年収494万円の方が3348万円の住宅ローンを組むのは無理が無いと思いますか?
先日最寄りのスーパーにあったフリーペーパーを手にしたところ、年収と家についての調査結果について書かれた記事がありました。これは2017年から2018年にかけて、新築マンションを購入した方々のデータのようです。
調査データは年収ごとに4段階に分けて、各々の平均物件価格や借入額の平均等について書かれていたのですが、その内容は当社が考える安全側の予算とは大きく異なるように感じました。そこで今回は、記事内にあります購入者データ等を見ながら、私が考えたことをお話したいと思います。
雑誌はSUUMO新築マンションの千葉県・茨城県南版です
今回参考にしました雑誌(フリーペーパー)は、SUUMO新築マンションです。
不動産は高いものですので、購入前には様々な方法で情報を取得される事をお勧めしています。個人的に1番お勧めしたいのは書籍ですが、それなりの冊数を買いそろえようと考えた場合、費用が掛かる点が難点です。もちろんかけた費用以上の価値はあると私は考えていますが、だからと言って無制限に費用を掛けられる訳でもありません。
書籍と比べますとネットの情報や今回のようなフリーペーパーはタダで情報を手に入れる事ができますので、書籍と併用するには悪くないと思います。ただ、雑誌やフリーペーパーは広告主からの出資で成り立っている媒体ですので、その分はある程度差し引いて読まなければなりません。
今回の記事が広告主に沿っているかどうかは分かりませんが、これだけの年収の人がこの位の価格の物件を買えるんだ、と簡単には考えない方が良いと私は感じました。この話をもう少し詳しくお話したいと思います。
感覚的には住居費の割合が高いように感じます
あくまでも私個人の意見ですが、この雑誌に掲載されている支払い事例は、年収の割に支払額が高いと感じました。いくつか例を出して説明します。
例えば年収600万円未満の方の購入者データは下記のようになっています。
・平均年収 494万円
・物件価格平均 3,848万円
・借入額平均 3,348万円
・毎月返済額 95,610円
・ボーナス返済額 137,488円
と、なっています。
気になるのは年収と借入額との関係です。個人的には年収500万円未満で3,300万円以上の借り入れは借入額が少し大きいのではないかと思います。
年収が仮に500万円だとしますと、所得税や住民税、社会保険料等を引いた手取り額は年間400万円位でしょう。ボーナスが年間4か月と仮定しますと、400万円を16か月で割る事になりますので月々の手取り額は25万円、年2回のボーナスは1回あたり50万円となります。
上記の例ですと、返済額が9.5万円、これに管理費と修繕積立金を合計2万円と仮定しますと、月当たりの支払いは11.5万円になります。車を持っていれば更に駐車場代が上乗せされます。仮に車無しだとしても、11.5万円の支払いは手取りの46%に当たります。住宅以外の生活費は残りの13.5万円となりますが、楽に生活できる、とは言えない額なのではないでしょうか?
独身の1人暮らしであれば充分かもしれませんが、家族持ちには厳しい設定額であるように感じます。単に年収に対する支払い比率を見ますと28%近くという事で問題ないと思われるかもしれませんが、実際に数値を見ますとなかなかに厳しい気はします。
ちなみに上記の支払いパターンを、全期間固定金利1.3%で組んだとしますと、返済期間は28年強となります。この返済期間の間に収入が大きく上がれば問題ないでしょうが、もしこのままの収入が続いたり、あるいは収入が大きく下がるような事になりますと、破綻してしまう率もそこそこあるように感じます。
またこのローンを変動金利で組んでいる方もいらっしゃるとは思いますが、現状で支払いがギリギリの方が金利上昇にどこまで耐えられるのかも結構不安があります。
もちろんこれは平均データですので、個別に見れば問題の無い方も多いことでしょう。ですが平均でこの数値が出ているという事は、一定の率でリスクのある借り入れを行っている方も多いのではないかと感じられました。
参考事例を見て不安を感じるのは私だけでしょうか
先程は平均データから考えてみましたが、平均とは別にケーススタディが4事例載っています。雑誌社的には良い事例という事で掲載していると思うのですが、こちらも個人的に大丈夫かなと感じられるものがあります。
ケーススタディの1つに下記の事例があります。
・世帯年収900万円(夫600万円、妻300万円)
・借入額4,670万円(35年返済)
・返済額 12.7万円/月(段階式固定金利)
・ボーナス返済 0円
というものです。
世帯年収を900万円と考えますと年間の返済比率は17%ととても低い率に入っています。返済期間は35年と長いのですが、購入者は26歳という事を考えますと、60歳までには完済できそうという計算も成り立ちます。この点をみると全く問題が無さそうに見えますが、そうとも限りません。
まず世帯年収は高いのですが、もし子供が増え奥様が働けなくなり、夫だけの収入で返済しようと考えた場合、返済比率は25%強まで上がります。600万円の年収の方の手取りを470万円位と考えますと、ボーナス4か月計算で逆算すれば月々の手取りは30万円弱になります。月当たりの支払いは12.7万円に加え管理費と修繕積立金を合計2万円と考えますと、14.7万円となり、住居関連にかかる費用はやはり約半分となります。
今や共働きは当たり前と考え、ダブルインカムを前提に予算組するのはおかしくないのかもしれません。一方で子供がいる家庭の場合、どの位仕事に制限がでるのか、事前に判断することが難しかったりします。今回の事例は奥様が現在育児休暇中との事なのですが、復職した場合に実際にどういった影響がでるのか、まだ分からないままです。そしてどうなるか分からない状況にも関わらず、ダブルインカム前提での予算組みをしているという点に、若干のリスクが入ってきます。
もちろん私はこの方の状況を詳しく押さえている訳ではありません。実際には、一時的に奥様が仕事ができない状況になったとしても、問題ないと思えるくらい十分な蓄えがあるのかもしれませんし、仕事の種類が在宅勤務可能といった融通が効く仕事なのかもしれません。ただ、そういった背景が分からないまま状況だけを聞くとそれなりにリスキーであるように感じます。
もちろん最終的にどの位の物件を買うのか、ローンをいくら組むのかについては、本人の判断で周りがどうこう言う話ではありません。ただ当社の感覚からすれば、皆さん意外と多額のローンを組んでいるなと感じましたので、意見を述べてみました。
この記事の内容の一部を動画でも説明してみました
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