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2016年の8月に、「住宅地価格査定マニュアル」「マンション価格査定マニュアル」の2種類の内容が一部変更されました。もっとも、こう聞いても一般の方は何の事か分からないでしょう。

中古の戸建住宅や中古のマンション、あるいは一戸建て用の土地を売ろうとしている人たちは、不動産仲介会社に価格の査定をしてもらいます。この査定内容は不動産仲介会社毎に異なるのですが、考えの元になっているのは不動産流通推進センターという公益社団法人が出しているマニュアルです(「価格査定マニュアル」不動産流通推進センター)。

価格査定の表紙

不動産流通推進センターでは査定の考え方を作っています。

ほとんどの不動産仲介会社は、こういった公的なマニュアルを元に、独自の解釈などを加えて不動産の査定金額を決めます。8月に変更になったのは、土地と中古マンションについてのみですが、それに先立ち、中古戸建て住宅の建物部分についても、2015年に一部改訂になっていました。

不動産を売りたい方や買いたい方が、このような査定内容を詳しく知る必要は無いかもしれませんが、自分が売る不動産、買う不動産が相場なのかどうかを判断する際にも、ある程度は査定内容について知っておく方が損をせずに済みます。このページでは簡単に査定について一般の方が知っておくべきことをお話ししたいと思います。

不動産の査定金額は物品の査定金額と異なり、単なる売却予想金額です

まず最初に理解しなければならないのは、不動産の査定価格は売却予想価格でしかないという点です。物品の査定、例えばブランド品などを買い取ってもらう場合では、査定価格はそのまま買い取り価格になりますから、査定価格の金額が高いか低いかは、そのまま売れる価格の差になります。

車の査定

車の査定であれば、査定金額がそのまま下取り価格になるかもしれませんが、不動産の査定金額は単なる売却予想価格です。

しかし、不動産の査定価格は、その価格で売るべく売り出しをかけるだけであって、最終的な売却金額ではありません。不動産仲介会社によっては、売却依頼が欲しいがために、相場よりも高めの査定価格を付ける事もあります。高めの査定価格を付けたからといって、高めの価格で売れるとは限りません。限らないどころか、根拠なく付けた高値では買い手が現れず、却って販売が長期化したり、更には安く買い叩かれる可能性もあります。

どのような査定を行うのかと、どのような売り方をするかは別物です。最近では高めの査定が付きます、という不動産会社の広告も見ますが、それが本当に皆さんのプラスになるかどうかは慎重に考えなければなりません。

査定マニュアルには国の意向が反映されますが、相場が追随するかどうかは不明です

さて、査定マニュアルの変更についてです。傾向として、中古の戸建住宅の建物部分の評価が高くなるように条件が変更されているようです。これは、今後中古住宅の流通を増やしていきたいとする国の意向が反映されているからではないかと思います。

戸建住宅の価格は、部位毎に細かく計算されるのですが、その内訳は改正前と改正ごとでは大きく変わっています。比較表を作ってみましたのでご覧ください。

部位別価格構成比

新旧の戸建住宅価格査定マニュアルからふくろう不動産が作成

マニュアルの新旧では、項目が少し異なりますが、それを強引にまとめたのが上の表です。違いは歴然で、改正後のマニュアルでは構造に関する部分の比率が大きく上がっており、他の要素はすべて低くなっています。

今後は戸建住宅の建物部分はより構造体を高く評価したいという考えの表れと思われます。中古住宅では設備や内装よりも躯体は損傷が少ないので、より高い価格が付きやすくなります。しかし問題なのは、この評価方法が今の現状を表しているか、そして今後の評価方法として定着するかどうかです。

不動産の売買は最終的には売り主と買主の合意で決まります。売り主が、あるいは国が今後は建物の構造部分を高く評価します、と言っても買い手側がその価格・価値を評価しなければ結局この金額にはなりません。査定方法を変えたからといって、急に戸建住宅の資産価値が上がる訳ではありません

現在の不動産取引では築20年を超える一戸建ての建物は、限りなくゼロに近い評価になります。値段が付いたとしても、100万円とか200万円という価格しか付かないケースが大半です。高いお金をかけて建物が、これだけ短期間に価値を下げるのはおかしいのではないか、と多くの人が考えています。少なくとも、国と売主はそう考えています。

ですので査定内容がより建物重視に代えたいという意図は分かります。ただ、この査定内容の変更によって、今後建物価値が高く評価されるようになるかどうかは分かりません。私見では、ここ数年では効果は上がらないだろうと思っています。

政策で経済的な状況を変えるのは簡単ではありません。これが買い手にメリットがある政策であればともかく、単に計算方法を変えただけでは、実際の市場の感覚を変えるのは難しいと思います。

建物の構造

建物の構造を高く評価する方法に変わりましたが、市場が付いていくかどうかは別問題です。

私の意見としては、築20年以上の戸建住宅の価値を上げたいのであれば、まずは築20年以上の建物であっても住宅ローン減税を使えるようにするのが先だと思います。今でもいくつかの条件を満たせば住宅ローン減税が使えますが、実際にはその条件を満たすのは簡単ではありません。

ローン減税が使えるのであれば、買い手にもメリットが出るため、古い築年の建物を買っても問題ないと考える人は増えると思います。このような施策抜きで、査定内容だけ変えても、中古住宅の価格に与える影響は少ないと思われます。

査定で建物の価値が上がるのではなく、売り方がうまくなっただけです

査定価格マニュアルの変更により、売却価格が上がったのではないか、という記事もあります。最近ではsuumoジャーナルでそのような内容の記事がありました(「一戸建ての新しい「売却査定」、建物の価値は高くなる?」suumoジャーナル)。

ですが記事内容を読むと、これは査定のやり方が変わったから高く売れた訳ではありません。建物検査(インスペクション)を受けているとか、瑕疵担保保険に加入しているという点をうまくアピールできたために、高く売れたと思われます。査定内容がどうというよりも、売り方がうまいと言えます。

検査済み建物のイメージ

最初から建物検査済みで瑕疵担保保険も付いている建物であれば、買う方も安心です。

回復工事目安価格表やリフォーム計画書をセットにして売るという方法もよく出来ていると思います。中古の住宅では瑕疵担保については免責として、その分建物価格はタダ同然の価格で売るという今までのスタイルとは違う売り方を提案できています。

当社:ふくろう不動産は不動産を買いたい人の代理人として活動していますが、最初から検査済みの建物で保険も付いているとなれば、より安心してお客様にお勧めできます。

これまでの瑕疵担保免責の建物であれば、買い手のお客様に検査料や保険料を負担してもらわなければなりませんでしたし、売主さんにそういった交渉を行う手間も結構大変でした。

最初から保険が付いているという事が分かれば、築20年以上の建物であっても住宅ローン減税が使えますから、その分を踏まえて、金銭的な提案もできます。

査定方法を変えるという小手先的なものではなく、きちんと保証や保険を付け、買い手にメリットが出るような提案であれば、その分価格が上乗せされても納得はしやすくなります。査定とは関係なく、このような売り主が増えてくれれば、買い手側も助かりますので、査定内容の変更をきっかけに、売り物件の建物内容が分かる売主が増えてくれれば良いと思います。

資産を失わないためにも不動産価格について詳しくなりましょう

他にも査定内容で昔と変わった点がありますので、その内容については今後随時説明していきたいと思います。査定の基本的な考え方については「2-05-03.マンションの相場を知るために査定内容を学びましょう」のページでも説明していますので、こちらの記事も読んでみてください。

こういった査定内容を知る事で、土地や戸建住宅、マンションの相場についてより理解が深まります。もちろん査定内容を知らなくても、不動産の売買はできます。ですがその場合、割高な物件を買ったとしても、その物件が割高だったと気が付くのは、20年後や30年後という事もあります。

一見他の物件と比べ割安だったと思って購入した物件は、実は何らかの悪い要因があって安いという事がよくあります。しかしそれは実際に売る段階にならないと何が悪い要因だったかが分かりません。査定内容を予め知っておくことで、悪い要因、言葉を変えれば資産価値を落とすような要因として何があるのかを知る事で、割高の物件を間違って買ってしまう事を防ぐことができます。

繰り返しますが、購入時には買った不動産が割高だったのかどうかの判断は付きません。お買い得な物件を買ったと思っていても、実は資産価値の低い物件を買っているという事もあります。最終的に損をしないためにも、ぜひ査定内容について、一度調べたり、営業マンに聞いたりしてある程度は詳しくなる事をお勧めします。

勉強のイメージ

査定についても勉強しないと結局は損をします。

当社:ふくろう不動産では、購入希望のお客様が買おうとしている物件について、これはいくら位が相場だと考えると毎回意見も付けて出しています。その意見が間違っていることもあると思いますが、一方でなぜこの金額だと考えるのかの根拠も付け、その理由も踏まえて最終的にお客様にいくらであれば購入しても良いかの判断をしてもらうようにしています。

当社:ふくろう不動産はどのような会社なのかについては「ふくろう不動産とは」のページをご参考に、ご意見やご質問がある方は「お問い合わせフォーム」をご利用の上、ご連絡ください。