子どもがいる家庭で家づくりを考えている人に読んでほしい本です
住まいは住んでいる人の精神に多少なりとも影響を与えます。影響を与えるのは、間取りであったり、断熱性や風通しであったり、広さや高さやデザインだったりと、多くの要素によって、住んでいる人に何らかの影響を与えます。
特に家の間取りが住む人に与える影響、特に子供に与える影響については、様々な意見が出されています。これらの意見の中には、本当にそうだろうかと疑問に感じる意見も多くありますし、建設会社のセールストークの1つに過ぎないというケースもあります。
では、住まいが住む人に与える影響について、何も考えなくても良いのかと言えば、そうでも無い気がします。そこでこのページでは、間取りや使い方が住んでいる人にどう影響を与えるかと言う事について書かれた「家族の絆をつくる家(平凡社:刊)」という本を紹介したいと思います。
子どもの引きこもりと間取りの関係を考えた数少ない本です
この本の1番良いと思われるところは、子どもの登校拒否や引きこもりと、家の間取りとの関係性を研究して発表しているという点です。
例えばこの著者の研究によれば、個室が子供を登校拒否にするという考えは間違っているとの事です。鍵のかかる個室を与えているから、子供が登校拒否や引きこもりになるんだという意見に対し、著者はその順序は逆であると主張されています。
著者の調査では、初めから内側で鍵をかけられる個室にこもる子供はおらず、登校拒否になり、個室に引きこもるようになってから、自分で鍵を買ってきて取り付けるようになるとの話でした。個室が無い場合でも、家具でバリケードを作ったり、押し入れに閉じこもったりするため、個室が無いとしても似たような症状になるとの事です。
そして子供の問題と子供の部屋について考える時には、子どものテリトリー形成力の発達を考えなければならないと主張しています。この子どものテリトリー形成能力についての話は、この本の全体を通すテーマのようになっており、色々と考えさせられます。
子どものテリトリー形成能力についての話は知っておくべきです
子どものテリトリー形成能力とは、自分で自分のなわばりをつくる能力の事です。この能力がうまく発達しないと、問題が起きたり、子どもの自立がうまくいかなくなるとしています。そしてこの本の大半は、このテリトリー形成能力を獲得させるためにどうしたらよいかについて、述べられています。
この理論が本当に正しいかどうかは、私には判断ができません。ただ、そうかもしれないと思わされる部分はありますし、実例も多数取り上げられていますので、この理論に当てはまる家庭もいるのだろうと思います。
この本の話が家づくりや間取りの問題とどれだけ関連性があるのかは、よく分かりません。ですが、このテリトリー形成能力とはどういったものか、重要性はどうなのかを考えるのは大事な事だと思いますし、場合によっては間取り作成にも影響が出る事はあると思います。
一方でこの話がすべての事例に当てはまるのか、子どもの不登校や引きこもりの原因をすべて説明できるかと言えば、そんなことはないと思います。不登校や引きこもりの原因は、この著者が考えているよりもたくさんあると私は持っているからです。
個人的な話のため詳しくは言えませんが、私も不登校の子どもを持つ父親という役割を3年ほど経験しました。その経験から、この部分は当てはまらない、という内容も結構あります。
ですが一方で全く参考にならないかと言えば、参考になる部分はありますし、実際にこれらの事例に当てはまる家庭もあるでしょう。この本の使い方として、参考になる部分は利用し、納得がいかない分はいち意見として聞き流すという事でも良いのではないかと思います。
間取りの参考と言うよりは家の使い方の参考として読む本だと思います
この本を読んで、すぐにこういった間取りにしようという考えが出てくるものでは無いでしょう。どちらかと言えば、家の使い方を考えさせられる本だと思います。
ただ、注文住宅を建てる方は読んでおいて損は無いと思います。直接的に役に立つものではないかもしれませんが、このような考え方を知っておくことで、部屋の使い方、子どもへの接し方など、何らかに良い影響が出せるかもしれません。
もっと直接的に間取りを考える際に役に立つ本が欲しい、という事であれば「住まいの解剖図鑑(エクスナレッジ:刊)」という本の方が役に立つでしょう。
ただ、だからと言って「家族の絆をつくる家」の否定をしているのではありません。現実的な考え方を表す間取り本と、観念的な見かたからみた間取り本の両方を読むことで、家づくりに対する考え方がより深くなると思います。
動画の中でもこれらの本について述べています
当社の動画でもこれらの本について簡単にお話ししています。その動画がこちらです。
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