断熱性アップは本当に経済的な元が取れるのでしょうか

新築を検討する際、「断熱性を上げれば光熱費が大幅に安くなり、初期投資の元が取れる!」という話をよく耳にします。特に住宅業界の関係者からは、ランニングコストの削減効果を強調する声が多いようです。

しかし、果たしてその主張は本当に正しいのでしょうか?今回は、初期費用と光熱費削減効果の経済的な側面に焦点を当て、高断熱化のメリットとデメリットについて、現実的な視点から深掘りします。

経済性だけで見ると「元を取る」のは難しい?

まず結論から申し上げます。こと「ランニングコストの削減」という経済的な側面だけで見ると、初期投資の元を取るのはなかなか難しいというのが当社の見解です。(前提として、今回は首都圏を中心とした「6地域」の断熱等級を基準に考えます。)

【試算】断熱等級4から5へのコスト回収期間

国土交通省のデータによると、断熱等級4から等級5に向上させた場合、年間で約46,000円の光熱費節約効果が見込めるとされています。

一方、等級を向上させるための初期費用は、おおよそ100万円程度のコストアップが発生する可能性があります。

この数値から回収期間を考えますと、単純計算でも21.7年かかるという事になります。

さらに、この100万円を住宅ローンで借り入れた場合の金利負担を加味すると、回収期間は25年程度になることが予想されます。建物価値が限りなくゼロに近づく築25年というタイミングでようやく元が取れる、という現状を考えると、「すぐに元が取れる」という表現は適切ではないでしょう。

等級5から6への壁はさらに高い

等級5が標準化しつつある現在、さらに上の等級6を目指す場合、初期費用は等級4から5へのアップ幅(100万円)を大きく上回り、150万円〜200万円以上になる可能性が高いです。一方で、光熱費の削減効果は、等級が上がるにつれて増加幅が小さくなり、回収期間はさらに長くなると予想されます。

高断熱化の真のメリットは「快適性と健康」

経済的な側面だけを見ると厳しい高断熱化ですが、断熱性を向上させることの真の価値は、ランニングコストの削減ではなく、住む人の「快適性」と「健康」にあります。

1. 部屋間の温度差解消とヒートショックリスクの軽減

高断熱な家では、リビングと廊下、浴室などの部屋ごとの温度差が小さくなります。これにより、寒暖差による体の負担が減り、高齢者にリスクの高いヒートショックのリスクを大幅に軽減できます。これは、金額に換算できない非常に大きなメリットです。

2. 体感的な快適さの向上(輻射熱の低減)

断熱性が低い家では、エアコンで室温を上げても、壁や床、天井が冷たいため、そこから体温が奪われる「輻射冷却」が発生し、寒く感じます。一方、高断熱な家では、壁や床の表面温度が高く保たれるため、同じ室温でも体感的に暖かく快適に感じられます。これは「質の高い暖かさ」であり、住居の満足度を劇的に向上させます。

まとめ:高断熱化は「投資」ではなく「付加価値」

  • 1. 経済性を過度に期待しない高断熱化は、光熱費だけで元を取る「投資」と考えるのではなく、快適な生活と健康への「付加価値」と捉えるべきです。
  • 2. 予算とのバランスが重要これから新築を建てるなら、最低限等級5を目指すのは自然な流れです。等級6や7は初期費用が高額になるため、ご自身の予算に余裕があるか、快適性と健康を最優先するかどうかで、最適なバランスを見つけることが最も重要です。

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