不動産の勉強は良いことですが、内容が間違っている本も多くあります
不動産選びに失敗しないためには、不動産について詳しくなることが1番の対策である、というお話をこのサイト上で何度も主張しています。そして、勉強で手っ取り早いのが不動産や住まいに関する本を読むことなのですが、どの本でも良い訳ではありません。
勉強になる、役に立つという本は多くありますが、一方で全く役に立たない、そもそも内容が間違っている、という本も多数あります。以前マンション本について「マンション選びの本で役に立たない本の典型例を紹介します」という内容を紹介しましたが、戸建て住宅については間違った内容の本がもっと多く出ています。
このページでは戸建て住宅についての本を選ぶ時の注意点についてお話ししたいと思います。
戸建て住宅本はマンション本以上にバイブル本がたくさん出ています
バイブル本というのは、特定の会社が自社の商売を行うのに有利と思われる内容を中心に書いている本です。バイブル本の内容がすべて間違いとは言えませんが、バイブル本は偏った内容しか書かれていない本も多く、住まいづくりや不動産探しの参考にはあまりなりません。
バイブル本であるかどうかは、著者の経歴と、本の後半を見ることである程度は判断できます。
まず著者についてですが、戸建て住宅のバイブル本の多くは建設会社の社長や会長などの代表者が著者です。住宅会社の代表者が書いている本で、良い内容の本も少しはありますが、大半はバイブル本だと思った方が良いと思います。
またその本の後半部分をざっと読むだけでもバイブル本であるかどうかが判断できます。バイブル本の後半では、その会社の宣伝的な内容が多く入っていたり、著者本人の歴史が自慢めいて書かれていたりします。
そもそもバイブル本は、出版社が売れると思って出す本ではなく、本を出したい会社がお金を払って作る本です。そのため、役に立つ本かどうかや、正しい内容が書かれているかどうかよりも、お金を出す会社の意見が強く反映されます。
簡単に言えばバイブル本は広告です。もちろん広告の内容にも役に立つものはありますが、基本的に勉強するのに適したものではありません。不動産の勉強をする際には、このような本は最初から外した方が無難です。
戸建住宅本ではデータの出典と内容が怪しいものは、内容が間違っている率が高いようです
バイブル本のように商売をしようという本ではなく、著者自身は好意で書いているのかもしれませんが、実際には間違っているという本も結構たくさんあります。そこで、こんなタイプの本は間違っていることが多いという見分け方について、説明したいと思います。
上の画像の本は、とあるジャーナリストが書いた住宅本です。正しい内容が書かれている部分もありますが、建築に関する部分はかなり高い確率で間違っています。
ただ、建築について詳しくない方であれば、何が間違っているかを判断することは難しいかもしれません。内容が正しいのかどうかの判断基準となるのは、何かについて書かれている時に、その判断の元となっているデータ自体が掲載されているか、また出典が明らかになっているかどうかを見るのが1つの目安になります。
例えばこの本では、「鉄筋コンクリートの住宅は木造住宅よりも9年早く死ぬ」と書かれています。ですが、この根拠となる論文などの出典の記載がなく、本当に正しい研究結果なのかは疑問が残ります。
さらにこの「9年早く死ぬ」とされている調査結果のデータを見てみますと、
死亡年齢の平均
木造住宅 63.5歳
鉄筋コンクリート住宅 52.4歳
と書かれています。
大半のマンションは鉄筋コンクリートですが、そのマンションの住民の平均寿命が52.4歳という事があり得るでしょうか。これが正しいとすると、マンションにお住いの方の大半は、定年前に亡くなる事になりますが、私はこのような話を聞いたことがありません。
恐らくデータの抽出方法に何らかの問題があるのか、あるいはこの結論を出したいがために特別な条件を設定したのか、詳しいことは分かりませんが、常識的に考えてもこのデータには問題があると思われます。そしてこの問題があるデータから導き出された結論が正しいとはとても思えません。
本に書かれている結論は、その著者の意見が大きく反映されていることが多いため、おかしいのではないか、と感じた場合には、その根拠となるデータを見るようにすることで、だまされる率は下げられると思います。
著者の立場では正しくとも、全体で見れば間違いという事もあります
また、戸建て住宅すべてについて詳しいという人はいません。戸建て住宅に詳しい方は大概何かの専門家で、その専門ジャンルについては詳しくとも、少し違う切り口については全く知らなかったり、軽視していることもあるからです。また、単に知らないだけであればまだしも、知らない事を理解せずに適当なことを述べている方もそれなりの率でいます。
例えば省エネ設備の専門家は、エネルギー効率の高い設備については本当によく知っています。ですが、その設備が健康被害を与えるかどうかという点については全く知らないこともあります。
また例えば、とても腕の良い大工なのに断熱や結露のことをほとんど考えない方もいます。一昔前は結露自体聞いたことが無いし、存在しないと断言していた大工さんもいました。そのため新築時には強い構造であっても、10年20年後にも強い設計ができるかと言えば、そうとも限りません。
また、例えば経済的な内容については詳しくても、建物の耐久性が全く分からない方も多数います。こういった方から見れば、建物はすべて同じように見えるようです。
これは本の著者に限らず、どの専門家にも言える事です。「第4章 住まいの業界の人たちには各々得手不得手があります」の子ページでも、どのジャンルの人はどのような点について弱いかを書いていますので、よろしければこちらのページも参考にしてみてください。
ふくろう不動産で分かる範囲も限られますが…
このような話を書いている当社:ふくろう不動産にも当然強いジャンルと弱いジャンルがあります(どのジャンルが弱いかは内緒です)。ただ、不動産はこのジャンルだけ知っておけば良いというものではありません。住む人の健康や安全、経済性など広い範囲で考えないと、満足のいく不動産取引は出来ません。
当社では苦手なジャンルも含め、不動産取引をされるお客様、特に不動産を購入されたいとしているお客様に正しい情報とサービスを提供できるよう、今後も注意していきたいと思っています。
ふくろう不動産は、物件があってこの住まいはどうですか、という営業を行っておりません。まず最初に不動産の選び方や見かたについて説明し、その上でお客様にどのような不動産を探すかを一緒に考えるというスタンスを取っています。
そのための情報提供や、一般の方ではチェックできない内容も多くの検査機器を使う事で、見えない部分も見えるようにして、より詳しい情報をお出しできるよう努力しています。
ふくろう不動産はこのような会社です。ふくろう不動産については「ふくろう不動産とは」のページをご覧ください。詳しくは「お問い合わせフォーム」などをご利用の上、ご連絡ください。