外国人居住者の多いマンションで起きるトラブルの背景を考えてみました

今回は、外国人居住者の比率が高いマンションで起こりうるトラブルの原因について、その背景に焦点を当ててお話ししたいと思います。これは明確なデータに基づいたものではなく、私自身の経験や見聞きした内容からの考察であることを最初にお断りしておきます。

最近、インターネットなどで「外国人はマナーがない」「民度が低いからトラブルになる」といった意見を見かけることがあります。もちろん、そういったケースもあるかもしれませんが、私は必ずしもそれだけが原因ではないと考えています。むしろ、文化的な背景の違いがトラブルにつながりやすいのではないか、というのが私の率直な感想です。特定の国を想定している部分もありますが、具体的な国名は伏せさせていただきます。

この話が、皆さんのマンション選びやマンション生活の参考になれば幸いです。

修繕積立金の値上げに反対するのはなぜ?

代表的なトラブルの一つに、修繕積立金の値上げへの反対があります。将来の修繕工事に必要なお金なのに、なぜ払いたがらないのか、協力する意識がないのか、といった声を聞くことがあります。

しかし、これは単にお金を払うのが嫌だという話だけではないように感じます。日本のように、将来に備えて計画的に積み立てておくという文化がない国も多く存在します。多くの国では、建物や設備の修理が必要になった際に、その都度費用を出し合う「Pay As You Go」という考え方が一般的です。彼らにとっては、「修繕が必要になった時に、その時点の所有者が必要な分だけ払えばいい話であって、なぜ必要でもないのに前もって積み立てておく必要があるのか」「必要のない時に払うお金って変ではないか」という感覚があるのかもしれません。世界的に見れば、必要な時に払うという考え方が主流である可能性も考えられます。そのため、積み立てること自体に馴染みがなく、ましてやその金額が値上げされるとなると、当初から必要性を感じていないものがさらに負担増になることへの抵抗が強くなるのは、ある意味で自然な反応とも言えます。

また、投資目的でマンションを購入する外国人の方もいらっしゃいます。そういった方々は、将来的に大規模修繕の実施前にマンションを売却することを考えている場合、それまでに積み立てた修繕積立金が自分にとっては無駄になると感じるかもしれません。「売却した後の修繕は自分には関係のない話だ」「自分に関係のないことのために、なぜ今お金を払わなければならないのか」という意識が強く働くことがあります。もちろん、不動産投資においては実質利回りが重要であり、管理費や修繕積立金が高くなると利回りが悪化するため、そういった目先の経済的な理由から反対する方もいらっしゃるでしょう。しかしそれ以上に、「自分が所有している期間に直接的な恩恵を受けない将来の修繕のために、今まとまったお金を積み立てる」という考え方自体が、彼らの投資感覚や文化的な背景にそぐわない場合があるのです。

共用部分の使い方でルールを守らない背景

共用部分の使い方に関するトラブルもよく耳にします。例えば、共用廊下やエントランス、駐輪場などで、定められたルールを守らずに私物を置いたり、指定場所以外に物を置いたりするケースです。共用廊下に自転車を置く、ベビーカーを置きっぱなしにする、私物を一時的に置いたままにする、といった例が見られます。

日本人の感覚では、「マンションの管理規約や使用細則に定められているルールだから、それに従うのが当然であり、正しいことだ」と考えがちです。しかし、一部の外国人の方の考え方では、「ルールがどう定められているか」ということよりも、「その行為が実用上、誰かに迷惑をかけたり、問題を引き起こしたりするかどうか」という実利や機能性を重視する文化があります。共用廊下に自転車を置いていても、壁際に寄せて通行の邪魔になっていない、他の居住者が通る際に問題がないのであれば、実用上問題ないのだから良いのではないか、と考えるわけです。彼らにとっては、ルールそのものが非現実的であったり、自分の生活にとって不便であったりする場合、そのルールに従うことの合理性を見出せないことがあります。

このような「実用上問題なければ良い」という感覚が強く根付いていると、日本人にとっては当たり前で守るべきルールであっても、彼らにとっては「なぜこんな無意味なルールがあるのか」「実質的に問題ないのだから守る必要はない」と感じてしまうことがあるようです。もちろん、郷に入っては郷に従えという言葉の通り、日本のマンションには日本のルールがあり、安全確保や美観維持、公平性の観点から共用部分の使用ルールは重要です。したがって、居住者全員がルールを守る必要があります。しかし、彼らがルールを守らない背景に、このような「実用性重視」の文化や考え方があることを理解しておくことは、一方的に非難するだけでなく、より建設的な対話や解決策を探る上で無駄ではないでしょう。

騒音トラブルの背景

普段から騒がしい、うるさい、といった騒音に関するトラブルも少なくありません。隣室からの話し声、子供の走り回る音、夜間の生活音などが原因となることが多いです。これも、単にマナーが悪い、という問題として片付けられるのではなく、住宅地における「静けさ」や「プライバシー」に対する感覚の違いが大きいように感じます。

日本には、周囲に配慮し、静かに振る舞うことが美徳とされる文化があります。電車内や公共の場では静かにすることが求められ、家庭内でも隣近所に迷惑をかけないように配慮するのが一般的です。車の運転でも、よほどの緊急時でない限りクラクションを鳴らさないなど、日常生活の様々な場面で「静けさ」が重視されています。このような文化の中で育った日本人にとって、大きな声での会話や、時間帯を気にしない生活音は「うるさい」「配慮がない」と感じられやすいのです。

一方、外国では、文化によって「騒がしさ」に対する許容範囲が大きく異なります。家族や友人と集まって賑やかに過ごすことが一般的であったり、自分の感情や意見をはっきりと、時には大きな声で表現することが奨励される文化もあります。また、日本ほど住宅の防音性が高くない国も多いため、ある程度の生活音が聞こえるのが当たり前、という感覚を持っている人もいるかもしれません。このような文化の中で育った人々にとって、日本人が求める「静けさ」は過剰に感じられたり、窮屈に感じられたりすることがあります。彼らにとっては、自分たちの「普通」の生活音やコミュニケーションのスタイルが、日本人から「うるさい」と指摘されることに戸惑いや不満を感じることもあるでしょう。これは良い悪いではなく、単に「普通」の感覚が違うということに起因する問題です。この感覚の違いが、日本人から見ると「うるさい」と感じられる騒音トラブルにつながっていると考えられます。

文化の違いを理解した上で、どう対応するか

このように、文化が違うためにトラブルになりやすいという側面があることをお話ししましたが、だからといって「お互いの国ではそれが普通だから日本でもそのままでいい」という話をしているわけではありません。文化の違いによる食い違いやトラブルが出やすいことは理解しつつも、日本のマンション生活には日本のルールがあります。安全で快適な共同生活を送るためには、居住者全員がルールを守る必要があります。したがって、日本のルールを守ってもらわないと困る、ということを根気強く、そして丁寧に説得していく必要があります。

具体的な対処策としては、以下のようなことが考えられます。

  • 修繕積立金の設定: マンションの長期修繕計画に基づき、最初から適正な金額に設定し、後からの大幅な値上げが必要ないように計画することが重要です。購入者に対して、積立金の必要性や計算根拠を丁寧に説明することも有効です。
  • 共用部分のルール順守: 単にルールだからというだけでなく、なぜそのルールが必要なのか、具体的な理由(例:消防法上の問題、他の居住者の通行の妨げ、美観の維持、資産価値の維持など)を説明することが有効です。資産価値への影響や「割れ窓理論」に触れ、小さなルールの不順守がマンション全体の質の低下につながる可能性があることを説明し、居住者全員にとって良くない結果になることを理解してもらうことも効果的なアプローチです。
  • 管理規約等への強制力の盛り込み: どうしても話が通じない場合や、悪質な違反が繰り返される場合に備え、警告、罰金、あるいは法的措置といった対処法や、強制力のある措置を管理規約や使用細則に明確に盛り込むことを検討することも必要になってきています。

ただし、相手に日本のルールや考え方を理解し、行動を変えてもらうというのは、最終的には相手次第な部分もあります。文化的な背景の違いが大きすぎて、いくら説明しても理解が得られない、あるいは協力を得られないというケースも残念ながら存在します。そのような場合は、そのマンションが自分には合わないと判断し、売却や買い替えを検討することも、自己防衛策として選択肢の一つとなり得ます。また、これからマンションを購入しようと考えている方は、事前にそのマンションの居住者の構成や、管理組合の活動状況、トラブルの発生状況などを確認し、文化的な差によるトラブルのリスクを考慮してマンションを選ぶことも重要でしょう。

まとめ

今回は、外国人居住者の多いマンションでトラブルが起きやすい背景として、文化的な違いがあるのではないか、という私の考えをお話ししました。単純に「あの人たちが悪い」と決めつけるのではなく、文化的な違いをある程度理解した上で、それでも日本のルールを守ってもらうための具体的な対処策を考え、実行していくことが、マンションコミュニティをより良くしていくために必要なのではないかと感じています。これはあくまで雑談レベルの話ではありますが、何かの参考になれば幸いです。

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