不動産は投資用と居住用では借り入れの考え方が異なります

不動産を購入する際には、投資の考え方は結構役に立ちます。投資用不動産を買うか買わないかの判断は、感覚的、感情的な考えがあまり入らずに、論理的に損得を考える事が多いからです。

一方で居住用の不動産を買う際に、投資用不動産と同じように考えてはいけない部分もあります。住宅ローンについての考えもその中の1つです。このページでは、居住用と投資用で住宅ローンについての考え方の違いについてお話します。

投資用不動産は自己資金を少なくする方がメリットが出やすい傾向にあります

居住用の不動産、つまりは自分が住む家の住宅ローンを組む場合は、自己資金が少なすぎるローンはあまりお勧めできません。特に物件価格の9割を超えるようなローンにはあまり賛成できません。ローンの融資条件が悪い(金利や保証料が高い等)ケースが多いですし、万一手放さなければならなくなった際に債務超過になり、売ろうと思っても売れずに、自己破産してしまう可能性が高いと考えられるからです。

自己資金のイメージ

居住用不動産の購入で自己資金が少なすぎるのは危険です。

一方で投資用不動産の場合は考え方が全く異なります。可能であれば頭金なしのフルローンにしたいでしょうし、限りローンの比率を高くしようとするでしょう。なぜかと言えば、借り入れによってレバレッジを効かせる事が出来るからです。このレバレッジの考え方については「2-02.住宅ローンは審査や破綻について考える前に本質を知りましょう」の記事をご確認ください。

投資である限り、投資家は投資効率を高めようとします。少ない資金で高い投資効果を出そうと考えれば、レバレッジが高い方が効果が高くなるのは言うまでもありません。実際にシミュレーションしてみますと、自己資金の比率が高くなっても、投資で得られる利益額に大きな差が出ない事がよくあります。同じ利益額であれば、少ないお金で得られる方が、率が良いと考えるでしょう。

また、投資家はいざ市場が動いたときに何の手も打てないという状況を大変嫌がります。そのため、自己資金が一定以上あったとしても、手元に現金がある方が手が打ちやすいために、自分の現金を使わず借りられるものであれば借入金で賄おうと考えます。

自己資金を少なくしているのは、あくまでも投資効率のアップのためであって、決して自己資金が無いからローン比率を高くしているのではありません。

大金のイメージ

十分以上の自己資金があっても、投資効率を考えて借入額を増やす事は、投資の世界ではよくあります。

また、売らなければならないという状況になるケースが居住用と投資用では大きく異なります。居住用では何らかの理由で収入が減る事でローンが返済できなくなるというケースが多いのですが、投資用では予定通り賃料収入が入ってくるのであれば、ローンが返済できなくなるという事は基本的にありません。

もちろん賃貸経営が予定通り進まないという事もあるでしょうが、賃借人をどう入れるか等打てる手はたくさんあります。また、当初に余分の現金を持っているのであれば、賃借人が入らない期間をしのぐとか、リフォームなどを行い入居者を入れやすくするなど対応策はたくさんあります。

これと比較しますと居住用不動産の場合、ローン返済が苦しくなった場合に打てる手は節約以外にあまり有効な方法はありません。

実際には話がもっと複雑ではありますが、不動産は消費用と収益用では考え方は全く異なる事が良くあります。そして自己資金の考え方についても、不動産投資の専門家がこう言っているからという理由だけで、居住用不動産について同じ判断をすると失敗する事もあると考えて頂ければと思います。

投資用不動産は借入期間を長くする方がメリットは出やすくなります

借入期間の考え方についても、投資用と居住用では大きく考え方が異なります。居住用では、できる範囲で借入期間は短い方がメリットが大きくなります。借入期間が短い方が、トータルでの支払利息が安くなるからです。

一方投資用不動産では借入期間は長く設定する方がメリットが出るケースが多々あります。投資用であってもローンの借入期間が長いと支払利息が多くなるのは変わりませんが、借りている期間内に収益も発生します。そして投資用不動産では支払利息分を経費で落とすことが出来る、つまりは支払わなければならない税金を安くすることが可能です。

賃貸住宅

投資用不動産は収益が関わる点が、大きく違う点になります。

また、借入期間を長くすることで月々の支払額を減らし、キャッシュフローを早い時期から良くできるというメリットも出てきます。

居住用不動産は支払いの内容だけ見て、支払額の多さを比較すれば済みますが、投資用不動産は収益も含めたバランスで考えます。トータルでの支払い利息が多くなっても、経費で落とせる分で税金がどれだけ減らせるか、キャッシュフローを良くすることで、他の投資に回せるかどうかや建物に手を入れて賃料収入をもっと上げられないかなど、違う側面を考えなければなりません。

詳しい話は投資の専門書等を読んで頂きたいのですが、支払いだけで見るか、収支で考えるかによって、借入期間の考え方は異なります

実際には居住用の不動産を購入された方でも、他に投資を行っているのであれば、借入期間を長くとって早い段階で浮いたお金を投資に回すという考え方も確かにあります。しかし、特に利回りの良い投資を行っていないのであれば、単純に支払い分を減らすために借入期間を短くするという考えが有効です。

何が本当に得になるかは細かくシミュレーションしてみないと分かりません。想定であってもシミュレーションを行い、得をするという判断であれば、居住用であっても借入期間を長くしても良いでしょう。

一方で何もシミュレーションする事無く、話を聞いただけで、借り入れは長い方が良いと決めつけるのは危険ですし、実際にもメリットを受けられないと思います。

固定金利か変動金利かの選択も投資用物件では考え方が異なります

住宅ローンで固定金利の商品を選ぶか変動金利の商品を選ぶかについても、居住用と投資用では考え方が異なります。私は、今の固定と変動の金利差であれば、居住用不動産は固定金利の方がお勧めだと考えています。ですが投資用となった場合には、変動金利を選ぶという選択肢もあると思っています。

この理由にはまず、投資用の住宅ローンの中で固定金利で良いと思われる商品が少ない事が挙げられます。投資用の固定金利ローンは居住用と比べて2017年時点では金利が安くありません。また繰り上げ返済の手数料がとても高い等、使い勝手が悪い部分もたくさん見受けられます。こういったデメリットを含んでまで固定金利を選ぶべきかどうかは微妙です。

もう1つは変動金利が上がった時の状況をどう考えるかです。金利が上がっているというのは景気が良くなっている可能性が高く、それ以上に不動産価格が上がり基調である可能性も考えられます。その場合、支払利息は増えたとしても、その分賃料収入を増やせるという事も十分に考えられます。

価格が上がる

金利が上がる状況では、賃料も上げられるかもしれません。

もちろん家賃には価格硬直性というものもあり、完全に金利と連動するものでもありませんし、立地による影響も大きいと思われますが、考え方としては間違っているとは言えません。

十分な知識を得たう上で居住用不動産の住宅ローンを選びましょう

繰り返しになりますが、投資用は収入との兼ね合いで様々な判断を行わなければなりません。そもそも投資用の不動産は、キャピタルゲインを考えなければ、賃料収入から運営に関わる経費と支払利息との差額が利益になるというものです(元本返済分は現金が不動産の一部に代わるだけで利益部分には影響しないという考えです)。

家計のイメージ

様々な知識を得た上で判断するようにしましょう。

この考えに沿って、利息を、つまりは住宅ローンを考えるという点が居住用不動産のローンの考え方と大きく違う点です。投資用不動産では収入を、そして利益にかかる税金分を考えたうえで、支払利息やローンの内容を考えなければなりません。

このような違いを理解した上で、投資の考えを取り入れ、不動産購入の判断材料として考えなければなりません。逆に理解が無いまま、投資ではこうだからとか、著名な投資家がこう言っているからという理由だけで判断するのは危険です。

当社では投資用の不動産はあまり扱っていませんので、このページの話には間違っている部分もあるでしょう。また、詳しく話をしようとしますと記事量が何倍にもなってしまいますので、敢えて省略している部分もあります。

しかし投資用であれ居住用であれ、不動産を買う場合の最終的な責任は買う人自身にあります。どういう選択をしようとも購入者の自己責任です。居住用であっても不動産の価格は数千万円という単位の商品です。この部分で失敗しますと、他の仕事、投資でうまくいった利益以上の損失を出すこともあります。

不動産の選び方はもちろん、ローンの選び方1つとっても、何十万円、何百万円分の損を出すこともあります。損をするしないは運による部分もありますが、最高の対策は正しい知識を得る事だと私は思っています。この記事もすべてが正しいという話では無いと思いますが、皆さんが住宅ローンを選ぶ際の参考になればと思います。

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