不動産価格指数を定期的にチェックしましょう
自分が買おうとしている不動産が、相場の価格なのか、相場から比べて高いのか等について考えるのは簡単ではありません。特に最近(執筆時点は2022年4月)ではマンション価格の高騰が大きく、過去の成約事例を見てもあまり参考にならないという事がよくあります。
そこで今回は、国土交通省が発表している「不動産価格指数」のデータを見る事で、相場についてどう考えればよいか判断しやすくなるという考え方について、お話したいと思います。
不動産価格指数とは何でしょうか
この「不動産価格指数」という言葉自体、聞いたことが無いという人は多いと思います。「不動産価格指数」とは、国土交通省が毎月公表しているデータで、不動産価格の動向を指数化したものです。年間約30万件の不動産の取引価格情報をもとに、全国・ブロック別・都市圏別等に指数を作成し、公開しています。
表現が正確では無いかもしれませんが、2010年頃の価格を100として、各々の時点との比較で数値を示しています。元データでは数値しか出ていませんので分かり難いかと思いますが、例えば2021年12月のマンションの指数は170.5となっており、2010年と比べると70%近く価格が上がっているという事が分かります。
データは全国やブロック別で公開されていますので、ご自身が住んでいるエリア周辺のデータを見るのが良いと思います。ただエリアと言ってもすべての県が県別でデータがある訳ではありませんので、首都圏で不動産をお探しの方であれば、関東地方のデータか、南関東圏、または東京都のデータを見て頂くのが良いと思います。
ただ難点としては、その月のデータが公開されますのは4ヶ月位後です。リアルタイムでその月の指標が確認できる訳ではありませんので、その点は注意が必要です。
不動産価格指数を見やすいようにグラフ化してみました
この不動産価格指数は、エクセルのデータとしてダウンロードできます。ただ数値で見てもイメージがし難いかと思いますので、全体的な傾向を掴みたいという事であれば、グラフ化して見るのが分かりやすいと思います。そこで、今回は東京都のデータをグラフ化してみました。
住宅地の指標と戸建住宅の指標は、1984年4月の分から、マンションの指標は2007年の4月の分からあります。不動産系のニュースで、2021年度の新築マンションの1戸あたりの平均価格がバブル期を超えて過去最高となったと言われております。このニュースだけ見ますと、不動産は今はバブル期なのかと感じられますが、土地代に関してはバブル期と比べれば、かなり低い値となっています。これについてどう考えるかは難しいところではありますが、不動産の価格について考える時には、こういったデータを見た上で、現状はどうなのだろうと考える方が、より正確な判断が出来るのではないかと思います。
バブル期のデータが混じっていますと、最近の傾向が掴みにくいかもしれませんので、マンションの指標が掲載された2007年以降のデータをグラフ化してみました。これを見ますと2010年頃と比べますと、土地や戸建住宅は2割近い増加、マンションに関しては7割近く価格が上がっているようです。
仲介業務の実務を行っている私の感覚でも、マンションはずっと上がり基調だなとは感じており、このデータについての違和感はあまりありません。
もちろんこれは東京都の平均ですし、全ての物件の価格がこのように動いているという事ではありませんが、傾向としてこうであるという事は、知っておいて損は無いと思います。
流れを把握した上で、ニュース記事等を読みましょう
さて、この不動産価格指標を知る事で、どのようなメリットがあるのでしょうか。データをどう使うかは、人それぞれだとは思いますが、大きなメリットとして、適当な話に騙されなくなるという点があると私は思います。
例えばですが、自社にマンションの売却依頼を頂ければ、こんなに高く売れました、購入した時以上に高値で売れました、という広告を割とよく目にします。これは居住用、投資用両方でこういった広告を見たことがあります。
この広告の内容は決して嘘ではないとは思いますが、その事例のデータを見ておりますと、マンションの購入が2012年で売却が2021年といったケースがあります。確かにこれだけマンション価格が上がった期間内で売れば、それは高く売れますよねと感じますし、販売した会社に特別なノウハウがあったから高く売れた訳ではなく、単に購入時期と売却時期のタイミングが良かっただけでは、とも感じます。
このように仮に事実を見るとしても、全体的な傾向を知った上で事実を見ますと、見方が変わってくる事もありますので、このような価格の傾向、流れを充分に把握した上で、ニュース等を見るのが良いと思います。
マンションの相場を考える際には、この比率と他のサイトの想定金額とを照らし合わせましょう
他に「不動産価格指数」の使い方として、どのようなものがあるでしょうか。当社ではマンションの価格相場を考える時に、この価格指数を参照します。
売られているマンションが、相場と比べてどうなのかと考える時、はじめにレインズのデータを見て、同じマンションの成約事例を確認します(レインズのデータは不動産会社しか見る事が出来ませんので、内容を知りたい場合には、取引されている不動産会社の担当者にご確認下さい)。ただ。この成約事例が、検討している時期から離れてなければ問題はありませんが、直近のデータが無く、成約の実績が2年前、3年前という事もよくあります。
マンション価格があまり動いていない時期であれば、数年前のデータでも充分に参考になりますが、この時期のようにずっと上がり基調の場合、数年前の実績をそのまま当てはめると、相場と比べてはるかに安い金額を市場価格であると勘違いしてしまいます。
そこで、同じマンションの成約事例があった場合、その部屋の価格を、イエシルやウチノカチといった、マンションの価格を部屋毎に推定しているサイトの内容と照らし合わせ、同じ(と思われる部屋・イエシルもウチノカチも部屋ごとに想定価格を出しているため同じと思われる部屋同士で比較する)部屋の価格を、不動産価格指数の数値で現在価値に割戻し、その割戻し率を、現在販売中の部屋に当てはめて、相場金額を想定するという作業を、当社ではよく行っています。
もちろんこれであれば100%正しい数値が出るというものではありませんが、よく分からないけれども感覚でいくらぐらいであろうと考えるよりは、多少精度が高くなると思っておりますし、少なくとも明らかに割高であると思われる物件については、この計算式を当てはめる事で、検討から外す事も出来ますので、手法としては有用かと思っています。
もちろんマンション価格の相場の考え方は、不動産会社毎に色々なノウハウ、考え方がありますので、このやり方が絶対的に正しいという事ではありません。しかし、不動産会社によっては明らかにおかしな査定金額や相場金額を提示する会社もありますので、このやり方を一応は知っておく事で、あからさまに変な会社が出す金額については、より注意して話を聞くという事が出来ます。
不動産を購入しようとか売却しようと考えていらっしゃる方は、特にマンションについて考えていらっしゃる方は、こういった事をある程度把握された上で、仲介会社さんと交渉されるのが良いと思います。
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