不動産は安く買うよりも安く済ます事の方が重要です
戸建であれマンションであれ不動産を買う際に、こうすれば安く買える、的なテクニックの話をよく聞きます。これらのテクニックには的外れなものから実際に使えるものまで色々とあり、これはこれで考えなければならないのですが、一方で不動産は安く購入できればそれで良かったと言えるものでもありません。
実際には不動産は安く買えるよりも、トータルで安く済むという考えの方が重要だと私は考えています。と言いますのも安物買いの銭失い的な不動産もたくさん売られており、今は得をしたと思っていても10年後や20年後に大きく損をするという可能性が高い不動産も多いからです。
不動産の経済性はイニシャルコストだけでは決まりません
そもそも購入する不動産が高かったのか安かったのかは、購入時には分かりません。「第2章.最終的に安く済む住まいを手に入れるには」のページやその子ページでも説明していますが、不動産の経済性は、購入時の価格であるイニシャルコストと、保有中の費用であるランニングコスト、そして売却時の価格である資産価値の3つで決まります。
そしてこの3つが各々どの位の費用や価値があるのかについては、プロであっても正確には判断が出来ません。仮にほぼ同じ立地にあるマンションであっても、管理体制の違いや建物構造の違いによっては、ランニングコストに大きな差が出るという事もあります。ですが不動産会社の人間がそれらの内容を正確に把握し、シミュレーションを行うという事はまずありません。
完全に正確なシミュレーションを行うという事自体がそもそも無理ですし、マンション購入のお客様からそこまで細かな話を要求される事もめったに無いからです。
ランニングコスト以上に差が出やすいのは将来の売却価格、言い換えれば資産価値についてです。この将来の資産価値についても、不動産仲介会社、あるいは不動産分譲会社が詳しく正確に説明する事はほとんどありません。
不動産を紹介する会社は分譲会社であれ仲介会社であれ、その不動産の取引をしたときにのみ報酬が発生します。変に将来の資産価値についての話をすることで、契約自体が行われなくなりますと不動産会社の売上が立たなくなりますので、資産価値について都合が悪い話は積極的に行わない会社が大半です。
将来の資産価値については、どの不動産会社も説明は行うでしょうが、その説明が本当に正しいのか、どこまで情報を公開しているのかを購入者自身が厳しくチェックしなければなりません。
購入する価格が安くて問題になる不動産の代表例は、再建築が出来ない中古の戸建住宅です。完全に再建築が出来ないと確定していないものでも、再建築できる可能性が低い、あるいは再建築の許可を取るのに多額の費用がかかる戸建住宅なども該当します。
どのような戸建てや土地がこれらの条件に当てはまるのかは様々なケースがありますので一口では言えません。ですが、このような不動産を購入した場合には、購入時には安く済んでも、トータルで、将来的には損をするというケースが多々あります。
細かな話は後々勉強していくとしても、まずは購入時の価格だけで経済性が決まる訳では無いという事は知っておくべきだと思います。
少し無理をしてでも資産価値の高いものを買うべきという考えがあります
不動産は資産価値が落ちにくいものを買う事が基本となります。この話の重要性については「2-01.将来破綻しないために知っておきたいことがあります」でも解説しています。資産価値が落ちない物件であれば、住宅ローンの支払いが出来なくなったとしても、最悪売り払ってしまえば、諸費用分は損をするにしても、不動産購入前の状態に戻る事が出来るからです。
この考えをもっと推し進めたものに、多少無理をしても資産価値が高い物件を買うべき、と主張される方もいます。これはマンションの場合によく出てくる話で、買いやすい郊外のマンションを買うよりも、高くても都心のマンションを買うべき、と言う話の流れで聞かれる話です。
マンションは一戸建て以上に立地が重要視されますので、この考えはある程度私も理解できます。実際問題として、郊外のマンションでこれは本当に資産価値が維持できるのだろうかと不安に感じるマンションがたくさんあります。
一方でこの「少し無理をしてでも」という少しがどの位の無理なのかは、もっと真剣に考える必要があると思っています。マンションの場合、資産価値が落ちない立地のマンションは大概が高額のマンションです。価格帯で言えば、5,000万円以上のマンションが多いでしょう。
5,000万円以上のマンションの住宅ローンはそれなりに月々の返済金額は高くなります。どのあたりまでは少し無理というレベルなのかは人によって異なるでしょうが、まあ結構な金額になります。いくらになるかは皆さんご自身でシミュレーションして頂きたいのですが、これを「少し」の無理と見るのか、大きな負担と考えるのは人によって本当に異なるでしょう。
個人的には今の賃料の支払いに後いくら足せば、とか、毎月これだけ余分に払えば買えるはず、という考えはあまり賛同できません。月に1万円の増額であっても毎月の事であれば、このストレスが予想以上に大きなものになる可能性もあるからです。
ではいくらであればストレスになり難いのかについては「2-02-01.住宅ローンはいくら借入ができるかよりも実際に払えるかを考えましょう」等の記事を参考にしてください。
私見では少し無理をしてでも、という考え方にはあまり賛成できません。無理なく支払いができる範囲で、かつ資産価値が落ちにくい物件を選ぶ方法を、より深く追求すべきだと思います。
一方で不動産は買う時にほとんど損得が決まる事も確かです
このページでは買う時だけでのお金で経済性は決まらないというお話をしました。しかしその一方で、経済性が良いかどうかは買う時でほとんどが決まってしまうという事実もあります。
これは買う時の価格だけではなく、購入物件の条件で資産価値が維持しやすいかどうかのほとんどが決まってしまうからです。戸建住宅等で建物の手入れを行う事で資産価値を維持しましょうという話もあるのですが、実際にはどのような物件を買うかで資産価値に関わる条件の大半が決まってしまうため、保有時の維持管理については資産価値に与える影響はそれ程大きくありません。
マンションであれば維持管理の状態によって資産価値に与える影響は大きいのですが、こちらも管理組合が決める部分が大きく、自分でコントロールできる範囲はあまり無いのが実情です。
戸建住宅の場合、屋根や外壁が資産価値に大きな影響を与えているかのような話もよく出るのですが、私の経験上で言えば、基礎や擁壁等に大きな問題がある場合には、どれだけ外観をきれいにしても資産価値は付き難いですし、室内の汚れなどもリフォームで修繕できる範囲内であれば、それほど大きな価格差は付きません。
ですので購入時に、資産価値が維持できそうなしっかりとした建物なのか、土地にも将来の価格に影響が出るような問題が無いかどうかを確認すべきであって、これらの内容を把握した上で、購入価格を考えるべきだと思います。
この記事の内容を動画でも説明してみました
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