不動産の用語解説007~長期優良住宅とは何ですか
皆さんは「長期優良住宅」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。この長期優良住宅についての制度は、今から8年前、2009年に始まったのですが、現在(2017年)でもそれ程普及していません。
しかし、この制度や長期優良住宅の認定を受けている建物は大変優れていると私は考えています。そこでこのページでは、長期優良住宅について、知っておきたい内容をお話しします。
なぜ長期優良住宅というものを知る必要があるのでしょうか?
この長期優良住宅に関わる法律は、今から8年前、平成21年(2009年)の6月に施行されました。正確には「長期優良住宅の普及の促進に関する法律(出典:国土交通省)」と言います。
法律が出来てから8年経ってはいますが、その普及はあまり進んでいません。この数年を見ても、新築住宅全体に対する長期優良住宅の普及率は25~30%程度ではないでしょうか。
この長期優良住宅は、建物性能やその名の通り長期間の耐久性まで考えますと、大変優れた建物であると私は思っています。本当に長期間住むことを考えますと、当初の建設費用が高かったとしても、利用期間トータルで考えれば安くなる可能性が高く、なぜこんなに普及率が低いのか、疑問にも感じます。
あくまでも私個人が感じる、普及しない理由として、
1.一般の方が長期優良住宅の存在を知らない
2.家を建てる建設会社が安く建てるために、認定を取らない
3.長期優良住宅を建てられるノウハウがない建設会社が未だに数多くある
という事ではないかと思っています。
特に3.の長期優良住宅を建てる事が出来ない建設会社が多いという事は知っておくべき事です。長期優良住宅の建設は、一定の基準を守れば建てる事が出来ますので、技術的にとても高い技能が要求される、と言うものではありません。にもかかわらず、長期優良住宅を全く建てない、という会社がたくさんあります。
長期優良住宅を建てない会社の主張としては
・お客様から要求されない
・建設費が余計にかかる
・今までの建物であっても問題ない建物が建てられるのだから、そもそも必要ない
というものがあります。
しかし、これらの主張が本当に正しいかどうか、疑いを持って確認する必要があります。
・お客様から求められなかったのは、実際にお客様にきちんとこの話をして、選んでもらったのかどうか
・建設費については長期優良住宅の認定を取った場合と取らない場合の費用を説明したのかどうか
・今までの建物と長期優良住宅では機能がどう異なるのか
といった内容を、建設会社が丁寧に説明し、その上でお客様が決めるのであれば何も問題は無いでしょう。
ですが、実際には、こういった制度の説明をすることなく、話が進められるケースが多いように感じます。価格の勝負になり易い建売住宅であればまだしも、注文住宅や建築条件付き住宅であれば、本来であれば長期優良住宅の説明を行った上で選んでもらうべきだと思います。
そして皆さんが気を付けなければならないのは、建設会社の主張が、本当に正しいものであるのか、あるいは単に長期優良住宅を建てるだけの技術がないから、そう主張しているだけなのかという点です。
大変残念な事に、今でもレベルの低い建設会社や欠陥住宅を建てる建設会社はそれなりにあります。長期優良住宅を建てる事が出来る事がイコール良い会社であると限るものではありませんが、少なくても新しい技術について積極的に取り組んでいる会社だと思われます。
背景として、建設会社に悪意があるよりは能力がないために欠陥住宅が出来てしまう例が多いと思いますので、この観点から言えば、長期優良住宅を作る事が出来る、あるいは何軒も建てている、という事であれば、ある程度の施工レベルは満たしているであろう、という予測も出来ます。
つまり欠陥住宅を建てない為にはレベルが高い建設会社に依頼する必要がある訳ですが、そのレベルがあるかどうかの判断材料の1つとして、長期優良住宅を建てたことがあるのかどうかを確認するという方法が使えるという事になります。
あくまでも方法の1つですし、可能性の話でもありますが、欠陥住宅を建てない為に、いくつも安全性を確認できる手段を持っておくに越したことはありません。そのためにも、長期優良住宅については、ある程度知っておくべきだと私は思っています。
公に認められた建物性能が期待できます
長期優良住宅を必要ない、と主張される方の意見の中に、「ウチのこのシステムで充分に耐震性を維持している」ですとか「今まで建てた建物で問題になったことは無い」という話が良く出てきます。
ですが、それら耐震性や問題の有無については本当にどうなのかを確認する方法は一般の方にはありません。これが耐久性についてであれば、プロであっても判断することは簡単ではありません。
それと比べて長期優良住宅など、国が認めたシステムであれば、建物を建てた会社の自称のシステムよりは信頼性が高くなります。もちろん全てのシステムに抜けが無いという事はありませんから、長期優良住宅であっても問題になる部分はあるでしょう。それでも、よく分からない構法やシステムと比べますと、それなりに信憑性のある制度だと思います。
ただ、この長期優良住宅のどの部分がどの位のレベルなのかは分かり難いと思いますので、もう少しこの制度の内容を見てみましょう。
耐震等級は2以上で、最高等級である3ではありません
長期優良住宅は住宅性能表示と似た位置付けにあります。正しく言えば、住宅性能表示のいくつかの項目で一定以上のレベルにあるという内容が決められています。
耐震性についても、この住宅性能表示の耐震等級2以上の性能が求められています。耐震等級2とは建築基準法で認められた耐震性能よりも25%以上強い建物だと考えてください。この25%強いという部分は構造壁の強さで語られる事が多いのですが、実際にはもう少し細かなチェックがあります。例えば建築基準法では床の剛性は考慮されない(一般の木造住宅である4号建築物の場合です)のですが、耐震等級2を取るためには床剛性も計算されます。
少し細かな話になりますが、この耐震等級2は耐震等級の1番強いレベルではありません。耐震等級は建築基準法の建物より50%強いと言われる耐震等級3というレベルもあります。
実際に長期優良住宅を建てている建設会社では、長期優良住宅の認定を受けつつ、更に耐震等級で3の認定を取っているという会社もあります。私見ですが、戸建住宅で長期優良住宅の認定を取れる会社であれば、耐震等級3の建物を作る事も、それ程難しくなく建てられると思います。
ちなみに、他の住宅性能表示との組み合わせでは、すべて最高等級が指定されているのですが、なぜか耐震等級だけは最高等級ではなく、真ん中のグレードである耐震等級2となっています。
なぜそうなったのかの理由はもちろん分かりません。勝手な予想では、マンションで耐震等級3を取るのは難しいため、マンションの長期優良住宅を普及させるために、わざわざこの分だけグレードを落としたのではないかと勘繰っています。あくまでも私の勝手な予想で根拠は全くありませんが。
劣化対策と維持管理性と省エネ性は最高等級です
耐震以外では、劣化対策や維持管理性、省エネ対策は住宅性能表示の中の最高レベルを採る事が義務付けられています。詳細については、各々の項目を皆さんご自身で調べて頂きたいのですが、細かな話とはいえ、重要な項目だったりします。
維持管理等の規定は、1つ1つは本当に細かな部分ですが、こういった内容をきちんと押さえておくかどうかで、後々のメンテナンス性に大きな影響が出ます。維持管理では配管の設定が中心となるのですが、雑な建設会社ではこの配管の設定も昔ながらの雑な施工が行われる事もあります。しかし、維持管理で最高等級の3を取るためには、細かな部分にも配慮した配管設定をしなければなりません。
省エネ性についても、最高等級の4が義務付けられています。もっとも断熱性については今は技術が進歩しており、高断熱の住宅を作る事が出来る工務店から見れば、省エネ等級4を取る事はそれ程難しい事では無いでしょう。一方で断熱についてはほとんど知識が無い建設会社も多数ありますので、こちらも普通に認定を取っている会社に依頼する方が安心できます。
長期優良住宅の取得で税金等のメリットが受けられます
長期優良住宅の取得の1番のメリットは長期的に見て、得をする事が多いという点ですが、短期でもいくつかメリットがあります。具体的には
・住宅ローン減税の枠が広がる
・不動産取得税の基になる控除額が増える
・登録免許税が若干安くなる
・固定資産税が安くなる
というメリットがあります。
ただ、制度に文句を言うつもりはありませんが、これらの効果はそれ程大きなものではありません。住宅ローン減税の枠は広がるため、高収入の方はメリットは大きいのですが、一般的な収入の方ではその枠を使い切るのは簡単ではありません。
不動産取得税についても、控除額は100万円差ですし、一般の住宅の場合は取得税がかからないケースもそれなりにあり、あまり大きなメリットにはならないケースが多いと思われます。
登録免許税は安くなりますが、保存登記で0.05%分ですので、こちらも額は大きくありません。
固定資産税の免税も減額される期間が2年ほど長くなりますので、もちろんメリットではありますが、金額はやはり大きなものではありません。
税金のメリットは、全く無いよりはそれが数万円単位でもメリットになりますので文句ではありません。ただ、税金のメリットよりも、建物性能の向上や、長期間使える事の経済的なメリットの方がはるかに大きいと思います。
今回は長期優良住宅の概略を簡単に述べただけですので、詳しく知りたい方は「住宅性能評価・表示協会」のサイト等を見て内容について確認される事をお勧めします。
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