あなたの家や不動産が売れないのは4つの問題のどれかがあります
自宅を売りに出しても、なかなか売れない、買い手が付かないという話をよく聞きます。不動産が売れない理由は物件によって異なるかもしれませんが、私が見る限り問題は4つに集約されます。
4つの問題とは集客方法、営業体制、商品価値、価格の4つです。この中の1つ、あるいは複数に問題がある不動産はなかなか売れません。ただ、これだけ聞いても何の事か分からないと思いますので、少し詳しく解説します。
買い手のお客様を集客できる不動産会社は実は多くありません
あまり知られていない事ですが、どの不動産会社であっても、常に多くの不動産購入者を確保している訳ではありません。これはどの規模の不動産会社であってもあまり変わりません。
不動産を買おうと考えている人は広い範囲に渡っているため、1社で購入依頼を受けている人数はそれほど多くありません。ではどうするかと言えば、広く買い手を募る集客営業を行います。
しかし、この集客営業をどの会社もきちんと行っているかと言えば、あまりちゃんとした集客営業を行っていない会社も多数あります。私の感覚では約半分の不動産会社はきちんとした集客営業を行いません。
集客営業をきちんと行わない理由は色々とありますが、多くは、両手取引を行いたいが為に幅広く営業を行わない場合と、そもそも集客の基本が出来ていない場合に分けられます。
両手取引の問題については
「第1章.その不動産が高く売れるかどうかは不動産会社の方針に左右されます」
の記事でも解説していますので、こちらをご覧ください。
ポータルサイトに情報掲載をしない会社はまともに売る気がありません
自宅の売却依頼をしている不動産会社が、きちんと集客活動をしているかどうかの判断は割と簡単にできます。それは自分の家がポータルサイトで見つけられるかどうかで分かります。
家を探している人がよく見るサイトは、不動産ポータルサイトです。有名なのは「アットホーム」「HOME’S」「suumo」の3つでしょう。
もしこの3つのポータルサイトのどこにも自分の家を見つけられなかった場合は、売却依頼をした不動産会社は売る気が無いと考えた方が良さそうです。購入しようと考えている人が物件を見つける事が出来ないからです。
これらのポータルサイトへの情報掲載は、自社で行わなくても、他社の広告掲載を可としていれば、どこかしらの客付け会社が掲載します。ですので、全く掲載が無い場合は、自社でも広告を出さず、他社の広告掲載も認めていないという事になります。
この場合は、売却依頼を受けた仲介会社は、まともに売る気は無いと判断した方が良さそうです。
レインズの登録証明書を必ず取得し、報告も受けましょう
また、不動産の売却依頼を受けた不動産仲介会社は原則として、レインズというシステムに物件登録をしなければなりません。このレインズというシステムは、不動産会社が売却情報や過去の成約事例を見る事ができるシステムです。
レインズは、ほぼすべての不動産仲介会社がチェックしているシステムで、このレインズに登録しないと買い手のお客様を持っている不動産会社が条件に合った物件を見つける事が困難となります。そして、レインズの登録自体はお金がかかるものではありませんので、きちんと物件を売ろうと思った場合には、不動産会社はこのレインズに売り物件の登録を行います。
ですが、一定の率でこのレインズに登録を行わない不動産会社があります。これも両手取引を行いたいが為に、他の不動産会社に入られないために、敢えて登録を行わないものと思われます。
もちろんこれは、売主にとって良い話ではありません。売り情報が限定される訳ですから、とうぜん集客力は落ちます。
自分が売却依頼をしている不動産会社が、自分の家をレインズに登録しているかどうかのチェックも簡単で、登録証明書を見せてもらえばそれで済みます。レインズを管轄している不動産流通機構のサイト「REINS TOWER」では、この登録証明書の取得や、報告書の取得を売り主さんにお勧めしています。(REINS TOWER参照)
仲介契約の形態によっても営業の進め方が違います
2つ目の営業体制の問題も重要です。これは集客営業とも関わってきますが、売り手側の仲介会社にやる気が無いと、売却は進みません。
売却依頼を受けているのにやる気が無いとは考えにくいかもしれませんが、実はこのパターンも普通にあります。これは一般媒介契約の場合や、売却価格が低い場合などによく見受けられます。
一般媒介契約が良いとは限りません
サイトや書籍などでは「複数の仲介会社を競合させ、売主を囲い込ませないようにするために、媒介契約を専任ではなく一般媒介にするのが良い」と書かれています。ただ、このやり方が本当に効果があるのかは、私は疑問に思っています。
と言いますのも、一般媒介で受けている仲介会社の応対がとても悪い例を何度か見ているからです。一般媒介で売り物件の売却依頼を受けていたとしても、その仲介会社がどこまで本気で売却活動をしてくれるかどうか微妙です。
例えば買い手側の仲介会社である当社が、お客様と一緒に物件の内覧を希望したとしても、売り手の仲介会社が現地を案内してくれる事はあまりありません。「売り物件の鍵を預かっていますので、取りに来てください。勝手に見てください。鍵は後で返してください。」という内容で終わる事がほとんどです(言い方はもっと柔らかい表現ですが)。
売り物件を扱う仲介会社が物件のすぐ近くにあれば、鍵を取りに行く手間は大きなものではありません。ですが、仲介会社が片道30分以上の場所にある事もよくあり、その場合には鍵の預かりと返却で1時間以上の時間と手間がかかります。
買い手のお客様は1日で数件物件を内覧される事が多いため、鍵の預かりと返却で1時間以上の時間をかけられない場合もよくあります。この場合は結局内覧は行わず、見送りとなります。他の物件を見ていて、その物件に決まってしまい、見送った物件は最後まで見に行かずに終わる事もよくあります。
また、事前に売り手の仲介会社が入っていない場合には、お客様は真っ暗でよどんだ空気の中で建物の内覧を行います(中古戸建ての空き家の場合は、雨戸などが閉めっぱなしの事が多いため)。最初に持つイメージは正直良いものではありません。その結果、物件が気に入らないというケースもよくあります。
こうした細かな話で、売り損じが出ているケースが意外と多いのではないかと思います。
売却価格が低い場合も、営業マンのやる気はあまり出ません
他にも売却価格が低い場合、売り手の営業マンの応対が悪いケースが良くあります。例えば売り物件の価格が300万円だった場合、仲介手数料は最大で15万円(税抜)です。そしてこの15万円の中で、営業マンの経費や、必要資料などを揃えなければなりません。
チラシを刷り、広告を出すと赤字になる危険性すらあります。そしてこの物件が前述の一般媒介となると、経費をかけて営業したにも関わらず、他社に契約を持っていかれ、1円の売上にもならない事もあります。
この状況で営業マンにやる気を出せといっても難しいでしょう。表向きには悪いことは言わないまでも、実際にどの位営業してくれるかは結構疑問です。
不動産をうまく、高く売るためには売却依頼を行う仲介会社の協力は欠かせません。そしてその不動産会社がやる気を出して営業してもらうために、売主も色々と考えなければなりません。お金を出すのだから働いてくれるだろう、と考えるのは間違いです。
今回お話しした例であれば、媒介契約は一般ではなく専任にするとか、お客様案内は仲介会社だけに任さず、自分で案内を行うなどの対処策が必要になります。
商品価値がゼロに近い商品も結構あります
3つ目の商品価値が無い、あるいはとても低いという物件も簡単には売れません。具体的には再建築不可の土地や戸建住宅が該当します。
再建築不可の物件とは、建物を建てる事が出来ない土地の事です。建築基準法で認められた道路に接道していなかったり、市街化調整区域にあるため建築許可が下りないエリアだったりという理由で、その土地に建物を建てる事はできません。
不動産を買おうという人のほとんどは居住用として購入します。しかし建物が無ければ当然そこに住むことはできません。その時点で建物が建っていたとしても、将来建て替えができないのであれば、その物件の資産価値はとても低いものになります。
完全に再建築不可と決まっていないとしても、再建築不可になる可能性がとても高いという物件もあります。道路の境界が確定しておらず、かつ接道幅が2m取れるかどうか怪しい場合などが当てはまります。
この場合も、もし接道が2mを切るようであれば、やはり再建築不可となりますので、市場価値がとても低くなります。このような商品価値がとても低い、あるいは付けられないという物件がそれなりの率であります。こういった物件をお持ちの場合は、何とか建物が建てられるように調整してから販売に出さないと、いつまで経っても売れる事はありません。
値付けが相場の2倍近い物件で販売している場合もあります
4つ目の価格についても、問題がある物件が多数あります。私も仕事柄数多くの売り出し物件を見ますが、なぜこんなに高い金額が付いているのだろうと思わされる物件がたくさんあります。
媒介依頼を受けている仲介会社は、こんなに高い金額で売れるはずがない、と分かっているはずですが、売り主さんの要望で、そういった価格を付けざるを得なかったのだろうと思われます。
実際に3,000万円位が相場の場所に、7,000万円という価格を付けて売りに出されている物件を見たことがあります。当然その物件が売れる事はありません。
売り主側の対策は簡単で、相場価格がいくら位なのかを把握し、相場に近い金額で売りに出すだけです。最近の購入者は事前の調査をきっちり行った上で不動産を購入します。明らかに相場より高い金額で売りに出していたとしても、売れる事はありません。
査定価格の高さと営業力は関係がありません
ちなみに、この売り出し値は仲介会社の営業力があれば、高い価格で売れると考える方もいるようです。そして、販売力が強い会社が高い査定価格を付けるので、査定金額を比較し、高い査定を付けた会社に媒介依頼を行うのが良いと主張される方もいます。
ですが、査定価格を高く付ける会社が営業力があるかと言えば、そんなことはありません。査定価格はあくまでも売却予想価格です。高く予想した人であれば、高く売れるという話はありません。また仮に、営業力がある営業マンが付いたとしても、相場からかけ離れた価格で売れる訳でもありません。
実際のところ、査定価格は営業上の理由で付けられる事が多いように感じます。言葉は悪いのですが、査定価格にごまかされる方には高い査定価格を出します。高い査定価格を付けてくれる会社に売却依頼をすると売主が決めていると感じられれば、仲介会社は少し無理だと思っても高い査定価格を出します。
その高い査定価格で売りに出しても当然売れませんが、先に媒介契約を行い、付き合いを続けている間に人間関係を築き、少しずつ価格を下げて販売活動を行い、最終的には相場で売り切るという作戦です。ですが、これでは販売に時間がかかるだけで、売主が得をすることはありません。
売り主側の対策は、査定価格の金額だけを見るのではなく、相場を正しく把握し、その上で仲介会社がどのような営業活動を行うのかを事前に確認することです。
売主がこのようにしっかりとしていれば、仲介会社も見た目の査定価格にだまされない相手だと分かりますので、正しい相場金額や、どのような営業活動を行うかを話してくれると思います。
不動産の売却依頼先の選び方を真剣に考えるべきです
不動産が売れない場合は、大体この4つの問題のどれか、あるいは複数の問題があります。商品価値に問題がある場合を除けば、売主の対策でこの問題は解消できます。
そして、これらの問題についてきちんと考え、提案してくれる不動産会社を選べば、こういった問題はほとんど発生しません。
このお話をしますと、結局不動産仲介会社に悪い会社が多いから、こんな問題が起きるのだ、と考える方も出てくるでしょう。悪い不動産会社があるのも確かですが、一方で売り主さん側に問題があるために、これらの問題が引き起こされる事もよくあります。
例えば仲介会社の営業マンが何を言っても話を聞かず、実際の相場よりも高く売れるはずだ、と信じている人に対し、営業マンは懇切丁寧に教えてくれるでしょうか。
お客様の思い込みを覆すには大きなエネルギーが必要です。そこまで苦労して説明したところ、お客様が怒り出し、結局媒介依頼をもらえなかった、というケースもよく聞きます。
それであれば、正しい説明を行わずに、お客様の希望通りに高い査定額を出し、媒介契約を結んでから、少しずつ金額を下げる交渉をしよう、と営業マンが考えるのも無理はないと思います。
不動産を売る場合でも買う場合でも、正しい知識を持っていないと、結局お客様自身が損をするようになっています。正しい知識を持たず、不動産会社に何らかの依頼をして、結局あいつらにだまされた、と主張したところで、何ら得をすることはありません。
不動産は価格が高いものですので、この購入や売却で失敗すると、一生の間に取り返せないという事もあります。大変とは思いますが、まずは色々な本やサイトで勉強し、複数の仲介会社と話をして、ある程度知識が付いた段階で、不動産取引を行う方が、不動産で失敗する率を大きく下げる事ができると思います。
この記事の内容を動画でも説明してみました
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