マンション選びの本で役に立たない本の典型例を紹介します

書店には戸建住宅選びやマンション選びの本がたくさん出ています。その中には役に立つ本もあれば、全く役に立たない本もあります。ただ、これは不動産や建物に詳しい人でなければ、役に立つ本なのか立たない本なのかの判断が簡単にできません。

こういったマニュアル本の良しあしを判断するには、複数の本を読んで照らし合わせるしかないのですが、まずは役に立たない本はどういったものなのかをお話ししたいと思います。

役に立たない本は基本的には3パターンあります

3つのイメージ

マニュアル本で役に立たない本があるのには3つの理由があります。

役に立たないマニュアル本には基本的に3パターンあります。それは、

1.製品や会社の紹介が中心となっているバイブル本
2.著者の知識自体が古すぎたり間違っていたりするため役に立たない本
3.内容自体は正しいが、その内容を知っても具体的な行動が起こせない本

の3パターンです。

バイブル本とは企業がお金を出して作った広告本のことです

バイブル本のイメージ

最初から企業の宣伝や商品告知のために造られた本やあまり役に立ちません。

1.のバイブル本は、その企業の広告のために作った本の事です。一般的に書籍は、その本が売れた代金を収入源として作られるため、読者が興味が持ちそうな内容、売れそうな内容を考えて作られます。

それと比べバイブル本は、書籍の制作費用や、書籍を作る会社の利益も含め、最初に企業がお金を出します。企業は、自社のイメージアップや自社商品の宣伝・紹介をしたい本ですので、内容も企業や商品の良い点ばかりが語られます。

その結果、バイブル本はウソをついているとまでは言いませんが、偏った内容の本ができあがり、マニュアル本としては役に立たないことがほとんどです。

バイブル本では、書籍の半分近くは商品の宣伝か会社の宣伝内容となっていますので、注意して見れば大体分かります。また、巻末に会社の連絡先なども書かれていますので、こういった本はバイブル本ではないかと疑ってみた方が良いでしょう。

バイブル本であっても役に立つこともありますので、すべてのバイブル本がダメという訳ではありませんが、マニュアル本としてはほとんどが役に立ちません。本の購入前には、まずはこのバイブル本を選ばないように注意しましょう。

マンション選び本で分かりにくいのは内容が間違っている本です

バイブル本は一般の方が見ても、なんとなくそうだと分かることが多いため、そういったバイブル本を読んで間違った判断をするということは少ないと思います。

それと比べ、内容が間違っている本は、パッと見て何が問題なのかが分かりません。そして著者プロフィールなどを見て、著者が専門家だとしても、結構内容が間違っている本もあります。これは、著者が専門の仕事をしていた時期が古く、現状とまったく合致していないケースもあれば、何の専門家だったのかそもそも疑わしいと思われるものもあります。

今回はちょうど、その悪い例に当てはまりそうな本を見つけましたので、その本の内容に沿って説明したいと思います。

マンション本表紙

悪い例として挙げますので、現時点ではもう売られていない本を取り上げます。

そうは言っても悪い例ですので、直接紹介するのは気が引けます。今回は現在売られている本ではなく、過去の本で、書名や著者名は伏せたまま、悪い事例を紹介するようにします。

著者が昔の知識中心でその後勉強をしていないと、間違った内容を自信たっぷりに説明します

勉強のイメージ

著者が経験者であっても、新しい知識を得ようと努力していない人であれば、間違った内容が書かれていることがよくあります。

この本の著者は大手ゼネコンの設計部出身の方のようです。発行は2006年と古いのですが、その時点から見ても、古いと思われる内容について書かれています。

例えば水栓については、レバーを下げると水が出るタイプなのか上げると水が出るタイプなのか、選択できる場合には現在使っているタイプと同じ形式にしろ、と書かれています。しかし、2000年のJIS規定では水栓を上げると水が出るタイプに統一されています。発行6年前の情報すら反映されていない内容の本はどうかと思います。

また、マンションで床のスラブが180mmを超えるものはほとんどない、と言っています。2006年時点であれば、スラブ厚が200mmを超えるマンションは結構たくさんあります。

さらにベランダに洗濯機を置くケースの話や、お風呂にバランス釜が入っているイラストの説明など、いつの時代の話をしているのかと思わされます。2000年以降にそんな古いタイプのベランダや浴室のマンションがあるとは思えません。

制振構造の説明も、屋上にドラム缶などの水槽を置くなど、今ではあまり普及していない方法が解説されています。現在では建物にダンパーを組み込むやり方が一般的なのですが、2006年当時であっても、屋上の水槽方式が一般的であったとは思いにくいので、こちらもどの時点を想定して書かれたのかが不思議です。

他にも逆梁工法のマンションはベランダを作ることができないと書かれていますが、実際には逆梁工法でベランダ付きのマンションはたくさんあります

またマンションの駐車場は1住戸あたり1台分が望ましいと書かれています。郊外型でもない限り、駐車場100%完備のマンションはあまりありませんし、またあったとしても、ランニングコストなどの兼ね合いを考えると、トクかどうかは微妙です。現状ではむしろ損となるケースが多いと思われます。

このように昔の知識をそのまま現在のマンションに当てはめて語られても、役に立ちませんし、現状から見れば間違いと言える内容です。

本の内容に間違いがあるのかどうかは、ある程度詳しい人でないと分からないかもしれませんが、自分で知っている範囲の知識と比べて、内容が合っているかどうかを確認しつつ、本の信ぴょう性を確認して読まなければなりません。

内容は正しくても、実際には役に立たない事が書かれている本も多くあります

行動に移せない

実際には行動に移せない、あるいは何をしたら良いか分からない内容が書かれた本は役に立ちません。

また、本に書かれた内容は正しくても、実際には何の役にも立たないという内容がぎっしりと書かれた本も多数あります。この本で言えば、問題があるマンションを選ばないようにする方法についてが該当します。

著者は、マンションをチェックするには、
1.モデルルーム見学時に建築士を同行させ、見積図面をチェックしてもらう
2.工事現場に建築士を同行させ、図面通りかどうかをチェックしてもらう
3.マンションの設備を設備設計者に見てもらう
4.見積図面と竣工図面を設計士に付き合わせてもらう
などの手法をお勧めしています。

実際にこのようなチェックをしてもらうには、複数の専門家に何度も現地に来てもらわなければなりません。さらにすべてのチェックを期待するのであれば、その費用は10万20万円では済まないでしょう。一般のマンション購入者がここまで準備してチェックしてもらうのは実際には無理です。

また、耐震設計はバランスが大事、ですとか柱・梁よりも基礎が大事、と著者は主張されています。もちろんその内容自体は正しいと思いますが、実際にそのチェックを購入予定者が行うことはできません。

チェック方法としてボーリングデータや基礎施工図を入手して、専門家に見てもらいましょう、と主張されていますが、こうやって、すべての項目について専門家に見てもらうのであれば、いったい何人の専門家が必要になるのかが分かりません。

この本によるチェック方法は、マンション全体の現場監理レベルの内容を要求しています。実際にいち購入者がそこまで工事内容を確認するのは無理です。このレベルまで要求するのであれば、チェック費用も恐らく1住戸のマンション価格以上の費用になるでしょう。

他にもコンクリートの一般的な話や、工法の一般的な話を聞いても、ではそれを知ったからといって、何もできることがなければマンション選びには役に立ちません。コンクリート一般の話を知ったからと言って、実際にコンクリート打設時に、いち購入予定者がチェックすることはできないからです。

またマンション契約後の内覧時に確認できることがあったとしても、実際にそれを確認したからといって、その内容を元に契約解除や減額交渉ができないのであれば、知っても何の役にも立ちません。この本に限らず、マンション選びの本には、そのような傾向があることが多くあります。

マンション選びの本を選ぶ際には、実際にどの時点でどのような行動がとれるか、という点にまで述べている本が、より役に立つ本だと思われます。

新築マンションでは実際にチェックできることは多くありません

新築マンションのイメージ

新築マンションの建物自体についてチェックできることは多くありません。

本の選び方、というテーマからは少し外れますが、新築マンションの場合、建物の内容・性能をチェックできる部分はあまりありません。一般の方が構造のチェックをするのは無理だと思いますし、インスペクションで完成後に建築士を同行したとしても、構造チェックでできることは限られます

マンションの完成内覧会でインスペクターなどと同行し、チェックしてもらうことは可能ですが、完成後で性能に大きな影響がありそうな部分をチェックするのはほぼ不可能です。戸建住宅であれば手を入れられる部分はたくさんありますが、マンションでは完成後にできることは本当に限られます。

私個人の意見としては、新築マンション選びの際で建物自体に注意すべき点は、事前に図面で
1.壁厚やスラブ厚の確認
2.隣の住戸との間取りの組み合わせとPS等の位置の確認
3.床材とその防音性などの確認

あたりが精いっぱいではないかと思います。

後は建物のハード的なものではなく、管理体制や共用設備などで何が入るのかを確認するくらいではないでしょうか。中古マンションであれば、実物がありますし、経年変化の状況で分かる部分はもっと増えますが、新築ではこの辺りまでが精いっぱいではないかと思います。

このサイトではマニュアル本に負けない内容を公開していきたいと考えています

役に立つ本のイメージ

マンション選び、戸建住宅選びなどの不動産選びの参考書になるようなサイトを目指しています。

このページは批判的な内容になってしまいましたが、実際に売られている本で役に立たないと思われる本がたくさんあります。私も仕事柄、このジャンルの本をたくさん読んでいますが、本を10冊読んだとしても役に立つ本は1~2冊しかありません。ただ、事前にこの1~2冊を選ぶのは簡単ではありません。

役に立つ本を選ぶ方法としては、ここまで書かれた内容に注意しながら購入する本を決めるということか、後は最初から悪い本が混ざることを前提の上で、タイプの違う本を10冊近く読むことをお勧めします。

私が今まで読んだマンション本の中でお勧めなのは
本当に役立つマンション購入術(のらえもん著)
やってはいけないマンション選び(榊淳司著)
99%のマンションは買う価値なり(碓井民郎著)
あたりではないかと思います。

本の購入費はかかりますが、マンションなどの価格から比べると、十分安い金額ですし、それだけの価値はあると思います。

また、当サイト:失敗しない不動産の選び方でも、マンション購入者の方の役に立ちそうな内容を発信していきたいと思っています。マンションの購入については、経済性、安全性、快適性と3つの切り口から購入の注意点について書いています。詳しくは各々ページである
2-05.経済的かという観点から見たマンション選び
3-03.安全という観点から見たマンション選び
4-03.快適という観点から見たマンション選び
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