不動産業者は「千三つ屋」と呼ばれますが、実態はどうなのでしょうか
「不動産屋は千三つ屋(せんみつや)だ」という言葉を聞いたことがありますか?
この言葉は、元々「千の会話のうち、本当のことを言っているのはわずか三つだけ。残りの997個は嘘ばかり」という意味で使われていたと言われています。もしこれが事実なら、不動産取引は全てが疑心暗鬼になってしまいますよね。
では、実際の不動産業界の営業マンは、本当に話の99%以上が嘘なのでしょうか?
今回は、私が業界の先輩から聞いた「千三つ屋」の真実と、お客様が特に注意すべき「3つの重要な嘘」について解説します。
「千三つ屋」の真実:嘘は3つだが、それが最も重要
結論から言うと、「ほとんどの話が嘘」というのは大げさな表現で、現実的にはそんなにたくさんの嘘はつけません。
むしろ、先輩から聞いた話では「1000件話があったとしたら、嘘が入っているのは3件くらい。残りは本当のことしか言わない」という見方もあるそうです。
しかし、注意すべきなのは、その「3つの嘘」が、お客様の人生を左右する最も重要な項目にかかわっている点です。
不動産営業マンが自分の成績や会社の利益のために、時に事実を曲げてでも押し切りたいと考える、その3つの項目がこちらです。
1. 嘘その1:「今買ってはいけない」を「今すぐ買うべき」と変える
お客様の状況によっては「今は買い時ではない」という判断が必要な場合もありますが、営業マンは原則として「今すぐ、早く物件を買わせよう」とします。
【営業マン側の理由】
- 仲介手数料の仕組み: 不動産仲介は成功報酬です。手間をかけても成約しなければ報酬ゼロのため、内見回数が増えるほどコスパが悪化します。
- お客様の熱意の期限: 不動産購入の「熱意」は長く続かず、一般的に3ヶ月程度で冷めてしまう方が多いため、熱意が冷める前に契約したいと考えます。
- 集客コストの回収: 広告費など高額な集客コストを回収するため、離脱される前に3ヶ月以内で話をまとめたいと考えます。
2. 嘘その2:「これを買ってはいけない」を「これがおすすめ」と変える
お客様が「他の物件も見たい」と言っても、営業マンは「今までに案内したこの物件」で決めてもらおうとします。
【営業マン側の理由】
- 手間と時間の省略: 新しい物件の案内は、予約や資料準備、移動など多くの手間がかかるため、今までの物件で決まれば、これらの手間を全て省略できます。
- ノルマ達成: 月末のノルマが厳しい場合、目の前の契約を逃すと今月の達成が危うくなります。
- 利益誘導(両手仲介): 売主と買主の両方から手数料をもらえる物件(両手仲介)を強く推すことで、売上が2倍になるインセンティブが働くのです。
3. 嘘その3:「あなたは買ってはいけない」を「あなたなら大丈夫」と変える
お客様の収入や貯蓄状況から見て、住宅ローン返済がかなり無理な計画であっても、「大丈夫」「みんなこのくらいでやっている」と押し切ろうとすることがあります。
【営業マン側の理由】
- 高額物件の利益: より高額な物件を買ってもらう方が手数料収入が増えるため、多額のローンを組むことになっても「大丈夫」と背中を押したいのです。
- 業者側のリスク: 無理なローンで将来お客様が返済に苦労したり破綻したりしても、仲介会社には全くリスクがないため、利益を最大化する選択を優先します。
嘘ではないが「話さない」情報に注意
多くの不動産業者は法律を守っているため、法律で「説明しなければならない」と定められた重要事項については嘘をつきません。
しかし、法的な説明義務がないものの、買主にとってデメリットとなる情報については、あえて話さない、という対応をすることがあります。
これは「嘘をついている」とは言えないかもしれませんが、お客様が知るべき重要な情報を提供しないという点では、注意が必要です。また、義務がある説明についても、お客様が問題と認識しないように「簡単に流す」「さらっと済ませる」といったテクニックを使う営業マンもいることは覚えておきましょう。
まとめ:自分で勉強し、自分で判断を下す
「不動産屋=千三つ屋」という表現は少し過剰かもしれませんが、営業マンの立場や利益構造を考えれば、上記で挙げた「3つの嘘」、つまり「いつ買うか」「何を買うか」「あなたが買うべきか」という最も重要な問いに対して、営業マンが常に客観的で誠実なアドバイスをくれるとは限りません。
彼らはプロですが、同時に自分のビジネスの成功も目指しています。
不動産購入を検討されている方は、この「3つの嘘」について、営業マンのアドバイスを鵜呑みにせず、ご自身でしっかり勉強し、最終的な判断は自分で下すという姿勢を持つことが大切です。
この内容が、あなたの不動産取引を考える上で役立つ情報となれば幸いです。もし、この3つの嘘の具体的な事例について、さらに深掘りしたい点があれば、ぜひご相談ください。

