地盤改良工事の代表例として3つのタイプの工事のイメージを持ちましょう
当社:ふくろう不動産に仲介をご依頼される方は、戸建住宅や中古マンションを希望される方が多いのですが、時々注文住宅を建てるための土地を探している方がいらっしゃいます。もちろん当社で土地のご案内も可能なのですが、その際に良く聞かれるお話として、この土地は大丈夫ですか?とか、地盤等で余計な出費が出る可能性がありますか?という話があります。
このご心配はもっともで、本来土地代でいくら、建物代でいくらと計算していたはずなのに、土地の地盤調査を行った結果、軟弱地盤である事が分かり、地盤補強に余分な費用が掛かってしまいますと、当初の資金計画が狂ってしまう事があるからです。
理想的な展開は、土地の購入契約の前に、地盤調査をさせてもらい、軟弱地盤だと分かれば、その分を考えて売買金額を決めるというやり方ですが、残念な事にこういった方法が試せることはまずありません。(事例は大変少ないのですが、地盤調査データが揃っている場合もあります)
売主さんが地盤調査を了承しない事もありますし、調査費用を誰が負担するかという問題もありますし、更には古屋がある場合には、家屋の下部分の調査ができないという事もあります。これも後数十年も経てば対応策が出来てくると思いますが、現状では残念な事に事前に確認する事がほとんどできません。購入後に購入者ご自身で検査の手配を行い、その結果を見て初めて分かるというのが現状です。
もちろん事前に土地条件図や周辺の調査データ等を見て、危険度合いが高いか低いかといった判断はできます。当社のお客様には土地情報レポートを添付していますので、この地盤が強いであろうとか弱いであろうといったざっくりとした判断はできるでしょう。ですが最終的にはその土地で地盤調査をして調査結果を見てみないと正確には分かりません。
では現実的にどうするかと言えば、事前に地盤改良工事が必要になった場合の予算を確保してもらう事になります。この予備費をいくらとするかは土地の面積や良好地盤までの深さ、前面道路に工事用車両が問題なく入れるかどうか等によっても異なりますが、100万円近く見てもらえれば、対応可能であるケースが多いようです。
実際にはどの対策工事を行うかによっても、地盤改良工事の費用は異なります。そこでこのページでは地盤改良工事の代表例を3パターン紹介し、このような内容でいくら位費用がかかるというお話をしたいと思います。
良好地盤までの深さが浅ければ、表層地盤改良工法が利用できます
購入した土地が軟弱地盤だったとしても、その弱い土の部分が少なければ、つまり良好地盤までの深さが浅ければ、その弱い部分の土のみ入れ替えるという工法が使えます。これは表層地盤改良と呼ばれます。
簡単に言いますと、軟弱な部分の土を取り、セメント固化剤と混ぜ合わせて再度埋めなおすというような工事です。埋めなおした後は、重機等で締固めて、終了という事になります。
工事内容としては、他の地盤改良と比べて簡単な気はします。ただ、この軟弱地盤の部分の深さが浅い場合には費用は安く済みますが、一定以上の深さとなった場合には、土の掘削や固化材との混ぜ合わせ、更に埋め戻しで費用が膨れ上がるため、軟弱地盤部分が浅い土地にしか使えないようです。深さの目安は正確には分かりませんが、1.5mから2m位までではないでしょうか。
この深さが浅ければ30万円位で工事ができる事もあるようですが、残土の処理によっては50万円近くかかる事もあるようです。もし深さが2mを超える事になれば、残土処理も含めれば費用が70万円を超える可能性が高いので、その場合には次にお話しします柱状改良の方を考える事になるでしょう。柱状改良工事との費用比較は、正確には見積もりを取ってみないと分かりませんが、目安としては本当に軟弱地盤が浅い場合のみ、という捉え方で良いと思います。
また、その土がセメント固化材との相性が悪く、うまく固まらない土である場合にも、この工法は使えません。腐葉土とか黒ボク土等の場合にはこの工法は使えないようです。
戸建の地盤改良工事で主流と思われるのは柱状地盤改良工法です
地盤改良工事で最も一般的なモノは、この柱状改良ではないでしょうか。柱状改良という言葉は聞きなれないと思います。誤解を恐れずにざっくりと言えば、セメント杭です。現場で穴を掘りながら同時にセメントを流し込み、現場で作るセメント杭というイメージで良いと思います。
この柱状改良の費用も、杭の深さや本数によっても異なるでしょうが、一般的な戸建住宅であれば70万円位、他の要素で費用が掛かった場合には100万円位ではないでしょうか。
地盤改良工事としてこの方式が一番普及している理由は、他の工法と比べてコストが安いからだと思います。ただコストを安く済ませるためにはいくつかの条件を満たしていなければなりません。例えば、
・良好地盤までの深さが8m位までである
・建柱車を敷地まで入れる事ができる(道路が狭すぎない)
・セメント固化材との相性が悪い土(腐葉土や黒ボク土など)ではない
・工事自体が1日で終わりそう
・残土の処理が安くできそう
といった要件があります。
一般の方が土地を買う際に、こういった内容を詳しくチェックできる事は恐らく無いでしょう。ですので道路が狭い場合、イメージとして4tトラックが入る事が出来ない土地であれば、柱状改良工事は難しい、と知っておく位ではないかと思います。
セメント杭の六価クロム問題について
費用以外のセメント杭のデメリットとして、六価クロム問題があります。これはセメント系固化材が特定の土と混ざった場合に発生する可能性があると言われています。特に関東ローム層等の土は、反応しやすく、六価クロムが出やすいとの話もあります。
大規模の建築物の場合には、六価クロム溶出試験等を行い、問題がないかどうかを確認しますが、一般的な戸建て住宅の規模ではこのような試験を行う義務が無いため、実際には六価クロムが出ているのか、出ているとすればどの位の量なのかという点は全く分かりません。
この点について、問題があるか無いかと聞かれれば、もちろん問題であるという事になります。その一方でどの位の危険性があるかという点については、それ程大きな心配はいらないのではないかという気もしています。
コンクリ杭自体は地中に埋まっているものですし、さらにそれが家のべた基礎の下にあるものですから、六価クロムが空中に浮遊するという事は少し考え難い気はします。また、地下水等に溶け出すという可能性が確かにありますが、その家や周辺で地下水を飲料用として使っているのでなければ、現実的な問題は起こり難いと思っています。
もちろん影響はゼロではないでしょうから、絶対に大丈夫というものではありませんが、その一方で住宅にはもっと他に人の健康に影響を与えると思われるものがたくさんあります。具体的には低周波音だったり、香料などの化学物質だったり、電磁波の影響といったものです。
他に問題があるから六価クロムは問題では無い、という話ではありません。ですが、本来もっと注意しなければならない問題を差し置いて、六価クロムのみ特別に問題視するのはどうなのかと感じます。つまり人の体に悪影響を与えるものはたくさんあり、その中でどうバランスを考えて選ぶべきかだと思っています。
もちろん六価クロムは無いに越したことはありませんので、注文住宅を建てる方で気になるのであれば、他の地盤改良を考えるか、そもそも杭が要らない土地を選ぶという方法も、もちろんありだと思います。
一方で地盤が悪い土地で建てられている建物の大半は、柱状改良された敷地の上に建っています。これがダメという事になりますと、エリアの大半は見送る必要が出てきます。
上記2つの方法でうまくいかない場合には、小口径鋼管杭を使います
戸建住宅の地盤改良工事の3つ目は、鋼管杭を打つという方法になります。これは上記2つの方法がうまくいかない場合に採用されます。一般的には上記の2つの方法よりもコストが高くなることが多く、工事費が100万円を超える事もあります。
実際にいくらになるかは、杭の長さ(深さ)や本数によっても異なります。支持地盤までの深さが大きい場合には150万円以上の費用が掛かるケースもあるようです。
しかし、表層改良や柱状改良ではうまくいかない場合には、この小口径鋼管杭を使わざるを得ません。実のところ、杭に対してはあまり選択肢が無く、土地や土質等によって、結局のところできる選択肢の中で価格が安いものを選ぶという形になります。
鋼管杭工法は、狭小の敷地でも使いやすいですし、土質の影響をあまり受けませんので、最後の選択肢として選ばれるケースが多いのではないかと思います。
あるいは前述の柱状改良で六価クロムが心配という方に対しては、多少費用が高くなったとしても、鋼管杭を選ぶという方もいるかもしれません。
杭は撤去しなければならなくなった場合にはその分費用がかかります
これらの地盤改良については、基準がある程度決まっていますし、大半の地盤改良工事は10年とか20年の保証が付きます。耐震という点で考えれば、あまり心配はいらないのではないかと思います。
一方で、これらの杭がある土地は資産価値が下がると主張される事もあります。これは杭が地中埋設物という扱いになりますので、これらの撤去の必要が出た際にはその分の費用がかかるから、という理由です。
ただ、実際にこれがどれだけのマイナスとなるのかは、事例が少ないため私には判断が出来ません。柱状改良を良く思わない方々の主張として、敷地に後からマンション等を建設する場合には、マンション用の杭と戸建用の杭は異なるため、既に埋まっている戸建て用の杭を撤去しなければならず、その費用分が減額になるという主張です。
ですが実際に戸建て用の土地がマンション敷地になるような例は多くありません。そして、柱状改良された土地に改めて家を新築する場合、セメント杭をそのまま使えば、撤去する必要もなく、むしろ地盤改良の費用が浮くという事も考えられます。
戸建住宅の場合、敷地に対してどのように建物を建てるかという位置は概ね決まってしまいますので、新たに建て直す場合でも同じ場所に建物ができるケースが多いと考えられるからです。
今の新築の戸建が建て直すという事になれば数十年は先の話になるでしょう。その時の技術がどうなっているのかにもよりますので、正確に判断することは出来ませんが、利用できる可能性が高いセメント杭(柱状改良)を一方的に地中障害物でマイナスである、と断定する事が正しいかどうかは疑問が残ります。
砕石杭の効果がどうなのかは実例を見てから考えたい気はします
ちなみに柱状改良、セメント杭は良くないと主張される方の大半は、代わりに砕石杭、砕石パイル工法を支持しているようです。砕石杭については、多くのサイト等で紹介されていますので、そちらをご覧ください。
この工法は地盤保証会社が認定している工法ですので、技術的にはきちんとした根拠がある工法だと思います。一方で技術的な計算上では大丈夫であっても、実際にどうなるかはある程度の年数が経ち、実績が出てみないと正しく分からないという事があります。
もちろん計算通りの性能を発揮することも十分考えられますので、決してダメという話ではありませんが、私見では十分に実績がある工法の方が安心度合いが高いと考えていますので、こちらの工法が良いかどうかの判断は、もう少し実績を見てから考えたい気はします。
これらの意見は、あくまでも私個人の意見ですので、絶対的に正しいというものではありません。皆さんが地盤改良の土地についてどう考えるかの参考の1つになればと思います。
こういった意見の違いで悩まされたくないという方は、地盤改良工事が必要ないと思われるエリアを最初から考える方が良いと思います。
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