中古住宅のリフォームではタンクレストイレはお勧めしていません

中古住宅を購入する際に、水廻りのリフォームをセットで考えるお客様は多くいらっしゃいます。最近のトイレはデザインや機能も色々とあって、選ぶのに迷う方もいるでしょう。

トイレを大きく分けると、タンク有のトイレとタンクレストイレに分けられます。お客様からどちらが良いですか、と聞かれた場合は、特別な理由が無い限りはタンク有のトイレをお勧めしています。このページではその理由について、お話しします。

タンクレストイレのメリットはデザインと省スペース性です

タンクレストイレのイメージ

ホテルのような雰囲気を出せるデザインが人気の理由です。

先にタンクレストイレのメリットについてお話しします。このメリットが他のデメリットを上回るくらい大きなものだと感じられる方は、タンクレストイレを選ぶことになるでしょう。

1番の理由はデザインです。すっきりとした形のものや造形的に凝ったものも多く、この形が気に入ってそのトイレに決めました、という方は多いと思います。トイレの後ろ側にタンクが付いてない、というだけで見た目の生活感が大きく減ります。

また、これはタンクレスだからという事ではありませんが、タンクレストイレは上位機種という位置づけのため、他に様々な機能が付いているというメリットもあります。フタが自動で開閉するタイプのトイレはほとんどがタンクレストイレだと思います。フタの自動開閉機能が欲しいが故に、タンクレスを選んだという方もいらっしゃるかもしれません。

もう1つのメリットは省スペース性です。トイレの種類にもよりますが、タンク有のトイレと比べるとタンクレストイレは10cm近く奥行きが短いケースが多いようです。普通のサイズのトイレであれば、大きな差ではないかもしれませんが、元々のトイレの部屋面積が小さく、奥行きがあまり無い場合には、この10cm差が大きく感じられることがあります。

また、実際に使われるスペース以上に、見た目がすっきりしているため、同じ体積の空間であっても、広く感じられるという効果もあるでしょう。

タンクレストイレの大きなデメリットは経済性が悪い事です

このようなメリットが多くあるにも関わらず、個人的にお勧めしにくいのは、経済性が悪いというデメリットがあるからです。この経済性は、そもそものイニシャルコストが高いという点と、修理や交換費用などのコストが高いという2つの面があります。

イニシャルコストでは3万から10万円位高額になります

価格差のイメージ

イニシャルコストも高いのですが、これは大きな問題ではありません。

まずは、導入時のイニシャルコストですが、ほぼ同じ機能であっても3万円位の差が、実際にはタンクレストイレには他の機能が多く付いている事が多いので、そういった機種を選ぶこともあり、その場合には10万円ほどの差が付きます。

確かに価格差があるのですが、これは購入時に分かっている話ですし、価格差と商品の違いが分かった上で購入しますでの、このこと自体が問題になることはあまりありません。

故障や修理の際の費用が大きく違います

修理のイメージ

修理費や取り換え費などに大きな差が付きます。

問題となりやすいのは、故障の際の修理費用です。トイレの機構そのものはシンプルなものですので、そう簡単に壊れるものではありません。ですが、付属設備、例えばお尻を洗浄する洗浄便座などは電気製品ですので、一定期間後には壊れます。

洗浄便座が壊れた場合、タンク付きのトイレですと、洗浄機付き便座そのものを交換すればそれで済む事が多いため、費用も安く済みます。しかし、タンクレストイレは洗浄便座の交換が簡単ではありません。トイレ本体と一体化しているからです。

タンクレストイレの洗浄便座は特殊な作りになっているため、メーカーのメンテナンス部隊でなければ修理が交換ができないケースがあります。そのために、修理費などが一般的なタンク付きトイレよりも高額になるケースがほとんどです。

それでも部品などが交換できるのであれば、まだ良い方です。電気製品の場合は、発売から一定期間経過すると部品のストックなどをメーカーは持たなくなります。そしてもし部品が無く、修理が不可という事になれば、トイレ全体を交換しなければなりません。

一般的にトイレの水を流す機構自体は単純な仕組みです。ですので、部品さえきちんと交換しておけば50年はおろか100年だって持つ、と主張される方もいます。実際にトイレを作っているメーカーの方からそのような話を私は聞いたことがあります。

ですが、洗浄便座は機械的なものというより電気的なものですので、それほど耐用年数が長いものではありません。ですので、耐久性といった面から見ても、タンクレストイレは短い期間しか使えない可能性が高く、その結果経済性が悪いものになる可能性があります。

強い水圧の場所でなければ使えないというデメリットもあります

水圧のイメージ

強い水圧が無ければ使えないという事を知っている人でも、それがどのようなトラブルを起こす可能性があるのかは知らない人が多いでしょう。

経済性以外でも、タンクレストイレは水圧が強い場所でなければ使えないというデメリットもあります。タンク付きトイレのように、タンク内にたまった水を重力で落とすものではなく、タンクレストイレは水圧で流すタイプのトイレだからです。

一般的には、トイレを取り付ける前にはその水道の水圧を調べ、問題がなければ取り付けるという施工ですので、大きな問題は無い、と言われています。ですが実際には、強い水圧でなければ使えないという事で、いくつか問題を起こす可能性があります。

リフォームの場合は水道工事会社が本当にきちんと水圧を測定するかどうかが不安です

タンクレストイレのイメージ2

タンクレストイレを持って来て取付できないと分かった場合、そのまま持って帰りますか?

新築住宅であれば、タンクレストイレを取り付けるという前提で、水道工事を行いますので問題は起こりにくいでしょう。しかし、トイレのみのリフォームを行う場合には少し不安があります。

中古住宅の場合は、既に給水管などが取り付けられています。ですので、水道管の水圧はあらかじめ決まっています。そしてリフォーム会社がトイレの取り換えのために、お客様から指定されたタンクレストイレを持ってきて、いざ水圧を測り、規定の水圧を満たさなかった場合、どうするでしょうか。

きちんとした水道工事会社であれば、施主に状況を説明し、タンク付きのトイレを勧め、後日新たに持ってきたタンク付きのトイレを付けてくれるでしょう。

しかし、このようなきちんとした対応は当然二度手間になります。そして手間がかかる割に、価格が安いタンク付きのトイレに変える訳ですから、売り上げも下がります。すべての会社が、売り上げも下がり手間がかかるということをきちんとやってくれるとは限りません。更に言えば、すべての会社がきちんと水圧測定を行うかどうかも分かりません

もちろんきちんとしてない水道工事会社はごく一部でしょう。ほとんどの会社は事前に訪問し、水道の圧力を調べた上で、お客様と相談し、最終的に取り換える機種を選ぶでしょう。ですが、ごく一部かもしれませんが、きちんとしていない会社があるかもしれない、というリスクはあります。

住戸内の水圧が変わる可能性もゼロではありません

圧力メーターのイメージ

ずっと同じ水圧を維持できるかどうかは分かりません。

リフォーム時にきちんと水圧を測り、問題が無かったとしても、その水圧がずっと維持できるとも限りません。例えば、同じ住宅の他の複数の場所で、同時に大量の水を使った場合には、水道管内の水圧は弱くなります。また、水道管のどこかで漏水している場合でも、水道管内の水圧が低くなります。さらに、水道工事やその他の理由で、水圧が低くなる可能性もゼロではありません。

リフォーム前の測定時に十分な水圧があったとしても、長い使用期間でずっとその水圧が維持できるとは限りません

水圧が低いために起きるトラブルの責任問題は難しく、修理費用も多額になる可能性があります

トイレの詰まりのイメージ

トイレなど排水管のつまりの原因をはっきりさせるのは簡単ではありません。

水圧が低い場合には、トイレの排水管が詰まりやすくなるという問題が出ます。そして、その排水管のつまりを解消することが簡単な排水管であれば良いのですが、複雑な排水管や、一部コンクリートの中に埋め込まれている排水管の場合、修理が簡単にできないケースもあります。特に中古住宅の場合、排水管がどのように組まれているかがよく分からないこともあります。

そして、排水管が詰まった場合、排水管に問題があるのか、トイレに問題があるのか、あるいは使用者の利用方法に問題があるのか(本来流してはいけないものを流してしまった場合など)、その問題の特定は簡単ではありません。そのため、責任がどこにあるのか分からないケースが多々あります。

つまりタンクレストイレを作ったメーカーの責任なのか、リフォームを行った工事会社の責任なのか、元々の中古住宅を所有していた売主の責任なのか、更にはマンションであれば、共用部である排水管を管理している管理会社の責任なのか、責任の所在がすぐに分かることはありません。

そして結局、修理費用、対策費用は結局所有者が負担しなければならないことがよくあります。

実際にこのようなトラブルが起こることはまれでしょう。そして、これらのトラブルはタンクレストイレそのもののせいだけではないこともあります。しかし、タンクレストイレを入れるという事は、このようなトラブルを引き寄せる可能性が、少しだけ上がるという事は、知っておいた方が良いと思います。

そもそも排水管のチェック自体簡単ではありません

排水管チェックのイメージ

建物の排水管のチェック自体簡単ではありません。

中古住宅を購入する際には色々なチェックをすると思いますが、この排水関連設備のチェックは簡単ではありません。トイレであれば、1度は水を流して流れ方を確認できますが、お風呂や洗濯機の水の流れ方などを事前に確認することは実際にはできないでしょう。排水会所(外にある排水ます)をチェックしても、完全に排水の状況が分かる訳ではありません。

中古住宅は色々なリスクを考えなければなりません。ですので、可能性は低いとはいえ、余計なリスクを抱える可能性が上がるタンクレストイレへのリフォームを私はお勧めしていません

タンクレストイレは、初めて導入された当初は色々とトラブルが多かったと聞きます。最近はトラブルの原因も分かり始め、当初ほどのトラブルは実際には少ないでしょう。最初のタンクレストイレが発売されたのは1993年だと思いますので、既に20年以上経過しています。ですが、私はこのタンクレストイレはまだ発展途上の製品ではないかと思っています。

タンクレストイレで、修理や交換の問題、水圧の問題などが概ね解決できるようになって、初めて1つの完成形になったと言えるのではないかと思っています。

そして、まだ枯れた技術という段階に至っていないものは、私は積極的にはお勧めしません。デザインやスペースを確保するためにどうしても、という方以外は、普通のタンク付きトイレの方が良いのではないかと思っています。

ふくろう不動産は様々な切り口から中古住宅を購入されるお客様にアドバイスしています

ふくろうのイメージ

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