新国立競技場の問題から不動産の資産性や経済性を考えましょう
新国立競技場の建設は、7月17日に白紙撤回することに決まり、改めてデザインや工事費などについてやり直すことに決まりました。この新国立競技場の問題そのものについては、私自身も言いたいことはたくさんあります。しかし当社のサイトでは、新国立競技場そのものではなく、この問題を一般の住宅に当てはめて考えるようにしています。
このページでは、不動産の資産性や経済性について、比較しながら考えたいと思います。
イニシャルコストだけを見て、高いか安いかを考えてはいけません
新国立競技場の建設費用は、今の段階ではいくらになるかは決まっていません。設計段階での費用は、批判が多かった2520億円という事はないでしょうが、最初の1300億円で収めるようにするのかと言えば、そのあたりも決まっていないようです。
この建設費用については、アンケート調査も行われているように、いくら位が妥当という意見がたくさんあります。ですが、この建設費用はイニシャル費用だけで、高いか安いかを判断してはいけません。仮に建設費用が高かったとしても、その後のランニングコストが安く、かつイベントなどが数多く行うことが可能で、十分な収入が得られ、一定期間後に建設費用が回収できるのであれば、高いとは言えません。
逆に建設費用が安く済んだとしても、その後の使い勝手が悪く、収入が得られない競技場になるのであれば、結局は高い買い物だっということにもなります。
これを一般の不動産購入に当てはめてみましょう。このサイトでは不動産が経済的かどうかは
1.イニシャルコストが安いか
2.ランニングコストは安いか
3.売却時の価格は高いか
の3つの要素で決まると主張しています。(「第2章.その住まいは経済的ですか」参照)
住宅の場合は、最終的に手放すときの価格によって、その不動産が本当に安かったのかどうかが決まることがあります。また、維持費がとても高ければ、購入時の価格が安くても、結局は割高だったということは良くあります。
古い中古マンションなどはその危険性がそれなりにあり、購入価格は安くても、管理費や修繕費などが多額になり、結局は高く付いた、というケースがたくさんあります(「2-05-10.建替えできない現状を見れば、古過ぎるマンションの購入は危険です」参照)。
最終的に経済的な不動産かどうかということは、購入時には誰も教えてくれません。購入時の関係者は、その不動産の取引が行われることでトクをする人たちがほとんどのため、購入をためらわせるような発言や情報は控えてしまうからです。結局最終的に、購入を検討している不動産が高いものになるのか安く済むのかは、購入者本人が考えて決めなければなりません。
ちなみに日本ではこのような施設を10年20年というスパンで採算性を考える専門家がほとんどいません。一応計画では収支プランが建てられるのですが、どちらかと言えば建設費を捻出するために、つじつま合わせのために考えられた収入であることが多く、実際に計算通りの収入が得られることはめったにありません。
これは競技場などの建設は官主導で行われており、商売という感覚が劣っているからだと思います。ですので、最終的に工事費がいくらに決まったとしても、最終的に採算が取れる施設になるのは難しいと思っています。どうせ無理ならば、できる範囲で安く建てた方がダメージが少ない、という気もします。
新国立競技場も、最後はいくらで決まるのか、またその後の収支はどうなっていくのかを、興味を持って見守りたいと思います。
費用は建物だけではなくトータルで見なければなりません
またオリンピックのために新たに建設する建物も多いのですが、当初の予算と比べて、2倍3倍の費用が掛かっている施設もあります。これは当初の見通しが甘かったのが1番の原因ですが、工事費が上がっている内訳を見ていますと、付帯費用を全く見ていなかったケースが多かったようです。
例えば建物建設費は見ていたけれども、接続する道路整備費を見ていないですとか、地盤の補強費を見ていなかったなどがそれに該当します。
これも住宅建築で似たようなパターンが良くあります。多いのは不動産取引に係る手数料や税金などの費用、庭や外構の費用、新生活での家具やカーテンなどの費用がそれに当たります。
これも結構な費用がかかるのですが、意外と見落としがちです。しかし、これらの金額は結構大きく、当初見落としていると後での生活がとても苦しくなります。こういった費用は、不動産会社や建設会社では教えてくれないことも多いので、自分で勉強し、金額も事前に把握しておく必要があります。
建設費が高騰したので仕方がないという意見は民間ではありえない意見です
この建設費が当初1300億円の予定だったのが最終的には1800億円位になるのは仕方がない、という意見を良く聞きます。理由は建設材料費が高騰したこと、さらには建設関連の人件費が大きく上がったことが挙げられます。
しかし、この原価が上がったから総費用が上がるのも仕方がない、という考え方がいかにもお役所的な気がします。民間企業であれば、原価が上がったからと言って、すぐに製品価格が上がるのは仕方がないと考える人はほとんどいないでしょう。
材料費などの原価が上がった場合は、商品のサイズを小さくするとか、他で切りつめられる部分を詰めるとか、色々な努力をして、最終的な売値に大きな影響が出ないよう努力します。ガソリンなどの商品を除くと、ほとんどの商品は原価アップによる商品単価のアップは、5%以内位に抑えるようにしているのではないでしょうか。
それが公共工事の場合は50%増しも当たり前という感覚には今さらながら驚きます。もちろんこれは現場を叩いて値段を下げろと言う事ではありません。計画自体を見直したり、材料を見直して、性能や機能はなるべく維持したまま、価格を当初の価格に近付けて欲しいという事です。
これも一般的な住宅建築の場合に置き換えてみましょう。戸建の注文住宅であれば、原価が上がったので、工事費が上がりました、という話を一般の施主が受けることはまずありません。その代わりに、太陽光発電を入れたから、この価格アップは仕方がない、ですとか、外構と庭を立派なものにしたいから、これだけの増額は仕方がない、ということが良くあります。
特に設備や外構は、最初にあまり深く考えず、簡単なもので予算を組んでおき、後から考えると立派なものが欲しいと思い、その結果増額してしまうというケースは本当によくあります。
ですが、実際にそれらの費用を支払うのは皆さんです。立派な庭を作ったからといって、明日から給料が増える訳でもありません。建物全体の金額から考えると、追加分の金額は小さく見えますので、つい簡単に決めてしまいがちです。ですが小さいと言っても数十万円単位、場合によっては数百万円単位のお金が動きます。この金額は新生活で使えるお金にも影響します。
工事費については可能な限り、最初に予算設定をして、その予算内に収まるように計画を細かく詰めておくべきです。
幸い建築ではVE案と呼ばれる、金額を下げる手法があります。これは価値はなるべく変えずに、金額を下げるために方法の事で、具体的には材料を安いものに変更したり、プランを簡便化して、費用を下げることができるものです。手馴れている設計士であれば、このVE案を、詳しく、かつ当初の案と比べてもそれほど違和感が無い案を提案してくれます。
最初の計画がずさんで、間取りが決まっている程度で使用する材料がはっきりしないまま進めている場合には、追加費用が出やすくなります。これは、出来上がりがイメージと大きく違うことが多くなり、またイメージに合わせようと良い材料を使うことで、追加費用が出るからです。
こういったことを防ぐためにも、計画当初から、どのような材料や設備を使うのかを決めておき、後から費用が上がることが無いように気を付けたいものです。
ふくろう不動産は皆様からのご意見を随時受け付けています
新国立競技場については、思うことはたくさんありますし、経緯を興味深く見ています。ですが、その個人的な意見よりは、まず実際の生活、不動産選びや家づくりの参考になる部分はないかと考えて、このページを作りました。
新国立競技場についての話は私も詳しい訳ではありませんので、間違っている内容や意見もあるかもしれません。もし内容に問題があるようでしたら、当社までお知らせいただければと思います。
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