建売住宅「悪い」という意見の多くはポジショントークかもしれません
動画やサイトで「建売住宅はダメだ」という意見をよく目にします。しかし、その多くは単なるポジショントークではないかと私は考えています。今回は、建売住宅に関するよくある批判に対し、私の見解をお話ししたいと思います。
建売住宅の「レベル差」を無視した議論
まず、大前提として「建売住宅」と一口に言っても、その品質は会社によって大きく異なります。地震に強い「耐震等級3」を取得している会社もあれば、そうでない会社もあります。断熱性能についても、法律で定められたレベル(断熱等級4)のものを作る会社もあれば、さらに上位の等級5、6を満たす会社もあります。
「長期優良住宅」の認定を受けている建売会社も存在しますし、引き渡し後のメンテナンスを10年近く保証するケースもあります。使われている設備や建材も、メーカーによってグレードが全く違うのです。
こういった大きなレベル差があるにもかかわらず、一律に「建売住宅は性能が低い」「安っぽい」と批判するのは無理があるでしょう。批判の多くは、数ある建売会社の中でも、比較的レベルの低いケースを例に挙げているに過ぎないように感じます。
「安っぽい」のではなく「安い」という事実
「建売住宅は安っぽい」という批判もよく耳にします。確かにそう見えるかもしれませんが、それは建物が「安っぽい」のではなく、実際に「安い」からに他なりません。
おおよそ、建売住宅の建物価格が2,000万円前後であるのに対し、注文住宅では3,000万円以上、大手ハウスメーカーでは4,000万円〜5,000万円というのも珍しくありません。1,000万円以上の価格差があるのに、「安っぽい」と批判するのは筋が通らないでしょう。
この1,000万円の差は、住宅ローン(30年返済、金利2%)で考えると月々3万円ほどの支払い額の差になります。確かに注文住宅の方が「良いもの」であるとは思いますが、それが30年間毎月3万円余計に払い続けるほどの価値があるかどうかは、個々人が判断すべきことです。私個人は注文住宅が好きですが、そういった価値観を他人に押し付けるのは違うと感じます。
メンテナンスコストは本当に高いのか?
「建売住宅は買う時は安いが、メンテナンスコストが高く、結局は安くない」という主張もありますが、私はこれにはあまり賛成できません。
最も高額なメンテナンス費用がかかるのは外壁や屋根の塗り直しですが、仮に15年に一度、130万円かかったとしても、60年間で合計400万円程度です。最初の建物価格の差1,000万円以上を埋めるには至りません。
また、注文住宅だからといって、外壁や屋根のメンテナンスが全く不要になるわけではありません。同じくらいのメンテナンス費用がかかる注文住宅も多数存在することを考えると、「建売住宅だから余計なメンテナンス費がかかる」という主張は、正しくないと言えるでしょう。
欠陥住宅の「比率が高い」という主張の真偽
「建売住宅は欠陥住宅になる比率が高い」という意見もありますが、公的なデータでそれを裏付ける報告書は存在しません。この主張は、注文住宅を建てている人や設計者が個人の感想として語っているケースが多く、信憑性には疑問が残ります。
私自身、中古住宅の建物検査を多数行っていますが、私の経験上、わずかな差ではありますが、注文住宅系の方が「大きな問題」を抱える率は低い傾向にあると感じています。しかし、その差は「ごくわずか」であり、決して大きいとは言えません。
特に2010年以降に建てられた住宅(建売、注文問わず)に関しては、「これは問題だ」と感じるような建物はほとんどありません。ここ10数年の建物は、全体的に質の向上が見られます。少なくとも最近の建物においては、「建売住宅の方が欠陥率が高い」ということは言えないでしょう。
注文住宅の最大のメリットは「第三者検査」
最後に、少し余談になりますが、もし注文住宅を建てている方が「うちの建物は欠陥がない」と自信を持って言えるのであれば、第三者による工事中の建物検査をきちんと行っている会社であるかを確認したいところです。
私個人の見解ですが、注文住宅の最大のメリットは「工事中の検査ができること」だと思っています。そして、そういった検査こそが欠陥住宅を作らないための最も効果的な方法だと考えています。もし建売住宅の欠陥率の高さを主張する注文住宅の会社があるのであれば、ぜひ第三者検査を認め、問題がないことを証明していただきたいものです。
まとめ:結局、何が重要なのか?
建売住宅と注文住宅、どちらが良いかという議論は、建材の質感、デザイン、そして建物の「個性」をどこまで重視するかによって意見が分かれます。
例えば、無垢材の床は素晴らしいですが、メンテナンスの容易さでは建売のフローリングに軍配が上がることもあります。デザインについても、注文住宅には素晴らしいものがある一方で、「これはひどい」と感じるデザインや間取りの注文住宅も存在します。建売住宅には個性が「ない」と言われることもありますが、それに不満を感じない人も大勢います。
ただし、本当に高性能な建物(例えば、断熱等級7)を求める場合や、工事中の第三者検査を受けてとにかく欠陥のない建物にしたい、許容応力度計算に基づいた構造にしたい、RC造のような特殊な構造にしたいといった場合は、注文住宅一択となるのは間違いありません。
しかし、これらは比較的「特別なもの」を求める場合に限った話です。多くの方にとって、建売住宅でも十分な品質と満足感を得られるはずです。建売住宅に対する批判は、多くの場合、的を外しているのではないかと私は感じています。