相続税の誤解を利用してビジネスを拡大している業界は不動産業界だそうです
先日紹介した本については批判的な内容が多かったものですから、今回は役に立つ本の紹介をしたいと思います。それがこちらです。
不動産営業マンの話をうのみにしてはいけません
この本の前書きには、相続税については多くの誤解があると言っています。そしてその誤解を利用してビジネスを拡大しようとしている業界が「不動産業界」である、と指摘しています。
同じ不動産業界にいる私としては耳が痛い話です。しかし実際に相続税について、お客様に誤解させたまま、自分のビジネスに有利になるような営業をしている人が不動産業界に多いのも事実です。
特にトークに優れた営業マンも多くいますので、良く理解しないうちに不動産を購入してしまう例も多いかもしれません。著者はその代表的な例として、タワーマンションの購入と、アパート経営についての問題を説明しています。
タワーマンション節税も効果がないケースがあります
タワーマンションは時価と比べ、相続税の評価額が低いために、相続税対策の商品として人気があるようです。ですが税務当局がそのタワーマンションの購入を「租税回避行為」だと判断すれば、時価で計算した相続税を請求します。
本に掲載されていた事例では、相続後に早い段階で売却したため、租税回避行為だと解釈されていました。そして、購入したマンションを何年所有していれば、「租税回避行為」に該当しないかどうかの基準がないため、タワーマンション購入はリスキーであるとしています。
2011年にも、タワーマンションの相続税評価は時価で申告を行うべしとの判例もあったようです。そのため著者は、なぜ今頃になってタワーマンションが節税になる、というデマが流れているのか分からない、と述べています。
これはタワーマンションが節税になる、と主張している人の本(有名な本で私も持っています)が売れたことや、ディベロッパーなどが相続税対策として有効である、と営業しているせいだと思います。
ちなみに私は別の理由から、あまりタワーマンションをお勧めしていません。その内容については「2-05-11.タワーマンションは本当に資産価値を維持できますか?」のページを参考にしてください。
アパート経営はリスキーな割には節税効果は低いようです
もう1つ不動産業界の悪い例として、アパート経営の営業が挙げられていました。アパート経営の土地で相続税の減額対象となるのは200平米までと少ないため、大規模のアパート経営を行うことはできません。
つまり減額できる範囲が限られている割には、不動産売買にかかる経費、建物建設にかかる費用、アパートの入居率が低くなるリスクなどを考えると、有効な相続税対策ではない、という意見です。
私もこの意見に賛同しています。そもそも資産が1億円くらいであれば、相続税がほとんどかからないケースが多くあります。仮に相続税が発生したとしても多額にはなりません。余計な借金やリスクを抱えるよりは、普通に相続税を払った方が安く済むケースも多いと思われます。
このあたりの話については「2-01-04.相続税対策として不動産を購入しますか?」のページも参考にしてみてください。
また30年一括借り上げなどについての危険性も、この本で取り上げられており、その意見にも私は賛同します。こちらは「30年一括借り上げという不動産のサブリースを理解するのは難しいことです」のページをご参照ください。
最強の相続税対策は都心部に豪邸を買って同居することです
この本では、もっとも効果がある相続税対策は、都心に豪邸を買って同居すること、と書かれています。同居している不動産の相続税は「小規模宅地等の特例」と呼ばれる減額措置があり、その措置をうまく使えば土地の評価額を80%も低くすることが可能です。
この「小規模宅地等の特例」は2015年から完全分離型の二世帯住宅でも適用になりましたので、同居は嫌だが相続税額は押さえたいという方も使い勝手が良くなりました。
さらに、1度住んでいれば、その後に老人ホームなどに入所し、そちらで亡くなったとしても、この適用を受けられるようになってきています。
これは法律で認められている節税行為ですので、怪しい節税とは違い、安心できるのがありがたいところです。もっともお金が無いと都心に豪邸を買う事はできませんので、相続対策はお金持ちの人のためのものだという感じを改めて受けさせられます。
税務署は割引制度などを自らは教えてくれません
相続税対策で変な話に引っかからない方法の基本は、自分で税額を計算することです。アパート経営は、自分で現状のまま相続した場合の相続税額とアパートを建設した後の相続税額を計算して、減らせる相続税額と、アパート経営のリスクを比較して判断すれば、明らかに怪しい話には引っかからずに済みます。
税額の計算はそれほど難しい計算ではありません。細かく計算すれば大変ですが、ざっくりとした税額を調べるだけであれば本を見ながら計算すれば簡単にできます。
内容が良く分からない場合には税務署に聞きに行くという方法もあります。ただ、税務署に聞く場合の問題は、聞いたことについてはきちんと答えてくれますが、節税方法について積極的に教えてくれる訳ではないことです。
ですので、まずは本などで自分で調べるか、税金に詳しい人に話を聞いた後に、分からない部分だけ税務署に聞きに行くというのが正しい税務署の使い方ではないかと思います。
一般的な税金の計算方法や使える控除についても書かれている本です
今回紹介した本では、ここまでお話ししました不動産会社のセールスに対する危険性の他にも、一般的な税金の計算方法や、基本的な控除の内容についても書かれており、これ1冊読むだけで、基本的な知識は身に付くと思います。
お勧めの本ですので、相続税がかかるのではないかと恐れている方や、相続税対策で不動産会社から営業を受けている方は、ぜひ1度この本を読んでみてください。
ふくろう不動産では皆さまからのご意見やご質問などを随時受け付けています
当社:ふくろう不動産では皆さまからのご意見やご質問などを随時受け付けています。税金については専門ではありませんので詳しい話はできませんが、不動産と税金に係る一般的なご相談であれば、お話しできることもあるかと思います。
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