5分で簡単に査定しますというものと同じ考えではいけません
このように簡単に金額が分かると思われる背景として、査定システムの普及があるように感じます。以前は5分で査定というような感じでしたが、今では〇秒で査定と秒単位となっているようです。
こういった広告などを日常的に目にしていますと、簡単に金額が分かるものと考えてしまうのも仕方が無い事なのかもしれません。
他にもネット上のシステムで簡単に金額が出せるものも増えていますし、実際に私も参考がてら、そういったシステムを使って金額を確認することもあります。
ですが、それで分かるのは査定金額、それも簡単な目安金額であり、実際のその不動産の問題や状況が分かる訳ではありません。
マンションの場合は、ある程度パターンがありますので、それなりに精度は高いのですが、戸建住宅に関しては本当に参考レベルのものでしかありません。
マンションの方が精度が高いといっても、7~10%程度の誤差は普通に出ます。一口に10%と言っても、3,000万円の物件であれば300万円差です。そして300万円も金額が異なれば、買う買わないの判断も変わってくるでしょう。
更に言えば、査定金額は正しく査定を行う会社もあれば、営業的な要素で高く金額設定する会社もたくさんあります。そういった中からどの金額が実際の相場に近いのかを判断することは決して簡単ではありません。
ちなみにこの査定内容については、大手だからできるとか中小は無理とかという話ではありません。どの会社であっても似たようなデータベースを使って計算しているからです。
広告掲載の資料は確認すべき資料の一部でしかありません
2.のもらえる資料に限りがあるという話もなかなか理解されにくい部分です。一般の方から見れば、ポータルサイトに載っている情報だけで充分だと思われるでしょう。ですが実際に広告で掲載されている不動産の情報はごく一部でしかなく、最終的な判断を行うためには、広告掲載分の何倍かの資料を確認しなければなりません。
具体的には、公図や登記簿、測量図や協定書などと広告表記の内容が合っているかどうかを調べなければなりません。それなりの率で、広告表記の内容が間違っているからです。
更には詳しい情報を確認するために、市役所や法務局、場合によっては土木事務所や下水道局等に行かなければならない事もあります。エリア毎の地域協定を確認するのは簡単ではありませんし、よく知っているエリアでも時期によってルールが違うというケースもあります。
原則として売り物件の資料は、売り主さん側に付いている仲介会社が調べて用意するものですが、それなりの率で資料がない、あるいは取り寄せていないというケースがあります。
その場合は、買主さん自身か買主さん側に付いている仲介会社が調べなければなりません。そして、市役所等への移動時間を考えますと、まる1日かかるというケースもよくあります。
後は当然ですが現地の状況も確認する必要があります。これも現地の写真を数枚撮っただけでは、不充分である事が大半です。ちなみに当社ではサーモカメラの画像も含めれば写真を200枚以上は撮ります。
こういった内容を考えますと、数分で正しく価格を考えるというのは、無理であるという事が分かってもらえると思います。
値段の決まり方や不動産の良し悪しの見かたを舐めてはいけません
検討している不動産を買って良いかどうかの判断は、このようなチェックを経て行われます。ですので、電話やメールで資料を送り、この物件はどうですか、と聞かれたとしても、本当に簡単な内容しかお話しできません。
ですので当社に問い合わせがあった場合でも、一般的にこうだという簡単な話しか出来ません。本格的なチェックを行う時間も余力もないからです。
失礼な言い方になってしまうかもしれませんが、自社で仲介されるお客様と同じレベルの調査をメールや電話だけの方に行う事は出来ません。そもそも当社の存在価値は、こういった調査や検査を徹底して行うという点にあるのであって、そのサービスは当然実際に取引するお客様でなければ受ける事は出来ません。
これは質問される方のすべてがそうだという話ではありませんが、質問される方の中には、値段の決まり方、不動産の選び方をあまりにも簡単に考えている方がいらっしゃいます。そのような方は、細かな話は不要で、良いか悪いか一言で聞きたい、と考えられるようです。
最終的に買うかどうかの判断自体は一言で言えるでしょう。ですが結論に至るまでに乗り越えなければならない事、チェックしなければならない事は本当にたくさんあります。そういった内容を無視して、一言で決まるものではありません。
詳しい状況をチェックする事無く断言する人がいたとすれば、それは不動産のプロではありませんし、最悪の場合は詐欺師である可能性もあります。
不動産は取扱金額が大きいせいか、詐欺的な内容の話をして営業を進める会社はまだまだたくさんあります。そして、詐欺的な会社は複雑な話をせずに、簡単な話、単純化された話でまとめようとします。
シンプルな話のすべてが詐欺ではありませんが、少なくとも詐欺的な内容はシンプルである事も多いという事は知っておくべきだと思います。
お客様の中には、後押ししてほしい、決断させてもらいたい、と考える方も多いでしょう。ですが、不動産選びで失敗すれば、一生に残るダメージとなる事もあります。そのような重要な結論や判断を人に任せるのは大変危険です。後々公開しない為にも、自分自身で勉強し、結論も自分で出す、という意識を強く持つべきだと思います。
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