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不動産は買う方が得か、借りる方が得かという意見は、ネットや動画上で様々な意見が飛び交っています。その中にはなるほどと感心する意見もありますが、半分以上の意見は、論点がずれているのではないかと感じます。

最終的に住まいを買うか借りるかは、その人自身の判断になる訳ですが、判断をするためには色々な角度からの意見や事実を確認し、判断しなければなりません。このページでは、そういった判断の参考意見になるべく、判断の時には「資産」という言葉を使わないで考えましょう、という提案をしたいと思います。

人によって資産の定義が異なるため、話がかみ合わない事があります

不動産を買ってもらいたいと考える人たちが良く使うセールストークの中に「賃料はいくら払っても自分のものになりませんが、買うと最終的には資産になりますよ」というものがあります。

資産のイメージ

資産という言葉の定義があいまいなため、判断を難しくしています。

ただこの「資産」という言葉の意味が人によって異なるために、話がうまくかみ合わない事が多いような気がします。例えば投資系の方や経済評論家の方は「お金を生み出すものが資産であって、そうでないものはすべて負債(あるいは消費)」という定義付けをされる方が多いように感じます。

この定義は、2000年に出版された本「金持ち父さん貧乏父さん(ロバート・キヨサキ著):筑摩書房」で提唱されて以来、多くの人がこの定義を使っているように感じます。そして自宅はお金を生まないので、資産ではなく負債であるので買うのは損である、と主張される方も多くいらっしゃいます。

資産というものをどう定義するかは人それぞれですし、この定義付けそのものについては、私も特に言う事はありません。ただ、負債であるので、買うのは損である、と短絡的につなげる手法については正しいと思っていません

そもそもお金を生まないものは資産ではない、という定義がどのケースでも当てはまるかと聞かれれば、そうではないと思っています。例えば銀行預金は資産でしょうか。わずかとはいえ、利息が付くので資産だと考えるのが正しいでしょうか。では金利がゼロになったら、預金額が1千万円あったとしてもそれは資産ではないのでしょうか。

また株式についてはどうでしょう。配当が全くない株は資産ではないでしょうか。あるいは配当があったとしても、買った時よりも値下がり額が大きく、配当を含めた時価が購入時より下回っていた場合には、その時点では資産ではない、という事になるでしょうか。

私自身は、お金を生まなくても換金化できるものが資産、という定義で考えていますので、このような問題に悩まされる事は無いのですが、この「資産」という言葉の考え方が人によって異なるにも関わらず、同じ単語で会話している為に、何か話が合わないという事が出てきます。

換金化できるもののイメージ

私は換金できるものであれば資産という定義です。

そこで、買うか借りるかを考える際には、資産という言葉は使わずに、話をしたり聞いたりする方が分かりやすくなりますし、現実的ではないかと思います。

そう言っています私も、よく「資産価値が維持できる物件を選びましょう」と言っていますので、自分でもよく使う言葉ではあるのですが、これも正しく言えば、
「10年後であっても一定以上の金額で売れる物件を買いましょう」
「住宅ローンの残債以上の価格で売れる物件を選びましょう」
という事を言っているのであって、本来は資産という言葉を使わない方が、より正確に説明ができる気がします。

資産という言葉自体に、裕福なもの、あこがれるものというイメージがセットになりますが、実際にそうなるかどうかは物件によっても異なりますし、不動産に限らず資産を持つこと自体と裕福であったり楽ができたりという事とは関係がありません。

さて、前置きが長くなりましたが、この資産という言葉を使わずに、買う方が良いのか借りる方が良いのかの参考意見を述べます。

不動産は消費財と考える方が良いと思っています

私自身は、不動産は消費財だと考えています。この話には反論も多く、その反論の内容も分からなくは無いのですが、少なくともこう考える方が判断しやすくなる、と思っています。

消費財として考えるとなぜ判断しやすいかと言えば、他の消費財と比較することができるからです。例えば自動車と比べる事で、どう考えたらよいか、という判断の助けになります。

自動車の比較

自動車であれば違いが分かりやすいのですが、不動産は違うものでも同じものとして比較されるケースが多くなります。

自動車と比べると聞いても、何のことか分からないでしょう。ですのでちょっと例で示してみます。車を選ぶ際に、選択肢がトヨタのプリウスと価格が安いタイプの軽自動車があったとします。実際にはこの2択で迷う人はいないと思いますが、選択肢が2つしかないと考えてください。

そしてどちらを買うかを考える時に、10年後に売却するつもりで、経済性を考えたとします。詳しいシミュレーションをするまでもなく、10年間にかかる費用は、プリウスの方が高くなるでしょう。いくらプリウスの燃費が良いからと言っても、購入時の価格差が大きすぎますし、10年後の下取り価格では、購入時程の価格差は付かないでしょう。

では、この事実をもって、プリウスを買うのは損である、と断言する人がいた場合、あなたはどう考えますか。それは違うと思う人の方が多いのではないでしょうか。確かに10年間でかかった費用は大きくなるかもしれませんが、その期間に受けた快適性や満足感を考えれば、損とは言えない、と考えるのではないでしょうか。私もその通りだと思います。

これがなぜか不動産に関した話になると、プリウスと軽自動車を同じレベルで比較して、損得を語る人がとてもたくさんいます。仮に購入物件をプリウス、賃貸物件を軽自動車であると当てはめてみてください。同じ自動車なんだからという切り口で、同じものと考え経済性について語る内容は本当に正しいでしょうか。

自動車に詳しい人でなくても、プリウスと軽自動車を同じものとして比較する人はまずいないでしょう。ですが不動産については、同じような差がある物件を同じものとして比較されるケースがよくあります。これは恐らく経済系の人達は建物の技術的な内容が全く分からないからではないかと思います。

車の価格

建物は車の価格よりも分かり難いという点が難点です。

実際のところ、賃貸用物件と分譲用物件では建物のレベルが大きく異なります。特に見えない部分、構造的なものや断熱性などは、全くの別物と言って良いほど違います。

ですので分譲用物件では、確かに払う費用は大きくなるけれども、その期間の安全性(構造に強い)とか快適性(断熱効果が高いとか好みに合っている等)を得た上での支払いになりますので、そういった内容を踏まえた上で、損か得かを考えなければなりません。

余談ですが、現実にはこれらの話が全て当てはまる訳でもありません。賃貸用物件でも分譲用と同じレベルのものもありますし(分譲マンションを貸している場合など)、分譲用されているものでも大変レベルが低いものもあるからです。今回の例えでお話ししました軽自動車でも、最近では高機能で高価格のものも出ています。ですので例としては不適切だったかもしれません。

ですが、このような消費財として考える方が、分かりやすいと思っています。不動産の場合は、その利用期間が10年どころか20年30年になる事も多いため、その期間は長くなりますが、考え方は同じです。その期間内に得られる快適性や安全性、そして経済性を賃貸物件に住む場合と比較して、どちらのコストパフォーマンスが高いかで判断する方が、現実的だと思います。

安全性を見ることなく、高い安いを判断してはいけません

自動車と比べますと、不動産はひと目で違いが分かるという事があまりありません。また、現在新車で売られれている自動車であれば、軽自動車であったとしてもある程度の安全性は確保されています。厳密には高級車と比べて安全性に差があるとは思いますが、それでもある程度は計算できる差だと思います。

これが住宅の場合、安全性の差が大きいにも関わらず、その差が比較される事があまりありません。最近の建物であれば、建築基準法の最低限の基準は満たしているでしょうが、賃貸用建物であれば耐震等級は1でしょう。更に少し前の建物の場合は、どの位ルールが守られて建てられたのかはよく分からない建物が多くあります。

購入物件の場合であれば、事前に建物検査を入れたり、図面などを詳しくチェックして、ある程度安全性をチェックする事は可能ですが、賃貸物件で安全性のチェックができる事はまれでしょう。

図面のチェックのイメージ

賃貸物件で構造に関わる図面類をチェックするのはまず無理でしょう。

一般的に賃貸物件を借りる際に確認できるのは、不動産の立地、部屋の面積、部屋のきれいさだけで、それ以上はあまり確認できません。かりに詳しい資料をチェックして調べようと思っても、大家さんはそのような面倒な客は断ってしまうでしょう。何しろ高い金額を出す購入物件ですら、このようなチェックが嫌がられているくらいです。

賃貸物件の表示を見ていますと、築年数ですら怪しいことがあります。リフォーム時期は書かれていても、建築年月日が記載されていない事もあります。建物の構造が弱い旧耐震建物(昭和56年以前の建築物)でも、リフォーム時期しか記載が無い物件も見たことがあります。

実際には賃貸物件でも構造がきちんとしているものもあるでしょうし、すべての賃貸物件がダメというつもりは全くありませんが、傾向としてレベルが低い建物が多いという事は言えます。貸主から見れば、借主が重要視しない項目に費用をかける事はビジネス上得策ではないからです。

不動産は快適性と経済性と安全性のバランスを考える消費財と考えましょう

結局のところ、住んでいる間の安全性も含めて、買うか借りるかのコストパフォーマンスを考える必要があります。安全性だけではなく、快適性も当然加えて考えます。これらのバランスを考えた上で、本来どちらが良いのかを考えなければならないはずなのですが、世間一般では単に金額だけの話で終始している例が多いように感じます。

暮らしのイメージ

居住期間全体のコストパフォーマンスを考えましょう。

ちなみにこれらの話は、絶対的に買った方が得という話ではありません。賃貸市場もどんどん変わりますし、人の価値観によっても、どちらのコストパフォーマンスが高いと感じるかは変わります。

ただ、なるべく多くの条件を考えた上で、買うか借りるかを比較すべきと言っているだけです。この記事では、資産という言葉だけで良い悪いを決めてはいけないという話をしました。実は資産という言葉だけでなく、安全という言葉であっても、気持ちが良いという言葉であっても、1つのキーワードで決められるものでは無いと私は考えています。

どれが正解と一口に言えるものではありませんが、世間での意見があまりにも安直な結論の出し方に違和感を感じましたので、この記事を作りました。

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