家を建てたい人が建築の知識を学ぶことは無駄ではありません
私は仕事がら、不動産や建築に関わる本を読む事が多いのですが、先日読んだ本の中に、家を建てようとする人が建築の専門知識を学ぶのは無駄だという話が書かれていました。
私自身はこの意見に反対で、むしろ家を建てようとする人は、積極的に家や建物について勉強すべきだと思っています。このページでは、なぜ家を建てる人が家の勉強をすべきなのかについて、意見を述べたいと思います。
知識が無いと、良い建設会社や建築家を選ぶことができません
先日読んだ本と言うのは建築家の方が書いた本です。その本では、施工ミスや手抜き工事をさせないために専門家を雇うのだから、建物の技術的な内容については専門家に任せておけば良い、と主張されています。設計士や現場監督が工事の内容をチェックし、工事代にはそのチェック費用も含まれているのだから、工事については専門家に任すべき、という考え方です。
専門家の協力を得なければならないという点は確かにその通りです。一方で、すべての専門家が問題なく工事内容をチェックできるのであれば、今までに欠陥住宅というものができるはずがありません。しかし現実には欠陥住宅はたくさん建てられています。表面化していない欠陥住宅も含めれば、結構な数になるでしょう。
欠陥住宅を建てられないためには、誠意と技術的な能力の両方を持っている建設会社に工事を依頼しなければなりません。しかし、建築の知識が全くない人が、信頼できる建設会社や建築士を見極める事はほぼ不可能です。
信頼できる、と言う点を、知り合いだからとか人柄が良いから、という理由で判断する人も多いかもしれません。知り合いであれば誠意の部分は良いとしても、技術的な能力があるかどうかは判断できません。
誠意の部分に問題が無くても、技術的な能力が足りないために欠陥住宅となってしまう事はよくあります。そして、それなりの率で技術的な能力が無い建設会社があります。
このような問題がある建設会社を選ばないためには、家を注文するあなた自身が、ある程度建築に詳しくなければなりません。この詳しくなるというのは、プロ並みの知識が必要だという事ではありません。どのような施工や設計であれば問題になるかを、ある程度知っておけば良いだけです。
そして問題がある会社は、この基本的な部分ですら、きちんとできていません。一事が万事ではありませんが、基本的な事柄すらうまくできていない会社は、技術的な能力が高くない会社です。
これは建設会社の社員と話をすることで分かる事もあれば、実際の工事現場を見てわかる事もあります。そして建築の基本的な知識があり、何かおかしいと感じられれば、後から調べて確認することもできます。
これが建築について全く何も知らないままですと、間違っている内容、間違っている説明を受けても何も判断することはできませn。
悲しい話ですが、欠陥住宅を建てない建設会社や設計士を見分けるためには、ある程度自分で詳しくならないといけないのが現状だと思います。
今の建物は基本性能が確保されている、というのは幻想です
また、本の著者は、今の建物は車と同様に基本的な性能は既に確保されているので、心配する必要はない、と主張しています。この意見にも私は賛成できません。
どこまでを基本的な性能と考えるかにもよりますが、本来建物に求める安全性や快適性をどの建物も満たしているかと言えば、決してそんなことはありません。
色々な工事現場を見ても、この建物は少し問題ではないかと感じる事もありますし、築浅の中古戸建て住宅の調査をしても、問題がある建物はそこそこあります。
きちんと施工された建物であれば築10年や20年で傾きが出たり、大きなひび割れがたくさんあったり、雨漏りをしたりという事が簡単に起きる訳ではありません。しかし現実に中古住宅を調査しますと、それなりの率で問題が見つかります。
中古住宅であれば経年変化で建物が傷む、と主張される方も多いのですが、きちんと作られた建物であれば築20年であっても大きく傾くことはありません。ですが実際に傾いている建物が多いことを考えますと、それなりの率で問題がある建物があると考えられます。
そしてこれは昔の話に限りません。今でも施工現場を見ますと、問題がある作り方をしている建物をいくつも見つける事ができます。
今の建物はどれも基本的に問題は無い、と主張されている方は、あまり工事現場を知らないのではないか、と感じる事があります。もちろん業界内でも色々な意見があり、私も自分の意見を絶対的に正しいと主張するものではありません。しかし仮にもこれだけ金額の高い買い物をするのに、性能は大丈夫だから、という言葉だけで信用する姿勢には問題があると思います。
個性やこだわりが資産になるとは限りません
この本の否定ばかりになりますが、本の著者は、技術的な内容よりも建物に個性やこだわりを見つける方が重要と主張されています。一律に建てられた建売住宅よりも、こだわりをもって建てられた建物の方が、将来売る際にも高く売れると書いています。
この部分についてはほぼ間違いと言って良いと思います。私は仕事がら、中古住宅を数多く見ていますが、こだわりをもった住宅であれば築20年の建物でも高く取引されるか、と言われればそんな例はめったに見かけません。
正確に言えば、間取りや内装が素晴らしい建物であれば、若干他の物件よりも金額が高めとなっています。ですが、その金額差は決して大きなものではありません。設計時にかけた費用以上の差が出る事はまずありえませんし、むしろかけた金額の数パーセントしか金額に反映されないと思われます。
デザイン系の設計士の方は、デザインも資産になる、と主張されるかが多くいるのですが、現実に中古住宅でデザインが価格に大きく影響しているかと言えば、それほど大きな差ができる事はほとんどありません。
むしろ変わった間取りや変わったデザインは、購入者から嫌がられるケースも多々あり、売りにくくなる例も多いように感じます。
先日当社がお客様を案内をした物件は、無垢の木材をふんだんに使った作りで、デザインも凝っていたのですが、お客様からは好みではない、の一言でその物件は見送りとなってしまいました。
もちろんデザインの好みがぴったりと合う場合には、それなりに価格も付くかもしれません。ですが一般的にはデザインやこだわりは、中古住宅になった時には値段は付かないと考える方が良いと思います。
様々な角度からの意見を聞いて、家づくりを考えるべきです
ここまで述べた意見は、私の個人的な意見です。もちろんこの意見に反対だという方も多いでしょう。ですが、問題のある建物や、凝ったデザインでも価格がほとんど付かない中古住宅を私はたくさん見ています。自分の経験から、これらの意見を述べさせてもらいました。
もちろん例外もある事でしょう。また考え方によっても意見は異なると思います。これから家を建てようと考えている方は、1つの意見に縛られる事無く、色々な角度から意見を聞き、最終的にどうするかを決めるべきだと思います。
そして、色々な角度の意見を聞く、というのは、結局は建築について勉強するという事でもあります。本やサイトでは建物について様々な意見が述べられています。そしてその中には結構間違っていると思われる意見もたくさんあります。
こういった色々な意見の中から、何が正しいのか、何が自分に合っているのかなどを考えながら、最終的に納得が得られる家づくりを皆さんにして頂きたいと思います。
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