当たり前の話ですが、住宅ローンの返済期間が長い程金利上昇の影響を受けやすいです
住宅ローンを組む際、返済期間を何年に設定するかは非常に重要な決断です。特に近年、50年などの超長期返済を選ぶ方も増えていますが、期間が長ければ長いほど「金利上昇」の影響を大きく受けるリスクがあることを、私たちは理屈だけでなく、具体的な数値で理解しておく必要があります。
今回の記事では、この「当たり前」の理屈と、実際に金利が上昇した場合にどれほど利息負担が増えるのかを、具体的なシミュレーションで確認していきます。
1. なぜ期間が長いと金利リスクが高まるのか?(理屈の再確認)
住宅ローンの返済期間が長くなると、金利上昇の影響を受けやすいのは、以下の3つの「当たり前」の理屈に基づきます。
1-1. 社会情勢の影響を受ける回数が増える
返済期間が20年なら2回、30年なら3回と、期間が長いほど、10年に一度起こるような社会情勢や経済の変動(=金利変動)の影響を受ける可能性が高くなります。変動金利を選ぶ以上、このリスクは避けられません。
1-2. 元本の減りが遅い
返済期間が長いプランは、月々の支払いに占める利息の割合が高く、元本がなかなか減りません。特に返済初期は顕著です。元本が減らなければ、金利が上がった際に、より大きな元本に対して高い利息がかかり続けることになります。
1-3. 5年ルール・125%ルールの真実
「5年ルール」や「125%ルール」があるから安心、と誤解している方もいますが、これは注意が必要なルールです。
- 5年ルール: 5年間は月々の返済額が変わらない。→裏では半年ごとに金利改定が行われ、本来支払うべき利息との差額は、6年目以降に上乗せされます。
- 125%ルール: 6年目以降の返済額の上昇は、前回支払額の125%が上限。→これも裏で全額の利息が計算されており、125%を超えた分は最終返済後に後回し(11年目以降に上乗せ)されます。
これらのルールは、一時的にお客様を救済しているように見えますが、実態は負担を先送りしているだけであり、後から一気に支払額が増加したり、未払い利息が膨らんだりするリスクがあるため、決して「顧客保護」のルールではないことを正しく理解しておく必要があります。
2. 数値で確認!返済期間ごとの利息負担の「差」
ここでは、「借入4,000万円、当初金利0.7%」でスタートし、「6年目から金利が3倍の2.1%に上昇」した場合の利息総額を比較します。
| 返済期間 | 当初金利(0.7%)での利息総額 | 6年目から2.1%に上昇した場合の利息総額 | 当初想定からの増加額 |
|---|---|---|---|
| **20年** | 287万円 | 632万円 | +345万円 |
| **35年** | 510万円 | 1,346万円 | +836万円 |
| **50年** | 741万円 | 2,134万円 | +1,393万円 |
※端数処理の関係で数値に若干の誤差が生じる場合があります。
シミュレーションが示す「期間の罠」
345万円の増加は小さくありませんが、まだ「想定の範囲内」「受け入れられる」と感じるかもしれません。
当初想定から約836万円も増。住宅ローン控除でカバーできるレベルをはるかに超え、感覚的にも大きなダメージだとわかります。
利息総額は2,134万円という驚異的な額に。当初想定より1,393万円も増え、トータルで見たときにこの利息額を許容できるか真剣に考える必要があります。
まとめ:理屈よりも「感覚」でリスクを把握しよう
金利上昇と長期返済の関係は「当たり前」ですが、その結果がもたらす利息負担の増加額を数値で見て、肌で感じることが何よりも重要です。
金利が2〜3倍になる可能性について「まさか」と思うかもしれませんが、日本の過去30〜40年の金利推移を振り返れば、2.1%という金利は決して高すぎる水準ではありません。
もし、シミュレーションした結果の数値を見て「これはさすがに大きすぎる」と感じたのであれば、それは体がリスクを察知しているサインです。その感覚を大切にして、繰り上げ返済などの対抗策を積極的に検討するなど、リスクヘッジをしながら返済期間を決定しましょう。
返済期間は、あなたの将来のキャッシュフローを左右する重要な選択です。ぜひご自身の借り入れでシミュレーションを行い、納得した上で決断してください。

