「古い戸建てでもリフォームすれば十分使える」は本当でしょうか

「古い中古住宅でも、リフォームすれば新築同様に生まれ変わります!」不動産業界やリフォーム会社から、よく聞かれる言葉です。

確かに、技術的にはそれは「可能」です。しかし、そこには語られていない「費用対効果」と「性能の限界」という重要な問題が隠されています。

今回は、古い戸建てをリフォームして住むことの現実と、物件選びで損をしないための判断基準について解説します。

1. 技術的に「可能」でも、現実的ではない理由

「お金を無制限にかけてもいい」という条件であれば、どんなに古い建物でも新築並みの強度や断熱性能を持たせることはできます。しかし、多くの方にとって予算は限られています。

耐震性能の限界

今の建築基準法の最低基準を「100」、耐震等級3を「150」とすると、1981年以前の建物は「60〜70」程度のものも珍しくありません。 多額の費用をかけて補強しても、せいぜい「80〜90」、頑張って「100」に届くかどうかというのが実情です。

断熱リフォームのコスト

窓にインナーサッシを入れるだけでも効果はありますが、壁・床・天井すべてを現代基準にするには膨大な費用がかかります。「そこまでお金をかけるなら、もう少し築浅の物件を買った方が安かった」という逆転現象が起きかねません。

2. リフォームでも変えられない「基礎」と「構造」

古い家には、今の住宅では考えられないような構造上の制約があります。

  • 基礎の高さ: 昔の家は地面から基礎までの高さが10cm〜20cm程度と低いものが多く、湿気やシロアリの影響を受けやすい傾向にあります。これをリフォームで高くするのは現実的ではありません。
  • 間取りの変更: 浴室や洗面所を広げたくても、抜けない柱や耐力壁の制限により、結局「ドラム式洗濯機が入らない」「お風呂を広げられない」といった不満が残るケースも多いです。

3. 賢い物件選びの「3つの境界線」

① 1981年(新耐震基準)

「旧耐震」の物件は、よほど立地が気に入っている、あるいは古民家再生が目的でない限り、避けるのが賢明です。

② 2000年(木造住宅の改正)

木造軸組工法の場合、2000年を境に構造計算や接合部の規定が厳しくなっています。2000年以降の物件は、構造的な信頼度が一段階上がります。

③ 2005年(ペアガラスの普及)

この頃からペアガラスが標準採用されることが増えました。窓の性能は住み心地に直結するため、断熱性能を重視するなら一つの目安になります。

4. 中古市場の「歪み」を利用してお得に買う

現在の不動産市場では、建物の性能が中古価格に十分に反映されていないケースが多々あります。

築20年を過ぎると建物価格は横ばい:
一般的な戸建ては、築20〜25年で建物価値がほぼ底(300万円程度)を打ち、それ以降はあまり価格が変わりません(ハウスメーカーの建物やデザインや性能の優れた注文住宅等の例外もあります)。

性能の差が価格に出にくい:
築15年の「普通の家」と、築15年の「建物性能が高い家」が、市場ではほぼ同じ価格で売られていることがあります。知識を持って探せば、古い物件を無理にリフォームするよりも、同程度の価格でずっと高性能な築浅物件を見つけられる可能性もあります。

まとめ:バランスの取れた判断を

「古い家+リフォーム」は魅力的に見えますが、リフォーム費用に1,000万円、2,000万円とかけるのであれば、冷静に考える必要があります。

  •  その場所でなければならない特別な理由があるか?
  •  リフォーム後に今の新築の何割程度の性能が確保できるのか?
  •  合計金額は築浅物件を買うより安く収まっているか?

感情だけでなく「数値」と「理屈」で判断することが、失敗しない家選びの第一歩です。

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