住宅ローン計算で考えるべきは収入ではなく収支です

お客様からとお話をしていますと、今年収が〇〇万円なのですが、○○円の住宅ローンを組むことについて、どう思いますか、と聞かれる時があります。

この質問に対する私の答えは
・人によって条件が異なりますので一律には言えません
・そもそも借入額は収入ではなく収支で考えるべきです
という答えになります。

ただ、これだけでは分かり難いと思いますので、もう少し詳しくこの話をしたいと思います。

収入があっても支出が多いタイプの方は、返済可能金額が大きく下がります

よく言われる話ですが、借りる事ができる金額と返すことが出来る金額は全く異なるものです。そして借り入れ可能金額は収入をもって金融機関が判断しますが、返済可能金額は収入ではなく収支で考えるべきもので、判断は借り入れを起こす人自身が考えなければなりません。

借入のイメージ

いくら借りられるかではなく、返せるかで考えるべきです。

当たり前の話ですが、どれだけ収入があっても、その収入と同じくらい支出が大きい人であれば、お金は貯まりません。月々の貯蓄が全くできないタイプの方であれば、どれだけ収入があったとしてもローン破綻のリスクが高い方だと私は思っています。

当社では住宅ローンの返済可能額を「現在支払っている家賃+月々の貯蓄額の半分」を上限として考えるやり方が安全であるとお話ししています。この話については「2-02-01.住宅ローンはいくら借入ができるかよりも実際に払えるかを考えましょう」の記事でも説明しています。

どの家庭も自分の家が浪費家なのか倹約かなのか正しく把握されているという事がありません。他の家庭と比較することがあまりなく、なんとなく行っている自分の生活パターンが一般的であると根拠なく信じている事もよくあります。

実際には同じような生活スタイルを採っている家庭は無く、1件1件支払いの内訳やパターンは異なります。本来であればそれらの内容を細かくチェックする方が良いのですが、ざっくりとした考えとして、現在すでに行っている行動や支払から自分が浪費家なのかどうかを考える方が簡単です。

その方法の1つとして、家賃と貯蓄額を基準にして考えるという方法は有効です。これは将来こうできるという予測ではなく、現実の生活で使っているパターンであるため、単なる予測よりも信頼性が高いからです。

そして今支払っている家賃や貯めている貯蓄は、今の生活パターンから導き出されたものです。その支払いパターンの範囲内であれば、今の生活レベルを落とすことなく、支払いができる可能性が高くなります。

もっともこれは安全側で考えた場合です。実際に当社のお客様の半数はこれよりも多めのローンを組むことが多いのですが、考え方の1つとして、この方法も知っておいた方が良いと思います。

あるじゃん編集部の質問事例を参考にしてみましょう

いくら位の物件が買えるかという質問は定番のようです。先日マイクロソフトのマネー関連記事で「36歳貯金40万。頭金ナシで4000万円の住宅購入したい」という内容の記事が公開されていました。

36歳の年収600万円の方が4,000万円の戸建住宅を買うべきかどうか悩んでいるという質問に対して、ファイナンシャルプランナー(FP)の方が返答を寄せています。

質問と返答

ネット上の質問と答えというコーナーも参考になります。

私の考え方はFPの方とアプローチが違うため、結論が異なる事も多いのですが、今回の記事に対するアドバイスとしてはほとんど同意できます。

アプローチは異なるのですが、予算は2,500万円位にすべしという意見に賛成しますし、その前に現時点での予備費が無いので、住宅資金を貯めてから購入を考えるべきという意見にも全面的に賛成です。

アプローチが違うというのは返済期間や、住宅ローンの細かな設定についてです。私であれば、返済期間は60歳までに返済できるように24年返済で計算しますし、金利は原則として固定金利中心で考えます。そして、先ほどの家賃+貯蓄の半分という返済額から逆算しますと、やはり2,500万円位のローンが上限となります。

細かな点で違うのは、FPの方は諸費用も借入前提での話になっていますが、この方法は私はあまりお勧めしていません。そもそも諸費用も含めて借り入れできる金融機関は少ないですし、諸費用も借り入れ可能とする金融機関で11年以上の長期の固定金利のローン商品を持っている会社はほとんどありませんので、この方式自体が使えないという事もあります。(2020年10月の追記:今では諸費用も含めて全期間固定金利で貸し出しをしてくれる銀行が増えましたので、不可能では無くなりました)

そういった細かな違いはあるものの、FPの話は参考になる事もたくさんありますので、原典の記事も確認してみてください。

諸費用と半年分の生活費に充てられる現金を用意する方がお勧めです

ちなみにこの記事で出てくる例では、収入はともかく貯金が40万円となっていますので、現実的には不動産の購入は難しいと思われます。40万円では諸費用分の支払いには足りませんのでその分借入しなければなりませんが、諸費用分の借り入れを用意している住宅ローン商品は少ないですし、更に言えばそれだけでも足りないでしょう。

現金

諸費用と予備費は最低限現金で持っておきたいところです。

諸費用分の借り入れは、金融機関によっても異なるでしょうが、せいぜい物件価格の5%程度でしょう。どういった物件を買うかによっても諸費用の金額は異なりますが、少ないタイプでも5%分だとちょっと足りなくなるケースの方が多くなります。

諸費用については「不動産購入時の諸費用は結局いくらかかりますか?」の記事でも説明しています。この記事で紹介しているのは諸費用の基本的な部分だけで人によってはもっと費用がかさむ事もあります。

もっと言いますと、40万円では不動産関連以外で何かしらトラブルがあった際の余裕が全くありません。どの位のお金を予備費として見ておくかは人によっても意見が違うため、一律でいくら必要とは言えません。私であれば半年分の生活費は予備費として取っておきたいと思いますので、今回のケースでは170万円位は不動産関連とは別に取っておきたいお金になります。
(ちなみに後述します「知るぽると」では1~2年分の生活費を現金で持ちましょうと主張しています。私見ではさすがにそこまで用意するのは難しいのでは、と考えています)

貯蓄金額がいくら位必要かについても、ローンの考え方と同じようにその人の収支によって異なります。ですので金額でいくらというよりも、支出の何か月分というような期間で考える方が現実的な気はします。

ちなみにどうしても金額が気になるという方はサイト上で様々なデータが出ています。代表的なものは金融広報中央委員会が作っている「知るぽると」というサイトです。こちらのサイトの詳細ページの中には「家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査] 平成29年調査結果」というものもあり、世間一般ではいくら位のお金を持っているのかの参考になります。

私見ではこれらの資料に出てくる平均値はあまり参考にならず(一部のお金持ちが平均を上げていると思われます)、中央値あたりを見るのが良いと思います。

このページでお話ししました内容は、あくまでも私個人の意見ですので絶対的に正しいというものではありません。ただ、訳が分からずに何となく不動産を書いたけれども経済的な不安がある、という方にとって、何かしらの参考になればと思います。

このページでお話ししました内容を動画でも説明してみました

この記事内でお話ししました内容の一部を動画でも解説しています。その動画がこちらです。

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