新築住宅を選ぶのはバカなのでしょうか

はじめに:新築を選ぶのは本当に「気分」の問題?

「日本人は新築が好きだから、気分で新築を選んでいる。そもそも高い新築を選ぶなんてバカのやることだ!」

こんな声を聞いたことはありませんか?確かに、中古住宅と比較して新築が割高に見えることもあります。しかし、私たちが不動産仲介の現場で多くのお客様と接する中で感じるのは、新築を選ばれる方々には、単なる「新しさへの憧れ」だけではない、明確な理由があるということです。

今回の記事では、新築住宅、特に建売住宅を選ぶことのメリットや、中古住宅と比較した際の考慮すべき点について、具体的なデータや経験談を交えながら解説していきます。

「建物の性能に差はない」は本当か?

新築を選ぶのは「バカ」だという主張の背景には、「住宅の建物性能は、今も昔もそんなに変わらない」という前提があるように感じます。しかし、これは大きな誤解です。

実際には、住宅の建物性能にはものすごい差があり、特に最近の建売住宅は、以前に比べて格段に性能が向上しています。30年、40年と長く住むことを考えれば、建物性能の高さは、その後の暮らしやすさや維持コストに大きく影響してくるのです。

最新の建売住宅が持つ「性能」という強み

昔の建売住宅には「安かろう悪かろう」というイメージがあったかもしれません。しかし、今はそうではありません。デザインの好みは人それぞれですが、性能面では大きな進化を遂げています。

1. 耐震等級3の普及

首都圏の建売住宅では、感覚的に6割以上が耐震等級3を取得しています。これは設計段階だけでなく、建設住宅性能評価書で認定されたもので、かつての「耐震等級3相当」といった曖昧な表現ではなく、確かな耐震性が確保されていることを意味します。

2. 断熱等級5へのシフト

数年前までは断熱等級4が主流でしたが、2025年現在では断熱等級5を取得する物件が増えています。例えば、千葉県エリアの断熱性能基準「Ua値」で比較すると、等級4が0.87だったのに対し、等級5は0.6と、大幅に断熱性が向上しています。

3. 窓サッシの進化

見た目では分かりにくいですが、窓サッシの性能も大きく変わりました。昔は室内側もアルミが露出した「アルミと樹脂の複合サッシ」が多かったのに対し、最近の断熱性能の高い住宅では、室内側が全て樹脂フレームになったサッシが増えています。これにより、断熱効果がさらに高まっています。

4. 長期優良住宅認定の増加

長期優良住宅の認定基準は年々厳しくなっていますが、それでも認定を取得する住宅は増えています。これは、住宅全体の性能が底上げされている証拠と言えるでしょう。

5. メンテナンス性の向上

排水管がコンクリートに埋め込まれず、交換しやすい構造になったり、点検口が設けられるなど、将来のメンテナンスを考慮した設計が増えています。

6. 内外装の質感向上

「建売は安っぽい」という声も聞きますが、最近の建売住宅は内装・外装ともに質感が向上しています。もちろん注文住宅のような無垢材や自然素材をふんだんに使っている訳ではありませんが、実際に住む上での不満はほとんど感じられないレベルになっています。

新築ならではの「金銭的・制度的」メリット

建物の性能だけでなく、新築住宅には中古住宅にはない、金銭的・制度的なメリットも多く存在します。

1. 長期保証の安心感

新築住宅は法律で、雨漏りや構造に関する部分について10年以上の保証が義務付けられています。さらに、地盤については20年以上の保証が付く物件も増えています。

一方、中古住宅の瑕疵保険は期間が2年〜5年と短く、また、外壁のひび割れやシーリングの劣化などにより、そもそも保険に加入できないケースも少なくありません。売主が検査を拒否することもあり、購入後の修理費用が自己負担となるリスクを避けたい方にとって、新築の長期保証は大きな魅力です。

2. 税制優遇と補助金

  • 住宅ローン控除: 新築住宅(事業者売主)の場合、控除期間が13年間であるのに対し、中古住宅(個人売主)は10年間と短くなります。また、控除額の上限も新築の方が高く設定されています(新築:3,000万円〜5,000万円、中古:2,000万円程度)。
  • 補助金: 「子育てエコホーム支援事業」や「ZEH補助金」など、新築住宅にしか適用されない補助金も多く存在します。これらの補助金を活用することで、中古住宅との価格差が埋まることもあります。

3. 仲介手数料の優遇

中古住宅では買主が仲介手数料を全額支払うケースがほとんどですが、新築建売住宅の場合、売主が仲介手数料を負担することが多く、買主の仲介手数料が無料になったり、割引されたりするケースがあります。これは、不動産購入時の初期費用を抑える上で大きなメリットとなります。

4. 住宅ローンの借りやすさ

特に自営業の方など、通常の銀行ローンが通りにくい方にとって、フラット35は有効な選択肢です。新築住宅はほとんどの物件がフラット35に適合しているため、検査費用や不適合のリスクを負うことなく、確実にローンを組むことができます。中古住宅の場合、フラット35適合のための検査が必要で、不適合の場合は検査費用が無駄になるリスクがあります。

中古住宅との比較:見極めの難しさ

もちろん、中古住宅にも魅力はあります。しかし、「築年数の割に安くない」と感じる物件も増えており、新築と比較検討した結果、最終的に新築を選ぶ方も少なくありません。

一般的に、戸建ての建物部分は約25年で価値がゼロに近づくとされています(あくまで相場的な考え方であり、実際に住めなくなる訳ではありません)。しかし、この相場からかけ離れた価格で販売されている中古住宅も多く、その見極めは非常に難しいものです。

特に、注文住宅の中古物件は、個人の好みが強く反映されているため、物件を見る目、建物の良し悪しを判断する目が新築以上に求められます。

まとめ:大切なのは「正しい情報」と「賢い判断」

今回の記事は、決して新築住宅を一方的に勧めるものではありません。新築には新築の、中古には中古の良さがあり、どちらを選ぶかは個々のライフスタイルや価値観、そして予算によって異なります。

大切なのは、「新築はバカだ」といった感情的な意見に流されることなく、建物の性能、保証、税制、ローン、諸費用など、様々な側面から正しい情報を得て、冷静に比較検討することです。

新築と中古を並行して検討し、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、ご自身にとって最適な住まいを見つけることが、後悔しない家選びへの第一歩となるでしょう。

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