郊外のマンションが資産価値を維持し難いのは建物比率が高いからです

マンションは立地が9割という言葉があります。本当に見なければいけない項目の内、立地が9割も占めるかどうかは疑問ですが、立地が重要であるという点は間違いありません。

この立地をどう考えるかは人によって異なりますが、戸建であれマンションであれ、土地と建物の価格や価値が維持できるかどうかを考える事は大変重要です。そして理論だけで考えますと、郊外のマンションは資産価値が維持し難いという話になります。

これはあくまでも理屈だけの話ですので、実際には例外となる事例もたくさんあるのですが、この記事では簡単に理屈について考えてみたいと思います。

資産価値とは売れる価格のことです

この資産価値の維持という話を考える前に、資産価値の定義付けをしなければなりません。人によって定義は異なると思いますが、当社の定義では「その時点の資産価値とはその時点で売れる価格である」としています。

いくらで売れるか

当社の定義では資産価値とはいくらで売れるかと言う価格の事です。

投資系の方であれば利回りやIRR等別の定義もあると思いますが、居住用の不動産に関しては基本的にこの定義で問題は無いと考えています。そして資産価値が落ちないという物件は、購入時と同じ価格で売れる物件と定義できますし、資産価値が落ちにくい物件とは、購入時の価格と売却時の価格の差が小さいもの、と定義できます。

○○のマンションは中古でも高い価格が付いている、という話がありますが、この定義で考えますと、それだけで資産価値が維持できているとは言えません。購入時の価格がそれ以上に高ければ、資産価値が維持できたとは限らないからです。

さらに、この資産価値が維持できているかどうかは個別性がたいへん強いものです。同じマンション内であっても、この部屋は大きく下がっているけれども、この部屋は下がっていないという事もよくあります。

特に新築マンションを購入された方は、どの部屋を買うかで将来の価格に大きな差が出るケースがより多く出てきます。なぜ部屋ごとに価格の落ち方に差があるかと言えば、新築マンションと中古マンションでは値段の付き方が異なるからです。

新築マンションは、同じマンションの他の住戸との比較で価格が決まる事が多いのに対し、中古マンションは対象住戸と他の中古マンションの1戸毎との比較で価格が決まります。価格が決まるルールが異なるため、結果として新築の場合の価格差とは違う値段の付き方をします。

このあたりのお話は「新築マンションの価格表は買い手に印象操作を行う事ができます」でも説明しています。実際に自宅マンションを投資の一部と考えるタイプの方は、新築と中古の値段の付き方の差を利用して、新築の中でピンポイントで割安な住戸を選ぶという方もいらっしゃいます。

もっともその割安な新築の住戸の見分け方は簡単ではありません。ある程度は中古市場や中古マンションの値段の付き方に精通していないと分からない事が多いからです。

何にせよ、このページでは、資産価値は購入時と売却時の価格差であるという定義で話を進めたいと思います。

土地は劣化しませんが建物は劣化し、その分価格が下がります

マンションであれ一戸建てであれ、不動産の価格は土地の価格と建物の価格の合計金額です。立地が良いとか利便性が高いとか環境が良いとは結局は土地の価格に反映されますし、建物がきれいであるとかエントランスが豪華であるとか設備が整っているというのは建物の価格になります。

そして土地は年月を経ても劣化しません。経済状況によって土地の価格が上がる事や下がる事がありますが、同じような経済状況であれば基本的には土地の価格はそのままです。

資産計算のイメージ

どう計算するかは難しいですが、建物代は一定の額だけ下がるという考えがあります。

建物代の減り具合はその物件ごとに大きく異なります。この目安金額を考えるのは難しく、例外も多いため一言では言えません。ただ強いて目安を考えるのであれば、一戸建ての場合は面積にあまり関係なく年間72万円程度下がるイメージ、マンションの場合は専有面積1平米あたり1万2,000円位1年間で下がるイメージでしょうか?専有面積70平米のマンションであれば年間84万円位下がるイメージです。

もっともマンションの場合はエリアによる差が大きく、かつここ数年の首都圏のマンションは価格が上がっているため、実際にはこの下がり幅よりも小さいケースの方が多いでしょう。ただそれは建物代が上がったのではなく、土地相当分が上がったために価格の下がり幅が小さいのであって、建物代が下がらなかった訳では無いと私は考えています。

首都圏で立地の良いマンションは希少性が高い事が多いため、土地の価格は下がり難いですし、逆に上がっているケースも珍しくありません。更に言えば、首都圏のマンションは元々の代金に占める土地の割合が高いため、建物代が下がったとしても当初から占める割合が低い建物分が少し下がったとしても、全体の価格の影響は少なくなります。

郊外のマンションは物件にもよるとはいえ、希少性は高くないケースの方が多くなります。そのため、競合物件の数によっては、土地価格が下がる事も多くなります。中古物件で同時期に似たタイプで同じような立地のマンション住戸が売られていれば、そちらとの競合になるからです。

更に郊外のマンションは、最初から土地よりも建物比率の方が高くなっています。建物部分の減額する額は首都圏好立地と同じであっても、不動産の価格全体の率から見れば、より高い比率で価格が落ちる事になります。

だからといって、郊外のマンションが全てダメという話ではありません。こういった状況を織り込んだ上で資産価値を考えれば良いという話がしたいだけです。

建物代はエリアによる差が小さいため、結果的に郊外では建物比率が高くなります

この建物比率が高いという点が、なかなか理解されていないように感じる事があります。そこで、首都圏の好立地マンションと郊外のマンションをパターンで考えてみましょう。

首都圏で6,000万円のマンションと郊外で3,000万円のマンションがあったとしましょう。これらのマンションの土地と建物比率を考えた場合、
首都圏 土地部分3,500万円
建物部分2,500万円(合計で6,000万円)
郊外  土地部分 500万円
建物部分2,500万円(合計で3,000万円)
というケースで考えてみてください。

マンションの建物代

マンションの建物部分の価格の落ち方は場所による差はあまり出ません。

マンションの工事費はエリア毎に若干の違いはあるものの、土地代程の大きな差は出ません。今回は同じ価格として考えてみます。

どちらも専有面積70平米のマンションであると仮定して、建物代が年間で84万円価格が下がると考えてみましょう。そうしますと10年後の各々のマンションの資産価値=中古価格は
首都圏 土地部分3,500万円
建物部分1,660万円
郊外  土地部分 500万円
建物部分1,660万円
となります。合計金額で見ますと
首都圏 5,160万円(当初の86%)
郊外  2,160万円(当初の72%)
となり、落ちている率だけ見ますと、郊外の方が落ちているように見えます。

実際には、建物の落ちている落ち方は同じなのですが、比率で考えますとこのような結果になります。このような背景から郊外のマンションは価格が落ちやすいと言われる訳です。

これは単にパターンを考えただけで、実際には他の細かな要素がたくさん混じってきますので、想定通りに進まないケースも多いでしょう。ですが、このような考え方を1つ知っておくだけでも、マンション選びはどう考えるべきかの参考にはなると思います。

実のところ、この考えはマンションだけではなく、戸建でも似たような考えで計算する事も可能です。建物はこのような考えで計算し、後は市況によって土地価格がいくらになるか、変わっているかを考える事になります。

この考えには恐らく異論も多いでしょう。ですが、頭の中でこのようなシミュレーションを考えるという事は、不動産の価格を考えたり、相場を考えたりする良い勉強になります。皆さんも1度このような考え方で不動産を見てみてください。

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