新築マンションの価格表は買い手に印象操作を行う事ができます

新築マンションは購入するときに、どの部屋を買うべきか悩むことは無いでしょうか。中古マンションを買う場合は、空いている住戸は基本的に1つですから、その住戸を買うか買わないかを決めるだけですが、新築の場合は、複数の住戸から選ぶことができるため、価格表を見ながら迷う事もあるでしょう。

ですが、このマンションの価格表は買い手に印象操作を与える事ができます。マンション購入者は、価格表にもトリックやディベロッパーの作戦が含まれているという事を知るべきです。

マンションの価格表は全ての住戸を売るために価格の割り振りを考えています

マンションの価格表は、不動産業界では「鳥かご」と呼ぶ事もあります。そしてこのとりかごを作るために、マンションのディベロッパーは何度も打ち合わせしますし、住戸毎の価格差を真剣に考えて設定します。しかし、考えられて作られたマンション住戸の価格が、すべて相場から価値を考えて作られたかと言えば、そんなことはありません。

マンション価格表サンプル

新築マンションであれば、このような価格表を見て住戸を選ぶことも多いでしょう。

マンションディベロッパーはマンションの各住戸の売上の合計金額が最大になるように価格を設定します。住戸が100戸あったとすれば、100戸の住戸がまんべんなく、かつ最も高く売れるような設定を考えます。100戸のうち5戸だけが大人気で、残りの95戸が売れ残るというような設定をすることはまずありません。

しかし、マンション住戸は場所や階高によって人気は異なります。これら異なる人気の住戸群をどうやればお客様が均一に割り振られるかを考えるかで、ディベロッパーの値付け担当者の腕が問われます。

もっとも実際にはお客様が完全に均一にちらばるように価格設定を行う訳ではありません。最も数が多いタイプの住戸が売れ残らないように、つまりは割安に見える設定にして、中心となる住戸の売れ残りが多くならないように価格設定します。そのために、角部屋や最上階などの住戸を敢えて高く設定し、真ん中の住戸が比較的安く見えるように設定することもあります。

例えば角部屋の住戸の価格を通常以上に高く設定し、中住戸のマンションを割安に見せるという方法があります。マンション毎にどういった作戦を取るかは異なりますので、一律にどうとは言えないのですが、新築マンションの販売会社はこのような事を考えて、価格表を作るという事をまずは知っておきましょう。

マンションの最上階は割高設定としているケースが多々あります

角部屋と並んで比較の対象となりやすいのが最上階の住戸です。通常マンションは階数が1つ上がれば、価格は0.5%前後高くなります。しかし最上階は、その下の階と比べて更に価格差を付けます。

マンション上階からの景色

マンションの最上階は特に高い値段が付けられている事があります。

中古マンションの査定マニュアルでは、最上階は下の階と比べて2.5ポイント高く付けるような設定になっています。このポイントは合計点で計算するものですから、正確にはパーセントとは異なるのですが、大体同じくらいパーセンテージが上がると考えて構いません。しかし、新築マンションの最上階は、その直下の階の住戸よりも2.5%どころか3%以上高い例もたくさんあります。

これは、最上階であれば上に住戸が無いために、上の階の騒音を気にしなくても良いというメリットや、そのマンションで1番高い部屋というステイタスがあると説明できるからです。

特にタワーマンションのようなステイタス性の高いマンションの場合は、このマンションの中でも1番高い部屋、1番景色が良い部屋、という優越感を満たしやすいため、割と高めの金額設定にされている事が多いように感じます。

値引き引当金をあらかじめ計算して価格表が出来ていることがあります

最上階の住戸の価格を高くした結果、最上階の住戸だけが売れ残ったとしても、販売しているディベロッパーはそれほど困りません。数の多い中住戸が売れてしまえば、残りの最上階の住戸は数がそれほど多くある訳ではありません。そして、価格が安い中住戸が売れるのであれば、最上階の住戸も中住戸と同じくらいにまで価格を下げれば、それらの住戸を売り切る事ができると計算できるためです。

値引き提示のイメージ

条件が良い特集住戸は最悪後から値引きすれば売れると考え、見せかけの高値を付ける事があります。

実際にはそこまで価格を下げなくても売れる可能性が高いでしょう。ディベロッパーは販売計画を立てる際に、一定金額を値引き引当金として取っておく会社もあるのですが(ディベロッパーによって異なります)、その値引き引当金を最上階の住戸分で予め見込んでおくという販売手法もあります。

価格表上は、最上階の住戸を高く設定しておき、下の中住戸を割安に見えるようにしておきます。そして割高である最上階の住戸は、その住戸を購入できる人をピンポイントで捉え、ある程度値引きをして契約させるという方法です。

これは販売しているディベロッパーや販売責任者の考えによりますので、一律にこうなっているという話ではありません。しかし多かれ少なかれ、こういった事を考えながら、価格表、鳥かごは作られていきます。

相対的に安く見えるマンション住戸が実際に安いとは限りません

簡単に言いますと、ディベロッパーが売りたい住戸が安く見えるように価格表は作られている、という事です。もちろん安く見える住戸が本当にお買い得である事もありますが、通常は安く見えるように作られている、と考えた方が良いと思います。

見え方のイメージ

価格表は単に資料としてあるのではありません。営業ツールの1つであり、見え方や感じ方を考えて作られています。

この価格表から受ける印象から影響を受けずにいるのは難しい事でしょう。頭で分かっていたとしても、どうしても安く感じてしまう感覚は避ける事が出来ないからです。しかし、価格表はこのような印象操作を行う要素がある、と知っているだけでも、ある程度は感覚にごまかされなくても済むようになります。

マンションの資産価値を考えるのであれば中古マンションの価格や査定内容を知りましょう

では価格表による印象操作を受けないようにするにはどうしたら良いでしょうか。対策として有効なのは、同じような条件の中古のマンションの価格について調べる事です。

マンション一般のイメージ

価格表の印象操作を避けるには、中古マンションの価格を知る方法が有効です。

中古マンションの購入者は、新築マンションのように価格表を見る事はありません。売られている住戸は基本的に1戸ですので、周辺の中古マンションの似た事例と比較することはあっても、同じマンション内の他の住戸と比較することは少ないからです。だからという訳ではありませんが、新築マンションと比べますと、相場に近い価格で取引される例が多いように感じます。

こういった中古マンションと比較すると、角部屋とはいえこんなに高くても良いのか、ですとか、最上階だからといってこの金額を出して良いのか、という判断がより正しくできるようになります。

新築マンションを購入される方は、そのマンションの資産価値について気にされると思いますが、その資産価値とは何かという点を深く考える方は多くありません。営業マンから「資産価値を維持できる」という話だけ聞いて、そのまま信じる方も多いようです。

端的に言えば、資産価値とはその時点で売れる価格の事です。ですので新築マンションの10年後の資産価値は築10年の中古マンションの価格、と言っても良いでしょう。ですから資産価値について考えるのであれば、中古マンションの価格についてもある程度は把握しなければなりません。

そして中古マンションの価格を調べるときに、階高による価格差、窓の向きによる価格差、角部屋や最上階の価格差についても中古マンションではどのように考えられているかを知るべきです。

一般的な中古マンションの査定内容についてもある程度は知っておくべきです。中古マンションの査定については「2-05-03.マンションの相場を知るために査定内容を学びましょう」のページでも簡単に解説しています。資産価値については、新築マンションの営業マンから話を聞くだけでなく、自分でも調べてみるという姿勢はとても重要です。

価格表に込められたディベロッパーの執念を甘く見てはいけません

このページでは新築マンションの価格表についてお話ししました。もっともディベロッパーによっても価格表の作り方は異なるでしょうから、すべてがこのように作られる訳では無いでしょう。しかし、私がディベロッパーで働いていた割とおおらかな時代ですら、社内で何度も相談しながら価格表を作っていました。

今では印象操作という考えが進む事はあっても、逆はまず無いでしょう。

作戦のイメージ

どのような考えで価格表を作るかは販売会社によって異なりますが、何も考えずに作る会社はありません。

どの業界でもそうだと思いますが、商売のやり方は年々シビアになってきています。価格表1つにも色々な作戦や思惑が乗っていますので、不動産を買おうとする皆さんは、なるべく冷静に正しい判断をする事が要求されるようになってきています。

このページの話を動画でも解説してみました

このページでお話ししました内容の一部を動画でも解説しています。その動画がこちらです。

よろしければ、動画もご確認ください。

当社:ふくろう不動産は不動産を買いたいという人の代理で動くバイヤーズ・エージェントとして活動していますので、このようなお話をしつつ、お客様に不動産を買っていただくようにしていますが、新築マンションであれば、自分自身で売り手と交渉し、判断しなければなりません。

みなさんはぜひ、色々な情報を仕入れ、正しく冷静な判断を行い、みなさん自身に合った住まいを手に入れて頂きたいと思います。この記事についてのご意見やご相談等がある方は「お問い合わせフォーム」をご利用の上、ご連絡ください。

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