自治会(町内会)の加入は強制ではありませんが、不都合が出ることもあります
戸建住宅を購入した場合、マンションのような管理組合はありませんが、自治会(町内会)への加入を考えなければなりません。通常は町内会費は多額のものではありませんし、近所付き合いやごみ置き場の利用などを考えた場合、トラブルにならないように加入しておく、という形が一般的になります。
ただ、中には問題がある町内会があったり、理不尽な内容がある事もありますので、まずは町内会についての基本知識を得ておきましょう。
町内会は原則は任意団体で加入は強制ではありません
まず町内会の組織ですが、ほとんどの町内会は任意団体という形式のものです。任意団体とは「権利能力なき社団」とも呼ばれるようで、名前の通り、基本的には権限等はないはずで、この団体の加入に関する強制力もありません。実際に町内会の加入の可否については、裁判でも判例があり、町内会、自治会の加入は必須ではなく、強制はできない、という点については法的に結論が出ています。
ちなみに「ほとんど」と言いましたのは、一部の町内会は法人格を取得しており、法人格を取得した町内会は法人であって任意団体ではないからです。もっとも法人格を持っていれば加入は強制かと聞かれれば、これもそんなことはなく、町内会が法人の場合でも加入については任意であるという点に変わりはありません。
余談ですが、当社がありますエリアの町内会は法人化されています。法人化されることで、お金や不動産の扱いが分かりやすくなるというメリットがあります。
例えば任意団体では不動産の登記は出来ないため、町内会の共有の設備、例えばごみ置き場の土地の登記はどうするのか、等の問題が出たりします。預かったお金についても誰が管理するのか等の問題が出ます。任意団体の場合ですと、お金を個人の口座で管理するとか、不動産登記も代表者の名義で登記するという形になります。その管理をしている個人が問題なく運営していれば良いのですが、雑な方であったり悪意がある方の場合には、面倒なことになる事もあります。
これが法人であれば、法人名義で口座を持ったり、不動産を登記したりすることができますし、様々な規定がありますので、町内会のお金を変な事に使われる、悪用されるというリスクを少し小さくすることができます。
余談が長くなりましたが、町内会、自治会は、その組織が任意団体であれ法人であれ、加入は任意であって強制力はありません。
重要事項説明時に町会の加入は必須・義務ですと書かれている事もあります
ただこの認識が一般化しているかどうかは微妙です。実際に不動産の売買契約時に行われる重要事項説明の中に、「売主の義務を引き継がなければならない」という内容があり、その際に、町会の加入は義務です、必須です、と説明を受けることが今でもよくあるようです。私もそのように説明する営業マンを今でも見ます。
不動産関連の協会が発行している契約書や重要事項説明書のひな型では、今ではそのような表記にはなっておらず、法律に詳しい営業マンであればそういった説明をすることはありませんが、昔ながらの感覚で今でも町内会への加入は強制であると説明する不動産会社は一定数います。
最近では「町内会の加入は任意ですが、ご近所さんとのトラブルを防ぐために、なるべく加入してください」という言い方に変わってきています。内容としてはもちろんこの言い方が正しいのですが、まだまだ100%この形になっていないのは業界として残念な部分だと思います。
町内会に加入しない場合のデメリットを考えておきましょう
町内会に加入するかどうかは任意ではありますが、加入しないことに対するデメリットもあります。最大のデメリットはごみ処理をどうするかという点です。ゴミの回収が個別回収であるエリアについてはこの問題は出ません。ですが共有のごみ置き場を利用する場合には、いくつか問題が出ます。
例えばごみ置き場の場所、土地が町内会所有(または管理)の場合、会員以外には使わせない、という事があります。このこと自体も法的にはグレーで、本当に使わせないという事が法的にOKであるかどうかは微妙です。ですが会員の立場からすれば、自分たちはお金を払ってこのごみ置き場を使っているのに、お金を払わない人も使っているのは納得できない、という気持ちは理解できます。
またごみ置き場自体は自治体の所有や管理であっても、ごみ置き場を囲むフェンスを町内会がお金を出して作っているというケースもあります。さらにはごみ置き場の清掃を町内会の会員が交代で行っている事も多く、会員からすれば掃除の手伝いもせずに利用だけしている人に対し、良い感情は持てないでしょう。
このような問題が出る可能性、さらにはこういった感情の問題からご近所付き合いの悪化の可能性を考えますと、問題が無い、あるいは問題が少なそうである町内会であれば、加入する方が無難であるとは思います。
町内会や自治会に問題がある場合はその物件を選ばないという選択肢も考えなければなりません
上記のような状況を考えますと、基本的に町内会、自治会には加入する方が無難ですしトラブルを避けられると思います。その一方で問題がある自治会もあるため、そのような町内会エリアの物件を買うかどうかは考えなければなりません。
問題がある自治会・町内会とはどのようなものがあるのか、いくつか例を出して考えたいと思います。
町内会費や町内会の加入金が高額であるケース
加入するかどうかを考えなければならないという状況の1つに、自治会費、町内会費の額が高額である場合や、会費とは別に加入金があり、かつ加入金が高額であるケースです。
今まで私が聞いた中では、町内会の加入金が10万円というケースがありました。当社のお客様が検討した物件の町内会がそのようなシステムになっており、驚かされた事があります。最終的にその物件はお客様が見送る事になったため、なぜその町内会が高額な入会金の設定をしているのか、調べる前に終わってしまったので、高額な入会金がなぜ必要なのかの理由は分かっていません。
もちろんそのエリアならではの何らかの理由があって、そのような金額設定をしているのかもしれませんが、明確な理由もなく高額な入会金の設定をしているのであれば、個人的にはそのようなエリアはお勧めできません。さらには、その町内会が法人化もされておらず、お金の管理が明確でない場合は、なおのことお勧めし難くなります。
明確な理由もなく入会金が高い=変なエリアは避けたいという人も多いため、そのエリアは売れない=結果として資産価値の低下を促す、という事にもなり兼ねませんので、こういったエリアの方で自分の土地の資産価値について考えたいという人は、自治会のルールの見直しをする方が良いと思います。
入会金については、なぜその金額になっているのかの明確な理由があり、かつお金の管理もしっかりしている、という事であれば、問題は少ないとは思います。
会費についても似たような事が言えます。町内会費はエリアによっても相場は大きく異なるとは思いますが、首都圏であれば月に数百円、1,000円以内のエリアが大半だと思います。エリアによって違うと言うのは、例えば雪が降る地域であれば除雪費や関連費用を通常の町会費に上乗せしているという事もあるからです。ですが首都圏、街中では特別に費用がかかるというケースが少ないため、私が知る限り大半のエリアは月額数百円単位の町会費だと思います。
これが月額数千円という会費の場合、何に使われているのか、お金の管理は誰が行っているのかを確認する必要があります。これが調べても分からないというエリアであれば、何かしらの問題があるエリアである可能性が残ります。
町内会費等のお金はそれほど高額なものではありませんので、あまり気にし過ぎてもいけませんが、それでも何かよく分からないものに払った会費が使われているとなりますと精神衛生上よろしくありません。さらには変な使い方をして気にしない人が近所にいるという事は、そのエリアは雰囲気が良いエリアではない、という事もありますので、ある程度は事前に確認しておきたいところです。
強制的に寄付金を取られるケース
ちなみに上記の会費が高いという理由の1つに、寄付金が会費に上乗せされているから、というケースもあるようです。この寄付金の額や内容が納得できるものであれば良いのですが、これが単なる祭りの費用だったり、祭りに関わる神社の関係者への支払いだった場合など、強制的に取られることに納得できない内容もあるでしょう。ちなみに祭り関わる自治会費の増額という内容については判例もあるようで、これも強制的に費用を取る事は出来ないという話で法的には違法となっているようです。
新しい住宅地ではこのような事例は少ないと思いますが、昔ながらの街では時々似たような話があると聞きます。正直なところ、こういった会費の額自体は大きなものではありませんので、仕方が無いと割り切る事もできますが、このような雰囲気や慣習がある街には住みたくないと思う人も多いでしょう。
私自身もこういったエリアは極力避けたいと思うタイプです。これも最終的にはそのエリアの資産価値にも関わってきますので、このような制度を取っている自治体は、制度を改める方が良いのではないかと思います。
自治会が高圧的か、もしくは強制力が強いケース
現実的にはこのケースが一番嫌なパターンとなりそうな気はします。高圧的なパターンとしては、昔ながらの街に多い(と思われる)のですが、昔からの地主さんが権力(実際にはありませんが)を引き継ぎ、自治会長になって、偉そうに人に指示を出したり命令したりするケースです。
これは会費がどうこうと言うより、お祭りや運動会等のイベントで手間と時間を取られるという事があります。イベントには防災訓練や地域パトロール、ごみ拾い等意味のあるものもありますが、何のためにやるのか分からないイベントが多いエリアもあり、さらにその仕事を高圧的に命令されるような事になりますと、気分が良いものではありません。
指示の態度自体は高圧的では無い場合でも、強制力が強い場合には似たような気分になる事もあります。これが意味の感じられないイベントの場合には、さらに嫌な気分になるでしょう。意味がないとまでは言いませんが、働いている現役世代に嫌がられる代表的なイベントとして、敬老会(懇親会または発表会)、町内会旅行の段取り等があります。
町内会の役員は、数年から十数年に1度役職として回ってくるケースが多いのですが、イベントが多い自治会では、役員はこのイベント準備のために駆り出されます。平日はずっと仕事で忙しく働き、貴重な休日は休みたいのに、なぜお年寄りの暇つぶしのイベント(失礼)のために土日も働かなければならないのか、というグチはよく聞く話です。
最近ではこのようなイベントは減っていると聞きますが、いまだにこのようなイベントが数多く残っているエリアでは、少し注意が必要かもしれません。
戸建住宅購入の際に、こういった自治会の内容を詳しく調べるのは少し難しいところもあります。ですが、このような自治会や町内会の内容次第では、生活の質に影響を与えることもありますので、できる範囲で調べることをお勧めします。
このような話をしますと、町内会は悪い組織のように思われるかもしれませんが、実際には変な強制力のある自治会は多くないと思います。当社のあるエリアの町内会もイベントはいくつかありますが、強制力はありませんし、入会金もありません。会費も月に数百円単位で、ごく一般的な町内会だと思っています。
また地域イベントがある街の方が好き、という方もいらっしゃいますので、一律には言えない部分もあります。
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