土地が先か建物が先か、不動産選びの優先順位について考えましょう

不動産探しをされている方の中には注文住宅で自分の好みの家を建てようとされている方もいらっしゃいます。そういった方から時々聞く話として、まず土地を決めて、その後にどういった建物を建てようかとハウスメーカーや工務店を探そうとされる方もいるのですが、私はこの順番には賛成できません。

土地が先か建物が先かという話題ですが、私の結論では不動産選びは建物が先です。まずは建物について、どの建設会社に頼むのか、どの位のグレードの建物を考えるのか、予算をいくらとするのか、という大枠を決めてから土地を選ぶべきだと考えています。建物が先という理由について、この後少し詳しくお話をします。

総予算のオーバーは後々の経済生活に大きな影響を与えます

建物の内容を先に固める方が良いという最大の理由は、総予算を正しく振り分けるためです。自ら土地を購入して建物を建てる方は、家に対するこだわりが強い方でしょう。そういった方々の家の建設費がいくら位になるのかは、簡単に把握できません。

総予算

総予算を決めるためにも先に建物の金額目安を決めるべきです

単に2,500万円あれば建てられるとか、坪〇万円で大丈夫なはず、と考えるのは危険です。どのような建物でも良いという事であればまだしも、こだわり部分にいくら費用がかかるのかは、その内容によって大きく異なります。金額差は数十万円どころか数百万円単位で差が出るという事がよくあります。更に言えば1,000万円以上の価格の差が出る事もあります。

人に聞いた話だけでいくら位という話と、実際に自分が図面や仕上げ表などを見ながら、あるいは建材や設備のサンプルを見ながら決まる建物内容や建設金額は全くの別物だと考えるべきです。

そしてこの差が埋まらないまま家づくりをしますと、建物のグレードを大きく下げざるを得ず、後々悔いが残る建物となる事も珍しくありません。また、当初の想定よりも高い建物になったため、ローンを多めに組んでしまい、結局後にローン破綻という事になってしまうと、何のための家づくりか分からなくなってしまいます。

家を建てる時は、気が大きくなっていますし、元の金額が大きいために、つい数十万円単位の増額は大きな問題ではないと思いがちです。ですが実際にはその増えた金額は、日常の生活の中から返済していかなければなりません。これが月に数千円の単位であっても、生活に悪影響を与える事もあります。

物事を決める場合には、まずは大枠を決めるという方法が基本です。全体の予算は後々の生活に与える影響が本当に大きいので、まずは全体予算を決め、それを超えない為にどうすれば良いかと考えていくべきです。

土地を選ぶ時にも建設の立場からの参考意見が聞けます

この建物を先に決める方法は他にもメリットが出ます。それは土地の購入に迷った際に建築側からのアドバイスを得る事ができるという点です。

土地を見てもらう

建築のプロに土地を見てもらえるというのはとても有効です。

土地を買う際には不動産仲介会社から様々な話を聞きますが、それらの話がすべて正しいかどうかは微妙です。仲介会社は成約報酬で成り立っているため、その土地に問題があったとしても、とにかく売買契約が成立するように話を持っていきます。そのため問題があったとしても、その問題についてはあまり触れなかったり、意図的に問題を隠してしまうという可能性もあります。

その際に、建設会社のアドバイスが第三者代わりとして有効になります。建設会社は最終的にそのお客様が建物を発注してくれるのであれば、どの土地でも構いません。ですので、必ずその土地で契約をさせなければならないという考えがありませんので、利害に関係なく、的確なアドバイスを出してくれることがあります。

特に再建築不可かどうかについては、建設会社は細心の注意をもってチェックします万一建物が建てられないと、その建設会社は利益が得られないからです。このような確認をしてもらうという点においても、建設会社のアドバイスはありがたいものです。

更にはその土地の面積や形状で、お客様が望んでいるプランが入るかどうかもある程度の精度でチェックできますので、その点でも当初のイメージ通りの家ができるかどうかについて、ズレが少なくなります。

そもそも建物の見積書が無いと土地購入のローンが組めません

全体的なお金の話だけでなく、実用上で見ても、土地購入時に建物について決まっていないと大きなデメリットになる事があります。それは住宅ローンの問題です。

ローン

金融機関は建物の見積書が無いと、住宅ローンを貸し出してくれません。

これは金融機関によっても異なりますが、一般的な金融機関では、土地の購入資金をローンでまかなう場合、土地と建物はセットでローンを考えます。そして、土地の決済時の前に、建物の見積書を要求し、その内容を見てローンの本審査を通します。つまり建物の見積書が無いと、土地の購入自体が出来ないという事になります。

建物の見積書は会社によっても異なりますが、1か月から1か月半くらいの時間がかかります。当初から建設会社とプラン等の打ち合わせをしていないと、見積書の作成は間に合わないスケジュールです。

最初から土地を持っている方に対しての注文住宅しか建てたことが無い建設会社は、意外とこの話を知りません。住宅展示場にあるハウスメーカーの営業マンの中には、土地が決まったらまた来てくださいね、という話をする人もいるようなのですが、それからプランを考え見積もりを行うのでは土地購入の段取りが間に合わないという事もあります。

この辺りの話については「2-02-05.土地を買うだけでも建物の見積もりが必要ですか?」のページでも説明していますので、そちらもご覧ください。

ハウスメーカーの営業マンだけでなく、建築設計事務所の方も、こういった話を知らない方がいらっしゃいます。そういった方々は、土地が決まってから1年位じっくりと話し合いしながらプランを決めましょう、という事を言われるのですが、住宅ローンの設定が、そのようなスケジュールをを許してくれない時もあります。

もちろん住宅ローンに本当に詳しい建設会社もありますが、そうでない場合も多いので、これは自分自身で予め注意しなければなりません。

建物を決めた後は不動産会社で土地を探すことをお勧めします

これらの理由で、土地と建物では建物から先に大枠を決める方が良いと思います。ただ、この話の流れで土地探しもその建設会社に依頼する、という方向になるのはあまりお勧めできません。土地探しについては、既に土地代相当の予算が決まった訳ですから、その予算をもって、専門の不動産会社で探すことをお勧めします。

売地

土地は建設会社とは別に探すことをお勧めします。

それは建設系の人と不動産系の人では、土地を見る目が全く違うからです。建設系の方は、自社のプランが入るかどうか、建物が建て易いかどうか、建物を建てた際の見栄えが良いかどうかを気にします。一方で不動産系の方は、資産価値が維持できそうか、利便性はどうかといった観点から土地を見ます。

完全に見かたがきれいに分かれる訳ではありませんが、考え方や方向性は大きく異なります。一般的に建設系の人であれば郊外のゆったりした土地を好みますし、不動産系の人であれば、狭くても街中の利便性の高い場所を好むという傾向があります。

最終的には買う方の価値観で決めれば良い話ではありますが、なるべく色々な方向から土地を考える方が望ましいものですから、建築とは別の立場で土地を見る人に探してもらう方が、より多くの意見を聞くことが出来ます

それとは別に、単純に不動産会社の人の方が土地を探すのに慣れているため、早く探しやすいという事もあります。土地の売り情報はレインズというシステムに載せられますので、原則として建設会社であっても同じ情報が得られるはずなのですが、データのチェック方法やレインズ以外の情報の取得等を考えますと、仲介会社の方が早くて正確なケースが多いのではないかと思います。

話をする窓口は1つの方が簡単で良いという考えもありますが、個人的にはこの意見には賛成できません。前述しましたように、様々な方向から不動産を見かたを学べるチャンスを逃すことになりますし、更に言いますと、依頼している1社に問題があった場合でも、1社しか付き合いが無い場合にはその問題が分からないというリスクもあります。

不動産はその取引金額が大きなものになるため、うかつな失敗をすると簡単には取り返すことができません。不動産購入での失敗を減らすために、ある程度は自分でコントロールできるような取引とすべきですし、そのためには部分部分で仕事の依頼先を分ける方が良いと思います。

このページでお話ししました内容の一部を動画でも説明しています

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