不動産は変えられるものと変えられないものを明確に区別しましょう
不動産選びには、考えなければならない要素がたくさんあります。立地や広さ、きれいさ、新しさ、価格、外装や内装、設備の充実度合いなど、様々な要素についてチェックし、検討物件を比較しなければなりません。
検討しなければならない要素があまりにも多いため、混乱してしまう事もよくあると思います。混乱しないための方法はいくつかあります。要素に優先順位を付けるという方法が一般的ですが、実はこの優先順位を付けるのも簡単ではありません。頭で考える優先順位と、実際に物件を見て思う事が往々にして違っていることもよくあるからです。
要素をジャンルごとにまとめる事で、優先順位は付けやすくなりますが、そのジャンルとして、変えられるものと変えられないものに分類する、という方法は考えをまとめるのに有効だと思っています。このページではこのお話を少ししたいと思います。
何が変えられるもので変えられないものなのかを理解しましょう
まずは、不動産で何が変えられるもので、何が変えられないものなのかを知っておきましょう。
変えられないものの代表は立地です。最寄駅からの距離は何年経っても変わることはありません。また、周辺と比べて標高が低い位置にある場合も、何年たってもその土地の標高が高くなることはありません。液状化しやすい土地はずっと液状化しやすいですし、水害に合いやすい場所は、公共の対策工事等が無ければずっと水害に合いやすい土地です。
面積や形も変えられないものに入ります。マンションの専有面積は何年経っても広くなることはありません。戸建住宅の不整形な土地も、ずっと形が変わることはありません。狭小住宅も何年経っても広くなることはありません。
周辺環境も基本的には変えられないものに含まれます。家の前に大きな建物が建っており、日当たりが悪いとしても、これも将来日当たりが良くなる可能性は低いでしょう。前面道路が狭く、車が出しにくい場合も、将来道が広くなることはあまりありません(最初から拡張計画がある場合は別です)。
そして変えられないものについては、将来に渡って不満が出ないかどうかを考えなければなりません。一生住むかもしれない場所に、我慢ができないものがあり、それが変えられないとなると本当にストレスが溜まります。前面道路が狭く、車が出し入れしにくい事が我慢できない場合、一生そのことが続くことが耐えられるかどうかを考えなければなりません。
原則として変えられるものは、マンションであれば専有部分の内側の内装や設備のみ、戸建住宅であれば、建物についてのみです。実際にはマンションの専有部分でも管理規約等の制限で変えられなものもありますし、戸建住宅でも地域のルールや法律によって変更できないものもあります。
変えられるものは費用とのバランスで決めます
変えられるものの代表的なものは建物の内外装や設備でしょう。部屋の壁紙などはそれほど費用をかけずに交換する事が可能です。床材も壁紙よりは高くなりますが、床の下地などが問題なければ、床材の交換もさほど高額ではありません。
戸建住宅の外装も費用はかかりますが、塗り替えや交換が可能です。屋根も同様で、塗り直しや葺き替えなどで新しくすることが可能です。つまりこれらも変えられるものです。
設備は目を引く部分です。住宅設備が新しいと、その分見栄えが良く、良い物件であるように感じやすくなります。ですが、大半の設備は交換が可能、つまり変えられるものです。トイレはサイズさえ合えば最新のものに交換が可能ですし、お風呂もユニットごと取り換えることができます。
キッチンも当然新しいものに交換することで、見た目や機能を大きく変えることが可能です。これらはすべて変えられるものに入ります。
ただし、変えられるからと言って簡単に考えてはいけません。交換は可能ですが、交換には当然費用がかかります。お風呂の交換はユニットバスのグレードにもよりますが、120万円近くはかかる事でしょう。キッチンも安いものでも数十万円、少し高いものになると、100~200万円はすぐにかかってしまいます。
つまり変えられるものについては、変えるときの費用とのバランスで考えなければならないという事です。例えば内装や設備はボロボロですが、構造体としても建物がしっかりしていた場合、内装や設備の交換費用よりもその物件が相場よりも安ければ十分元が取れるという事になります。
お風呂やトイレ、キッチンと壁紙がボロボロであっても、その不動産の価格が相場よりも500万円以上安いという場合は、リフォーム費用が500万円よりも下回るかどうかを考え、問題が無ければその物件を選ぶという考えもありだと思います。
「ゴミ屋敷は実はお買い得かもしれません」のページでも説明しましたが、内装や設備をリフォームした後の物件は、その費用以上に物件価格が高いということがよくあります。そう考えますと、見た目がダメでも、変えられるものにのみ問題がある場合は、十分検討できると考えても良いと思います。
技術的には変えられても、現実的には変えられないものもあります
もっともこの変えられるものには、技術的には変えられるものでも現実的にはほぼ変えられないと思われる部分もあります。変えるための費用があまりにも高額の場合です。
例えば中古の戸建住宅で、構造に問題がありそうな物件は、技術的には対策が可能ですが、経済的に割に合わないケースが多いと思われます。基礎にひびが多く、問題がありそうな戸建住宅は、基礎を作り直せば問題はありませんが、基礎の作り直しまで考えると、新築を建てる場合と費用があまり変わらなくなってしまいます。
実際のところ、中古住宅でそんなに費用をかけるのは効率的ではありません。本来中古住宅は経済性が優れているというメリットがあるはずですが、変えられるものを変えた結果、新築同様の費用のかかり、かつ性能は新築よりも劣るという事になった場合、何のメリットがあるのかよく分からなくなります。
私見ですが、中古住宅のリフォームでかけて良い費用は上限500万円位までではないかと思っており、これ以上の費用がかかる物件であれば、別の物件を探す方が、トータルでの費用が安く済むのではないかと思っています。
また、中古マンションの場合は、技術的には変更可能でも、管理規約などの問題で変えられない場合や、共用部分との兼ね合いで変えられないというものもあります。
例えばマンションの床材では、フローリングを不可としているマンションがありますし、仮にフローリングOKでも一定以上の防音性を満たしたフローリングでなければ不可としているマンションもあります。
また、お風呂の位置を変えたいとしても、パイプスペースとの位置がうまく合わなければ、その場所にお風呂を移動することができない事もあります。また騒音上の配慮から、隣室や下階の寝室の位置にお風呂を設置しにくいなど、周辺住戸との兼ね合いで、お勧めしにくいというケースもあります。
このあたりはケースバイケースですので、その不動産の購入前に、信頼できる不動産会社に何が現実的に変えられるのかをきちんと確認した上で、購入するかどうかの決定を行うべきだと思います。
変わらないと思っていても、変わってしまうものもあります
また、変わらないものと考えていたものが、将来変わってしまうという事も時々あります。代表的なものは周辺環境で、閑静な住宅地と思っていたものが、すぐ近くにお店が出来て、うるさい場所になってしまうという事もあります。これは、都市計画図などを事前にチェックし、将来住んでいるエリアで何ができる可能性があるのかを調べておく必要があります。
逆に買い物施設が近くに多く、便利だと思っていたところ、お店がことごとく撤退して不便になるという例もあります。これは街の将来の発展度合を、ある程度は予測して考える必要があります。
バス停なども変わってしまう代表例です。電車の駅とは異なり、バス停は時々なくなる事があります。そのルートの乗員数が少なくなり、その路線自体が無くなる事があるからです。バス停自体は無くならないまでも、本数が減るという事はよくあります。最初はバスの本数が多く、便利だと思っていたところが、便数が減り、急に不便だと感じることもあります。
最近は小学校や中学校の学区ですら変更になることもあります。子供の数が減っていることを受け、小中学校の統廃合が進んでいるからです。不動産の購入当初は小学校が近いから良いと思っていたところ、小学校が統合され、新しい小学校がずいぶん遠くなったという事も考えられます。
これらは将来の話ですので、不動産購入当時にこういった事を想定するのは難しいかもしれません。ですがある程度は予想することも可能です。不動産の価格の傾向などを見ていきますと、このエリアは将来寂れていくのでは、と思われる地域はたくさんあります。そう感じられる場合には、実際に○○が無くなったらどうするのか、等をシミュレーションして、本当にそのエリアでも問題が無いのか、最悪の場合でも耐えられそうかなどを考えなければなりません。
本当に色々な切り口で不動産を考えなければなりません
このページでお話ししましたのは、不動産の選び方の考え方のほんの1つです。不動産選びは購入者の価値観や経済状況によって、何が良いのかの判断が大きく異なります。自分に最適と思われる不動産を選ぶためには、本当に色々な切り口で考えなければなりません。
何となく勢いで家を購入し、後で後悔する事無く、色々な切り口で考えた上で、不動産選びを楽しんで欲しいと思います。
このページの話の一部を動画で説明してみました
この記事でお話ししました内容を動画でも解説してみました。その動画がこちらです。
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