風通しや通風が悪い住まいだから結露するのではありません
先日とある建築士の方がサイト上で「気密性の高い住宅が増えてきたために結露するようになった」といった趣旨の内容を書いていました。この内容は間違っており、実際には気密性が高いから結露するのではありません。
この断熱や結露については、不動産業界の人はもちろん建築業界の方でも間違った話をされている例を数多く見かけます。更には結露対策としては正しくても、住む人の健康上悪いという対策も良く見かけます。このページでは結露についてと結露対策について、簡単にお話ししたいと思います。
結露は温度が低く、かつ水蒸気が通らない部分で起こります
結露対策を考える前に、なぜ結露が引き起こされるのかについて知らなければなりません。この結露が起こる理由が分かれば、どのような対策が効果があるのか、ある程度は判断ができるようになります。
結露というものは、空気中にある水蒸気が水蒸気のままの状態でいられなくなった時に発生します。違う言い方をしますと、部分的に湿度が100%以上になった状態のときに結露します。
ただこの言い方では分かり難いでしょう。もう少し細かく解説します。
空気中には一定量の水蒸気が含まれています。そしてこの水蒸気は、空気の温度が何度であるかによって、水蒸気として存在できる量が限られています。例えば気温が22℃であれば、1立方メートルの空気中に含むことができる水蒸気は19.4gです。これが10℃になると、9.4gしか水蒸気を含むことができません。6℃であれば7.3gしか水蒸気を含むことができません。
室内の気温が22℃で湿度(相対湿度)が50%の時には、1立方メートル当たりの空気中には水蒸気が9.7g程あります。しかし、この室温が10℃まで下がると、10℃の空気は9.4gまでしか水蒸気を含むことができませんので、残りの0.3gは水になって空気中から追い出される形になります。この水になる部分が結露です。
実際には部屋のすべての温度が10℃になる訳ではありません。室温は22℃だとしても、窓ガラスが外気によって冷やされ、ガラスの表面だけ10℃になったとしますと、そのガラスに触れている空気の中の水蒸気が、水となってガラスに付く事になります。
冷えているのがガラスである、という点も重要です。ガラスは水蒸気を通さないため、その部分で空気が冷えますと水蒸気は他に行く場所が無いため、その場で結露します。これが障子紙のように、水蒸気を通すものであれば、そして障子紙の向こう側の空気がより乾燥しているのであれば、そちら側に抜けていくだけで結露しません。ガラスや構造用合板などの水蒸気を通さないものが冷えている場合に結露すると考えて頂ければと思います。
気密性の高さと結露の起こりやすさは直接の関係性はありません
このような結露の発生システムが分かっていれば、怪しい理屈に振り回されずに済みます。例えば今の家は気密性が高くなったので結露しやすくなったと主張される方がいます。ですが結露と気密性は、少なくとも直接的な関係性はありません。気密が低い家であっても、室内の空気に十分な水蒸気があり、かつ窓ガラスが単板ガラスなどで十分に冷えていれば、気密性の低い家であってももちろん結露します。
むしろ、気密性の高い家の方が、一般的には結露し難い傾向にあります。直接的な関係ではないのですが、気密性が高い家は計画換気がうまくできている例が多いため、換気が十分に行われるために結果的に結露が起きにくくなっているからです。また、気密を十分に計算している家は、当然のように断熱にも気を使っていますので、結露を起こしそうな場所の温度が下がらないように設計されているという面でも結露は少なくなる傾向にあります。
気密性の話と似ていますが、換気についても誤解を与えやすい表現が多いような気がします。換気が十分にできていれば結露しないという意見は完全な間違いではありません。窓ガラス近くの空気が室内の他の空気と定期的に混ざっていれば、つまりは結露する前に暖かい空気の方に流されていくのであれば、その部分では結露し難くなります。
ただこれも換気量とガラスなどの表面温度との兼ね合いで決まります。今の法律で定められた換気量があったとしても、ガラスの表面温度がそれ以上低ければ、結露することもあります。
また、換気が結露を減らすことはあるかもしれませんが、その一方で換気が十分に行われれば、冬場の乾燥した外の空気がたくさん入ってくるため、室内がとても乾燥します。結果として室内環境が悪くなることもあります。
結露対策で水蒸気量を減らす方法は健康上の理由で間違っているケースが多いようです
この結露対策については、本やサイトで様々な対策が語られています。その中には結露対策としては正しくても、住んでいる人の健康や快適性を考えると疑問に思える対策もたくさん見受けられます。
問題だと思われる代表的な結露対策として、室内の水蒸気量を下げる結露対策は問題があると思われます。室内の水蒸気量を下げるために、開放型の暖房機を使わないとか、室温を上げ過ぎないとか加湿器を使わないなど、湿度を下げる事を推奨する人もたくさんいます。
しかしこのやり方は本末転倒である事が多いように感じます。これはエリアにもよりますが、首都圏では冬場は大変乾燥するため、そもそも空気中の水蒸気量が多くありません。結露を防ぐために、室内の水蒸気量を減らしますと、住んでいる人の健康にとってはあまり良い事ではありません。
「3-02-19.湿気は人の健康や建物の寿命にも影響します」の記事でもお話ししましたが、絶対湿度が7gを下回ると喉の粘膜が乾燥し、インフルエンザにかかりやすくなると言われています。結露はしなくなったとしても、そのために人の健康が損なわれるのであれば、それは良い住まいとは言えません。
換気重視の話にも似たようなものがあります。換気を十分に行えば、外の乾燥した空気が入ってきますので、室内は乾燥し結露はし難くなりますが、やはり室内の乾燥状態で健康に悪い影響が出ます。
このような事を考えますと、結露対策は室内の水蒸気量を減らすよりも、窓ガラスの表面温度を下げないようにする方が、現実的な対策になると思われます。
ガラスの表面温度を下げないために1番効果的な方法はインナーサッシを入れる事です。リフォームの中ではコストが安く、その割には効果が高い方法です。また、コストを抑えたい方向けにDIYで出来るインナーサッシも販売されています。
ただ安いといってもインナーサッシはリフォームですので、それなりの費用がかかります。それだけ費用を掛けられないという方は、窓ガラスに梱包材で使われる気泡入り緩衝材を貼るという方法もあります。
どのような結露対策を取るかはその方の考え方によりますが、結露するガラス面に工夫をするというのが、最も現実的な対策だと思います。
断熱や省エネについては選ぶ本に注意しましょう
断熱や省エネについては、一般の方向けの本が数多く出ています。個人的にはその中の「1時間でわかる省エネ住宅!夢を叶える家づくり」という本がお勧めです。
この本の良い点は、特定の工法や材料を推すのではなく、現実的な観点から省エネ住宅について語られている点です。エコ住宅や断熱系の本は数多く出版されているのですが、その半数はメーカーや工法の宣伝色が強い本となっているため、お勧め本はあまり多くありません。
さらにはこのやり方が絶対的に正しいと、とても費用がかかるやり方を推奨されている方も多くいらっしゃるのですが、不動産の経済性や安全性をバランスで見た場合、そのやり方が本当に正しいのか疑問に思える工法もたくさん存在します。そういった中で、パッシブデザイン関連の本は、あまり費用をかけず、無理なく省エネ住宅を作ろうという発想が良いと私は思っています。
パッシブデザインについては「本当にすごいエコ住宅をつくる方法」という本も分かりやすく解説されています。
結露や断熱については、本当に多くの本やサイトで紹介されていますが、間違っているものや偏っているものがとても多い世界です。皆さんも関連本や関連サイトを見る際には、なるべく違う意見のものを読み比べ、最終的に何が自分に合っているのかを考えるべきだと思います。
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