不動産は賃貸物件と分譲物件では求められるものが違うため、買うか借りるかの比較は簡単ではありません
不動産に関する質問の定番に、不動産は買う方が得か借りる方が得かという質問があります。この質問に答えるのは簡単ではありません。不動産を買う人の状況によっても異なりますし、それ以上に購入する物件によっても損得には大きな差が出るからです。
どちらが得かという話については、このサイトでも「1-01.家を買うか買わないか迷っている人に」のページで意見を述べています。そもそも分譲物件と賃貸物件では建物自体の性能が大きく異なる事が多いですし、各々のタイプについて、求めているものが違うため、単純に比較することは難しいと私は考えています。
このページでは、賃貸物件を求めている人と分譲物件を求めている人の選び方や考え方の違いをお話ししたいと思います。そしてこの話から、皆さん自身が不動産を買うのか買わないのかの判断の参考にして頂きたいと思います。
賃貸物件は安全性よりも見栄え重視の傾向が強くなります
賃貸物件と分譲物件の1番大きな差は、安全性の差では無いでしょうか。賃貸物件について、何にいくらかけるかは大家さんが決めます。そして大家さんは投資効率を考えて、何が一番借りてくれる人が喜ぶかを考えて、費用をかけます。
もし不動産を借りる人が、他の条件よりもとにかく安全性を重視する、という人達であれば、賃貸物件であっても安全性は高くなるでしょう。しかし、不動産を借りるほとんどの人は、安全性よりも利便性や見映えを重視します。大家さんは立地を変えられない以上、利便性についてはあまり手を加える事が出来ません。そうしますと、後は見た目をどう良くするかに力をかけます。
具体的には壁紙の張替、床の張替、水栓金物の交換等から手を入れ始めます。住宅の耐震補強をするよりもコストが安く、かつこの方が借りる人を集めやすいからです。
新築として建てる時も同様です。耐震等級が3の強い構造の建物を建てるよりも、耐震等級は1で構わないので、その分内装や設備にお金をかけます。もちろんその方が、借りる人を付けやすいからです。
これと比べ分譲住宅を購入される方は、安全性にはとても注意します。自分の持ち物になる、という事からなるべく壊れないものを、という傾向が強くなるようです。
断熱性や耐久性も考え方が異なります
これは安全性だけでなく、断熱性にも似たような事が起きます。断熱性や気密性を高くしても、借りる人がその点を高く評価しなければ、お金の掛け方が無駄になるからです。不動産賃貸を投資として考えれば、当然の事だと思います。実際に、賃貸用として作られる建物で、高気密高断熱に特化した建物を見る事はほとんどありません。
耐久性についても同様で、借りる人が、この建物は長持ちするからこれを選ぶという方はほとんどいません。建物に問題が出れば、引っ越しすれば良いと考えるからです。
健康配慮についても同様です。購入する人であれば、長期間住んでも健康に悪い影響が出ないように、という点を強く意識される方が多くいます。これが借りる方では、過敏症の方を除けば、真剣に考える方はあまり多くありません。健康配慮の素材は自然素材のものも多いのですが、価格が高い事やメンテナンスに手間がかかる事もあり、大家さんや投資家はあまり好まないからです。
このような背景から、住宅は賃貸用と分譲用では力のかけるポイントが大きく異なります。そして、この違うものを同じものとして計算するという事は、正しく計算をしていない事になると私は考えています。
分譲物件で高利回りになる事はほとんどありません
例外として、分譲マンションが賃貸として貸し出されるというケースがあります。この場合には、分譲用マンションが貸し出されている訳ですから、賃貸用も分譲用も同じものと考えて良いでしょう。
そして、実際に利回りを計算してみれば分かりますが、分譲用マンションを購入して投資用不動産として賃貸に出しても、利回りが良い事はほとんどありません。力を掛けるポイントが賃貸用と異なり、最初に費用が掛かっている割には、高い賃料が期待できないからです。
ただ、賃貸時の利回りは良くなくても、売却時の利益を狙って購入される投資家もいると思いますので、投資として絶対にダメかどうかは分かりません。しかし、単純に利回りだけ計算すると、他の投資用物件と比べて、利回りが悪くなることは確かだと思います。
建物が違うという点を正しく把握して比較する姿勢が正しいと思われます
これらの話は分譲用が良くて賃貸用が悪いという話ではありません。ただ、世間で言われている比較の話は、両者を同じものとして計算されたり語られたりするケースがよくあるため、それは違いますよとお話ししたいだけです。これは一般の方だけでなく、経済評論家の方でも似たような話をされるケースがあります。
もちろん意見は人それぞれですので、何が正しく何が間違っていると一口に言えるのもではありませんが、なるべく正しく情報を得た上で比較する方が、より納得ができる比較ができると思います。
この話と似たような話として「4-08.投資家や評論家の家の話はもっともらしく聞こえますが、正しいとは限りません」のページでも買うかどうかの比較についての説明をしています。よろしければ、こちらも参考にしてください。
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